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5ボタンを備えたモバイル用途の無線レーザーマウス ロジクール「V400」


 ロジクールの「V400 Laser Cordless Mouse for Notebooks」は、モバイルユースを見据えたコンパクトな筐体に、5ボタンを搭載した多機能の無線マウスだ。「デュアルレーザーテクノロジー」と呼ばれる技術により、一般的な光学式センサーやレーザーセンサーに比べ、精確な読取が可能であるとされている。


5ボタン仕様のハイエンドな無線モバイルマウス

V400の実売価格は5,980円とリーズナブル。ロジクール製品には珍しくパッケージに解像度の表記がないが、Webサイトによると800dpiとされている
 本製品は、一般的な3ボタン(左右&ホイールボタン)に加え、フォワード&バックの2ボタンを装備した無線マウスだ。デスクトップ用の有線マウスでは5ボタンというのは珍しくはないが、モバイル用でレーザーセンサーを採用し、しかも無線タイプで5ボタンを備える製品は非常に珍しい。

 無線の伝送方式は2.4GHz帯を用いた電波方式で、半径10メートルの範囲で通信が可能だという。レシーバーは、過去に本連載で紹介した「V500」と同様、本体後部に収納する方式で、サイズもほぼ共通である。レシーバーを本体に収納すると電源がオフになる点も、V500を踏襲した仕様だ。電源は単3電池×1本で、メーカー公称値の寿命は約2.5カ月。本体後部には電池残量を示すインジケータがあるので、交換の目安となる時期がわかりやすい。

 さらに本製品は「デュアルレーザーテクノロジー」と呼ばれる新技術を採用しており、従来のレーザーマウスに比べて、さまざまな素材の上で精確な読取が可能であるとしている。メーカーによると「接地面を画像として読み取るのではなく、跳ね返ってきたレーザー光の周波数の変化をマウスの動きの方向や速さとしてセンサーが測定」する方式であり、2つのレーザーを同時に照射するのが特徴とのことである。小柄な筐体に最先端のテクノロジーを盛り込んだ、ハイエンドの無線マウスという位置付けである。


カラーはシルバー&オレンジ、ダークシルバー&ブラックの2種をラインナップ(写真は後者)。前者については非常に特徴的なツートンカラーとなっている レシーバーは本体後部に収納が可能。収納すると電源がオフに、取り出すとオンになる

フォワード&バックボタンの配置に違和感

側面から見た状態。中央下のグリップ部はラバー製で、ホールド感は良い。フォワード&バックの2ボタンはマウスの先端、左ボタンのすぐ横にレイアウトされている
 流線的なデザインが多いロジクールの製品にあって、本製品はサイバーなデザインが大きな特徴である。側面部はラバーグリップを採用しり、汗ばんでも滑りにくく、快適な操作を可能にしている。モバイルユースにおいては、不安定な場所でマウスを使わざるを得ないケースも少なくないので、こうした工夫は大歓迎だ。また、バンパーの採用により、外部からの衝撃に対しても効果があるという。

 実際にマウスを持ってみて気付くのは、フォワード&バックボタンの配置が一般的な5ボタンマウスと大きく異なっている点だ。通常の5ボタンマウスは、本体左側にある拡張ボタンは親指で操作することを前提にレイアウトされている製品が多い。本製品の競合にあたるマイクロソフトの「Wireless Notebook Laser Mouse 6000」もそうだし、ロジクールの従来製品の多くもほぼ同様の設計思想でまとめられている。

 しかし、本製品では本体左側に配されたフォワード&バックボタンは、マウスの先端、左ボタンの外側にレイアウトされており、人差し指でなければ届かない位置にある。つまり、以下のように人差し指1本で3つのボタン、さらにチルトホイールを操作しなければならない配置になっているのだ。

・人差し指:フォワード&バックボタン、左ボタン、チルトホイール
・中指:右ボタン

 5ボタンマウスを初めて使うユーザーならともかく、デスクトップパソコンで一般的な5ボタンマウスの操作性に慣れているユーザーは、非常に馴染みにくいボタン配置だろう。ちなみに、フォワード&バックボタンは側面ではなく上面についているので、仮に親指が届いたとしても、マウスの握りを変えずにクリックするのは事実上難しいところだ。


本製品の競合となるマイクロソフトの4ボタンマウス「Wireless Notebook Laser Mouse 6000」(写真右)との比較。本体サイズはほぼ同じだが、レシーバーはV400が若干小さい 電源は単3電池×1で、およそ2.5ヶ月動作するとされている。重量は約90gと、モバイルマウスとしてはやや重め

