シネックスから発売されているBelkin(ベルキン)の「Wireless G Travel Router」は、持ち運びを前提としたIEEE 802.11gに準拠した小型の無線LANルータだ。ルータモードはもちろんのこと、アクセスポイント、さらにネットワークアダプタとして利用できることが大きな特徴だ。
■ 文字通り手のひらサイズ。ネットワークアダプタとしても利用可能
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「Wireless G Travel Router」製品本体。実売価格は12,800円。本体のほか、ACアダプタ、USB給電ケーブル、キャリングケースなどが付属する。マニュアル類はすべて日本語
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ウィルコムの「WX310K」と並べたところ。コンパクトさがよくわかる
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「ホテルなどでの利用を前提とした、持ち運び可能な無線ルータ」は、昨今1つの流行となっており、近い将来の国内メーカーの参入も噂されている。今回紹介するベルキンの「Wireless G Travel Router」は、現在市場で流通している同等製品の中でも圧倒的なコンパクトさを誇る製品だ。特に最薄部1cmに満たない薄さは驚きの一言で、ワイシャツの胸ポケットにもすっぽり入ってしまう。体積的には携帯電話とほぼ同じだ。
機能面での特徴としては「ルータモード」のほか、「アクセスポイントモード」、さらに「ネットワークアダプタモード」の3つを切り替えて利用可能な点が挙げられる。前回紹介したリンクシスの「WTR54GS-JP」はルータモードしかサポートしておらず、ホテルの有線LANネットワークに接続するとルータが二重の状態になり、VPNなど特定のアプリケーションを利用する際にネックとなる可能性があった。本製品は、ルータモードをオフにしてアクセスポイント単体としても利用できるので、こういった心配はしなくてすむだろう。
また、ネットワークアダプタとして利用可能なことも注目すべきポイントだ。背面のスイッチを切り替えることにより、ネットワークアダプタとして有線パソコンの無線化が行なえる。
一般的にアクセスポイントとネットワークアダプタはハードウェア的に類似点が多く、市販の製品の中にもファームウェアでこれらの機能を切り替えている製品も存在するが、物理的なスイッチで切り替え可能なのは珍しい。将来、高速な無線規格が登場し、アクセスポイントを買い換えることになった場合でも、ネットワークアダプタとして使い続けられるのはコスト的なメリットがあるはずだ。
ちなみに本製品はUSB給電をサポートしており、クライアントパソコンのUSBポートと接続することで、ACアダプタレスでも使用できる。ネットワークアダプタとしてデスクトップパソコンを無線化する場合、コンセントが1つ節約できるのはありがたい。
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本体背面のスイッチをスライドさせることにより、アクセスポイントモード、ルータモード、ネットワークアダプタモードの3モードを切り替え可能。なお、切り替え後にはいったん本体を再起動させる必要がある
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ACアダプタのかわりにUSBポートからの給電が可能。ネットワークアダプタモードでは便利な機能だろう
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■ アクセスポイント・ルータとしてはごく一般的な仕様。Webブラウザから設定可能
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製品の設定はWebブラウザ画面から行なう。メニューはすべて日本語表記なので、大きく迷うことはないだろう
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無線LANアクセスポイントおよびルータとしては、ごく一般的な機能を備えており、普及型のアクセスポイント・ルータと比較しても機能的に遜色はない。無線LANの暗号化方式としてはWEPのほかWPA-PSKをサポートしており、TKIP/AESも利用できる。ただし、デフォルトでは暗号化設定がオフになっているため、ホテルなどではそのままの状態で利用しないよう、注意が必要だ。
設定はすべてWebブラウザメニューから行なう形で、アプリケーションによる設定方法は用意されていない。IPアドレスの体系は「192.168.2.*」となるため、現在利用中のIPアドレス体系と異なる場合は、事前にパソコンとLANケーブルで直結してIPアドレスを書き換えると良いだろう。なお、アクセスポイント・ルータ・ネットワークアダプタの3モードの切り替えはWebブラウザメニューからは行なえず、必ず本体のスイッチでの切り替えになる。
ちなみに、本製品に添付されているマニュアルはスタートアップガイドのみとなるため、初心者には少々心細い。詳細なマニュアルは付属のCD-ROMに収められているので、設定時にはそちらを参照したほうが良い。また、外出先で利用する場合には、事前に設定を済ませておく用心深さが欲しい。
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ルータモードではPPPoEも利用できる
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ネットワークアダプタモードもWebブラウザ画面から設定を行なう。画面は接続可能なSSIDを表示した状態
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■ 小型な割には大柄なキャリングケース。もうひとこだわりが欲しい
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添付のキャリングケース。質感は高いのだが、もう少し製品のコンパクトさを感じられるサイズにしてほしかった
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このほか、細かいポイントをいくつかチェックしておこう。
本製品はパッケージおよび取扱説明書・Webブラウザ画面に至るまで日本語化されており、競合製品と比較した場合の1つの特徴になっている。前述の通り、詳細なマニュアルは添付のCD-ROMに収録されているが、こちらもきちんと日本語化されており、好感が持てる。
少々気になるのは、添付のキャリングケースのサイズだ。ルータ本体が小型である割には、キャリングケースが非常に大柄で、アンバランスな感は否めない。同梱されるACアダプタがルータ本体とほぼ同じサイズであり、キットの体積が大きくなるのは仕方ないとはいえ、収納した状態では随所にスキ間もみられ、決して効率的に収納できているとは言い難い。実際に製品を使うユーザーからすれば、製品のコンパクトさを実感できるパッケージングがあって初めて満足いく製品となるはずである。ウレタンタイプで高級感のある素材なだけに、もうひとこだわりが欲しかった。
また、添付のLANケーブルはかなり固めの素材で、反発力がある。ルータ本体に接続すると、ケーブルの反発力でルータ本体が引きずられてしまうほどだ。実際に利用する際は、フラットタイプのLANケーブルなどに交換したほうが良いだろう。
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付属のACアダプタはコンパクトタイプなのだが、いかんせんルータ本体が小さすぎるため、並べると大柄に感じる
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キャリングケースに同梱物を収めたところ。中央から時計回りに本体、USB給電ケーブル、ACアダプタ、LANケーブル
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■ 付加機能も多く、小型ルータというジャンルの中ではピカイチ
以上、かけ足でざっと見てきたが、付加機能も豊富であり、持ち運び可能なルータというジャンルの製品の中では、一歩抜け出た製品であると感じた。店頭での流通量は必ずしも多くはないようだが、ネットワークアダプタとして利用可能なメリットも含め、コンパクトなルータを探しているユーザーは検討する価値があるだろう。
■ URL
製品情報
http://www.belkin.com/jp/catalog/networking/f5d7233ja.htm
Belkin
http://www.belkin.com/jp/index.htm
(後藤重治)
2006/03/08 11:02
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