Broadband Watch logo

スキャナもプリンタもまとめてLANで共有! エバーグリーン「DN-HPS302」


USBストレージ・プリンタはもとより、スキャナのLAN共有も可能

エバーグリーンの「DN-HPS302」。実売価格7,980円と一般的なUSB-LANコンバータと比較しても最安クラス
 エバーグリーンの「DN-HPS302」は、USB機器をLANで利用できる、いわゆるUSB-LANコンバータと呼ばれる製品の1つ。最大の特徴は、USBスキャナをLANで使うための汎用の技術仕様「SANE」に対応していること。HDDやUSBメモリのLAN共有、プリントサーバー機能に加え、「SANE」への対応によってUSBスキャナについてもLAN共有が可能となる。

 スキャナという製品は、PC周辺機器としては筐体が大型の部類に入る上、利用頻度もあまり高くないことが多く、家庭内では邪魔に扱われがちな存在だ。しかし、本製品を用いることで、このスキャナをネットワーク経由で手軽に共有できるようになる。スキャナ本体を利用のたびに家庭内で持ち運ぶ必要もなくなるほか、SOHOであれば、これまでスキャンを行なうたびにPCの持ち主にスキャニング作業を依頼していたのが、自分のPCから直接読み取りが可能になるなど、メリットは大きい。

 ただし、本製品はスキャナで利用可能であることは公式には謳われていない。設定ユーティリティや英語マニュアルに関連した記述はあるものの、メーカーとしてはあくまでノンサポートというスタンスである。今回の機能紹介もそれに準じた形となるので、本稿を参考にスキャナのLAN共有を試される場合は、あくまでも自己責任という形でお試しいただきたい。


USBハブ並みのコンパクトサイズ。重量も92gと軽量 以前紹介したロジテック「LAN-HDPS/U2」(右)との比較。コンパクトさがよくわかる

業界最小クラスのコンパクトな筐体。設定画面は日本語

 まずは外観のチェックと、基本的な機能を見ていこう。

 筐体は4ポートUSBハブとほとんど変わらないコンパクトサイズで、USB-LANコンバーターとしては業界最小クラスである。USB 2.0×2ポートは上下左右とも余裕を持ったレイアウトで、大柄のUSBメモリを挿しても隣ポートに干渉することはなさそうだ。ただ、ストレージ、プリンタ、(正式対応は謳っていないが)スキャナと幅広く対応していることを考えると、2ポート構成ではやや物足りない感は拭えない。


本体右側面。LANポートと電源コネクタが並ぶ 左側面にはUSBポート×2が並ぶ

 設定には専用アプリケーションまたはWebブラウザを利用する。いずれも日本語に対応しており、使い勝手は良好だ。一部に怪しげな和訳があったり、Webブラウザ画面はアクセスするたびに英語表示に戻ってしまうなどの不満はあるものの、操作性は悪くなく、大きな死角は感じない。

 後述するスキャナ共有機能にも関係するが、本製品は「サーバーモード」と「NetUSBモード」の2モードを備えている。前者は一般的なSambaベースの共有で、本製品に接続したストレージ製品をネットワークディスクとして読み書きできる。後者は、専用のユーティリティをインストールしたパソコンから、あたかもパソコンのUSBポートに直結しているかのように認識させることができ、例えばUSBメモリならリムーバブルディスクとして、プリンタならローカルプリンタとして認識できる。


「サーバーモード」で接続した場合はネットワークドライブとして認識 一方、「NetUSBモード」で接続した場合は、パソコンからは直結状態と同じくリムーバブルディスクとして認識される

ユーティリティは日本語化されているが、稀に怪しい日本語もみられる 登録ユーザーごとに、アクセス権限(読み書き可能または読み込みのみ)が設定できる Web設定画面でも、専用ユーティリティと同じ項目が設定可能だ

ストレージの読み書きは遅め。大容量のデータ転送や動画サーバーには不向き

USBメモリと、USBケーブルを接続したところ。ポートの間隔が広いため隣に干渉しにくい
 ストレージのLAN共有機能については、前回のロジテック製品と同一の環境で、そのパフォーマンスを測定してみた。

 測定方法は、USBメモリ(アイ・オー・データ機器「EDP-1G」)を下記(A)(B)のように接続した後、131MBのZIPファイルをWindowsのエクスプローラ上でドラッグ&ドロップで転送するというもの。参考までに前回のロジテック製品の測定値も掲載しておく。

(A)USBメモリを、パソコンのUSBポートに直結した状態
(B)USBメモリを、ロジテック「LAN-HDPS/U2」経由でネットワークドライブとして認識させた状態
(C)USBメモリを、本製品経由でネットワークドライブとして認識させた状態

 結果は、(A)が20秒、(B)が55秒で、本製品を用いた(C)が2分という結果になった。(B)のロジテック製品は直結状態に比べて3倍の時間を必要としたが、今回のエバーグリーン製品はさらにその倍、つまり直結状態の数倍ほどの転送時間を必要とする。USB 1.1並みとまではいかないものの、実際に使っていても、他社のUSB-LANコンバータに比べて明らかに遅いことを実感する。