写真左の「Wireless Notebook Laser Mouse 6000」の拡張ボタンは親指で操作可能なだが、V400(写真中央)ではフォワード&バックボタンはマウス先端にあり、通常では人差し指で操作をする必要がある。写真右は親指でフォワード&バックボタンのクリックを試みたところ


トラッキング性能は高いはずなのだが……

最近のマウスによく見られる、センサー部が左右のいずれかに寄ったレイアウト
 さて、肝心のトラッキング性能、つまりカーソルの動きの精確さについてだが、こちらも評価が難しい。もちろん、快適に使えているというユーザーがいないわけでないし、筆者が試した範囲では、スチール面でのレスポンスの良さは旧来のマウスと比べても快適だと感じる。

 ただ、筆者が試用した利用環境では思ったような動きをしてくれないケースがあった。例えば、布団の上などシワのある面で使用した際はカーソルの飛びが顕著で、動いたと思ったら止まり、止まったと思ったら動くといった状態で、精確にポインタを合わせることができないのである。布地をいろいろと変えて実験してみたが、どうもうまくいかない。

 また、マウス本体をほんの少し持ち上げただけでカーソルの動きがピタッと止まってしまったり、逆にポーンとカーソルがあらぬ方向に飛んでしまう点は、従来のレーザー/光学式マウスにはあまり見られなかった特性である。この症状はマウスが設置面から離れる際に頻出するため、手を“しゃくる”ような動きでマウスを動かす癖がある場合、かなりストレスが溜まる。ボールタイプのマウスを接地面から離す際に生じるカーソルの“飛び”に近いと言えば、おわかりいただけるだろうか。

 こういった症状は、まれにPC側のスペックの低さが影響していることもあるため、CPUの使用率を確認してみたが、これといって負荷が高くはない。念のためにマウスユーティリティ「SetPoint」をアンインストールし、Windowsの標準ドライバで動作させてみたが、この場合も動きに変化はなかった。SetPointについても、Webサイトからダウンロードできる最新版の「2.47」と、製品添付の「2.42a」の両方を試してみたが、この場合も目立った変化は見られなかった。恐らく、ユーティリティやドライバの問題ではなく、デュアルレーザーテクノロジーの特性であると考えられる。

 ネット上で調べたところ、筆者に限らず、本製品の動きに違和感を覚えているユーザーも少なくないようだ。筆者にしても、同じロジクールのMX1000やLX7、さらに本製品の先代に当たるV500といったレーザー/光学式マウスを過去に使用した経験があるが、本製品のカーソルの動きはそれらとは明らかに異なっている。これが良い意味で異なっているのであれば何の問題もないのだが、今回に限ってはお世辞にもそうとは言い難い。また、スリープ状態に入るまでの間隔がかなり短く、初動で一瞬のラグが発生するのも気になった点である。


利用環境によって評価は大きく異なる製品

 「デスクトップパソコンで使用している5ボタンマウスの快適な操作性を、モバイルユースでも無線で実現したい」。本製品に興味を持つユーザーの多くは、こういった希望を持って、本製品の購入を検討していると思われる。

 しかし、肝心のフォワード&バックボタンが親指ではなく、人差し指でしか操作できないため、デスクトップパソコンでの多機能マウスの操作感をそのままモバイルで味わうという目的を本製品で達成することは困難だ。また、接地面から離れることでカーソルが飛んだり、止まったりする傾向があるため、シワの多い布面での利用は不向きである。ベッドの上や、ヒザの上でマウスを使うことが多いユーザーは、購入する際は慎重に見極めたほうが良いだろう。

 ではどんなユーザーにオススメなのか? というと、モバイルはモバイルでも、操作は机の上で行なうことが多い場合。または、デスクトップユースで、小柄な無線マウスを求めているユーザーということになるだろうか。フォワード&バックボタンには自由にファンクションが割り当て可能であるなど、モバイルタイプの無線マウスとしては飛びぬけて高機能であるため、カーソルの動きとフォワード&バックボタンの操作性にさえ問題を感じなければ、優れたパートナーとなるはずだ。

 いずれにせよ、利用環境によってかなり評価が異なるマウスである。購入する場合は、可能な限り店頭で操作性を確認するなり、似た環境での動作実績を調べた上で判断することをお勧めしたい。


関連情報

URL
  製品情報
  http://www.logicool.co.jp/index.cfm/products/details/JP/JA,CRID=2135,CONTENTID=10915
  ロジクール
  http://www.logicool.co.jp/


(後藤重治)
2006/04/12 11:17
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