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特定のSSIDを継続してサーチできるエレコムの無線LAN探知機


 エレコムの「LD-WIFIDSC/BG」は、液晶画面を備えたスティックタイプの無線LAN探知機だ。国内大手メーカー初の無線LAN探知機となる本製品は、利用可能なSSIDのサーチはもちろんのこと、特定のSSIDにターゲットを絞り、電波状態を継続してスキャンできる機能を備えている。


小型で持ち運びやすい筐体。無線アダプタ機能は非搭載

「LD-WIFIDSC/BG」本体。実売価格は9,800円前後
 本連載ではこれまでにも無線LAN探知機を紹介してきたが、過去の製品はそのほとんどが海外製品の輸入版だ。筆者が知る限り、国内の大手周辺機器メーカーがパソコン量販店向けに投入する無線LAN探知機は本製品が初となる。ニッチなイメージのあった無線LAN探知機がここまで普及したことは、国内での公衆無線LANサービスの普及を裏付けるものだと言えるだろう。

 本製品の形状はオーソドックスなスティックタイプで、以前紹介したアイ・ビー・エス・ジャパンの無線LANアダプタ機能付きの無線LAN探知機「TEW-429UB」と非常によく似ている。メーカーの公称値では両者のサイズにわずかしか違いはないのだが、アイ・ビー・エス・ジャパン製品に比べるとずいぶんと薄い印象を受けた。筐体色もシルバーで、濃いブルーを採用していたTEW-429UBと比べるとスタイリッシュな感がある。

 筐体デザインはいかにもUSB接続型の無線LANアダプタらしいが、搭載されているのは無線LAN探知機能のみで、無線LANアダプタ機能は非搭載である。おそらく、基板ではUSBアダプタとしての機能を持っているのを、ファームウェアレベルで止めてあるのではないかと思われる。余談ながら、本製品の発表後に、エバーグリーンから同一筐体とみられる無線LAN探知機が発表されており、こちらには無線LANアダプタ機能が搭載されている。

 本製品の使い方は至ってシンプルで、本体の電源スイッチを入れると自動的にスキャンがはじまり、見つかったSSIDが液晶画面に表示される。1つのSSIDについて表示される情報は、周波数帯域(IEEE 802.11bもしくはIEEE 802.11g)、暗号化の有無(ありの場合は暗号化方式)、電波強度(5段階)、使用チャネルなどと充実した内容だ。

 別のSSIDについて情報を表示したければ、本体側面の「NEXT」「BACK」ボタンを押すことで順送り/逆送りが可能。アイ・ビー・エス・ジャパン製品と比較すると、「BACK」ボタンを備える分、目当てのSSIDを高速に探すことができる。なお、検索可能なSSIDは最大で16個となっている。


形状はスティックタイプ。アイ・ビー・エス・ジャパン製品とサイズはほぼ同じだが、厚みは本製品のほうが若干薄い キャップを外すと充電用のUSBポートが露出する。無線LANアダプタとしての機能は搭載されていない

特定のSSIDを継続的にサーチできる「ロックモード」が便利

スイッチを入れると自動的にスキャンが開始される(Detecting)。上段に表示されているのは、発見されたSSIDの数(左が暗号化なし、右が暗号化あり)
 便利な機能としては、特定のSSIDだけにターゲットを絞り、電波の強弱をサーチできる「ロックモード」を搭載している点だ。

 現実的な利用シーンでは、外出先で複数のSSIDを発見したとしても、自分が使える(サービスを契約している)アクセスポイントは1つか2つしかないことがほとんど。そんなときに、電波が強いエリアを継続してスキャンできる機能は実用性が高い。公衆無線LANサービスが利用可能な喫茶店の中で、電波状況の良い席を探す場合などにも重宝するだろう。