 メーカーサイトによると、本製品のCPUはARM9の166MHz。SDRAMは8MB、Flashは2MBとされている。CPUはともかく、メモリ搭載量はやや少なめで、これがパフォーマンスに大きく影響していると考えられる。

 また、USBメモリにDivXファイルをコピーし、ネットワーク経由で再生した場合も、明らかなコマ落ちが発生し、鑑賞に耐えうる状態ではなかった。よって、あくまで小容量のストレージを一時的に共有したり、文書ファイルを参照するといった用途が主で、動画サーバーとして運用したり、大容量のデータを頻繁に転送する目的には向いていないというのが筆者の結論だ。


ノンサポートながら、USBスキャナのLAN共有が可能

USB接続のフラットベッドスキャナを接続したところ。LAN経由でスキャナを使えるのは大きなメリットだ
 ではいよいよ、本製品の目玉機能であるスキャナの共有を行なってみたい。なお、冒頭にも記したように、この機能は公式にはサポートされていない点を重ねてお断りしておく。

 スキャナを利用する際は、本製品のアクセスモードを「サーバーモード」ではなく「NetUSBモード」にした上で設定を行なう。このモードを利用すれば、パソコン側から見てあたかもUSB機器を直結しているかのように認識させることができる。ただしこの場合、サーバーモードと異なり、各パソコンにユーティリティをインストールする必要がある。本連載で以前紹介されたサイレックスのUSBデバイスサーバー「SX-2000WG」とよく似た仕組みだ。

 NetUSBモードに設定後、スキャナを本製品のUSBポートに接続すると、専用ユーティリティの「USB MFP サーバーリスト」タブにUSBスキャナの型番が表示されるので、右クリックして「連結」を選択する。この時点でパソコン側がUSB機器を認識し、ドライバのインストールが開始される。完了後はネットワーク経由でUSBスキャナが利用できるようになる。使い方は直結時となんら変わらず、例えばPhotoshopでEPSONのスキャナを利用する場合、ファイルメニューから読み込み→EPSON TWAINを選択することで、スキャナの操作画面が呼び出される。


専用ユーティリティのメイン画面。NetUSBモードでは、機器名を右クリックして「連結」を選択することでパソコンと接続できる プロトコルの設定画面。右下にある「SANEサーバー」にチェックを入れることで、スキャナのLAN共有が可能になる

 ただ、このスキャナ共有には、かなりクセがある。各パソコンに専用ユーティリティのインストールが必要なことに加え、複数台のパソコンによる同時利用ができないため、自分が機器を使う際は、ユーティリティの「強制接続」を用い、現在のオーナーから文字通り権限を奪い取る必要があることが、その代表例だ。

 また、2台の機器をつないでいる場合、一方をサーバーモード、もう一方をNetUSBモードといった具合に別々のモードに設定することはできないため、スキャナを使うためにNetUSBモードに設定すると、もうひとつのポートに接続しているUSBストレージは複数のPCからの同時読み書きができなくなってしまう。

 これに加え、メーカー側でスキャナ接続をサポートをしていないことが、導入にあたっては大きなネックとなるだろう。スキャナが汎用規格「SANE」に対応しているかどうかが、動作可否を判別する一つの目安となるが、これについても保証できるものではない。英語マニュアルを見る限りではHP社のAll-in-Oneシリーズへの対応は図られているようだが、実際に動くかどうかは試してみなければわからないのが実際のところだ。導入に当たっては、SANEへの対応状況をホームページで確認した上で、自己責任で試すという形になるだろう。

 なお、説明が前後するが、SANEとは「Scanner Access Now Easy」の略で、フラットベッドスキャナなどのイメージングデバイスと画像のやり取りを行なう汎用の技術仕様だ。TWAINに近いものだと考えて差し支えないが、Linuxへの対応など、こちらに分のある特徴も多い。本製品はこのSANEと、前述のNetUSBモードを組み合わせることで、LAN経由でのスキャナ共有を実現している。


実売7,980円とリーズナブル。特性を理解した上で試したい

 先の実験にもあるように、ストレージを共有してガンガン使うにはパフォーマンス的にかなり厳しいが、プリントサーバー用途であれば十分に実用的だし、スキャナをネットワーク化するためだけに買う価値も十分にあると思う。実際、LAN対応によってスキャナを設置場所から動かさなくてもよくなる点は、しばらく試用した中でも大きなメリットだと感じた。それだけに、個別の動作確認は困難だとしても、メーカーにはスキャナ利用に関するなるべく多くの情報公開を望みたいところだ。

 また、実売7,980円という価格は大いに魅力的だ。USBをLANに変換するだけで1万円を超える出費はちょっと、と考えていたユーザーでも、この価格なら比較的手を出しやすいだろう。諸々の特性を理解した上で、1度は使ってみたい製品だ。


関連情報

URL
  製品情報
  http://donya.jp/everg/7.1/4547479490421/
  エバーグリーン
  http://www.everg.co.jp/
  SANE
  http://www.sane-project.org/

関連記事
エバーグリーン、USBストレージをLAN対応にするコンバータ


(後藤重治)
2006/07/05 10:58
Broadband Watch ホームページ
Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.