 筐体設計で工夫の跡が見えるのが、キャップが本体の後部に取り付けられることだ。以前紹介したアイ・ビー・エス・ジャパン製品は、外したキャップは傍らに置いておくしかなく、紛失する危険性が高かった。本製品の場合、後部に取り付けた状態で充電が可能なので、USBポートに挿しっぱなしにしている間も、紛失の危険が少ない。

 また、本製品の後部にはストラップを取り付け可能なホールがある。詳しくは写真をご覧頂きたいが、ストラップを取り付けたままでもキャップがはめ込まれるよう工夫されており、好感が持てる。


SSIDの情報を表示したところ。この状態で本体下のLOCKボタンをオンにすれば、このSSIDの電波状況を継続してスキャンできる キャップは本体後部に取り付けることができるので、紛失の危険が少ない

本体後部には市販の携帯電話用ストラップを取り付けることが可能 キャップ装着時には本体との間にスキ間があり、ストラップを取り付けたままでもきちんとキャップがはまる構造になっている

液晶画面の視認性は低め。自動電源オフがないのも難点

パッケージに書かれた表示イメージと、実際の液晶画面の表示はかなり雰囲気が異なるので注意が必要だ
 難があるのは、液晶画面のフォントだ。表示サイズは96×32ドットなのだが、フォントの線が細く、視認性はあまり高くない。製品パッケージの裏面には、非常にくっきりとした画面のイラストが掲載されているだけに、ギャップの激しさにがっかりさせられる。液晶画面の表示内容もすべて英語で、せっかくの国内メーカー製でありながら、ローカライズの跡がみられないのは少々残念だ。また、数日間試用した限りでは、液晶画面の表面に細かい擦りキズがつきやすい点は気になった。

 機能面で注意したいのは、自動電源オフ機能が搭載されていない点だ。電源のオンオフは本体のスライドスイッチによってのみ行なわれ、一定時間が経過したら自動的に電源オフ、といった機能は搭載されていない。そのため、利用後に電源を切り忘れ、知らない間にバッテリが空になっていたということになりかねない。

 ものは試しにと、電源を入れたまま放置してみたところ、バッテリーがゼロになるまでおよそ一晩の間、表示はそのままの状態だった。数時間で使えなくなってしまうレベルではないとはいえ、製品の利用スタイルを考えると、スキャンを終えたまま放置してしまい、次に使おうとした際はバッテリーが放電しきっていた、というアクシデントは十分に考えられる。何らかの改善策を求めたいところだ。

 総じて見ると、基本的な機能や性能は高いものの、細かい使い勝手の部分でソフトウェア面が洗練されていない印象を受けた。コンセプトも明快で初心者にも分かりやすい製品だけに、今後の改善が待たれる。


明快なコンセプトで実用性は高い。問題は実売価格か

製品パッケージ
 「ノートパソコンを起動させずに公衆無線LANスポットを発見できる」という製品の目的からすると、USB給電のみという本製品の充電方式は多少ちぐはぐな気もする。とはいえ、入手しにくいボタン型電池を用いた製品に比べればはるかに経済的な仕様であり、筐体も小型で持ち運びしやすい。USBでの充電速度も速く、使っていてもストレスは溜まらなかった。本連載で過去に紹介した無線LAN探知機の中ではもっとも実用性の高い製品だと言える。

 ただ、本稿執筆時点で実売価格が1万円弱と、競合製品と比較して価格面のアドバンテージは高いとは言えない。無線LANアダプタ機能を搭載したアイ・ビー・エス・ジャパン製品が実売1万円前後である上、液晶画面のない単機能のWi-Fiファインダーが秋葉原の店頭で3,000円以下で売られていることを考えると、若干割高な印象は否めない。前述の細かい機能のブラッシュアップと平行して、リーズナブルな実売価格の設定を望みたいところだ。


関連情報

URL
  製品情報
  http://www2.elecom.co.jp/network/wireless-lan/detector/ld-wifidscbg/
  エレコム
  http://www.elecom.co.jp/

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(kizuki)
2006/03/15 11:05
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