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前回はディスプレイ・キーボード・マウスの3製品について紹介した(レビュー記事はこちら)
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Windows用のUSBキーボード、マウスを流用できるアップルコンピュータの「Mac mini」。だが、Windowsユーザーとしてはデバイスを都度つなぎ替えたり、ましてやWin/Macそれぞれに1セットを揃えたりするのではなく、1組のデバイスでWin/Macを切り替えて使いたい、というのが本音だろう。
そんなときに大活躍するのが、キーボードとマウス、ディスプレイに対応した切替器、いわゆるKVMスイッチだ。今回は、Mac miniとWindowsマシンを切り替えることを目的に、現在入手可能なWin/Mac対応のKVMスイッチを比較してみたい。
■ キーボードとマウス、ディスプレイを同時に切り替える
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ズラリ並んだKVMスイッチ。Edesse mini USB Plus(手前右)を除き、どれもMac miniのACアダプタよりひとまわり大きい
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KVMスイッチの「KVM」とは、それぞれKeyboard、Video、Mouseの頭文字を取ったもので、1台でキーボードとマウス、ディスプレイの3つに対応した切替器を指す。最近では、コンシューマ向けにオーディオの切替機能やUSBハブ機能を付与された製品も珍しくない。
今回は、Mac miniとWindowsマシンを切り替えることが前提なので、キーボードとマウスはUSB接続、ディスプレイはDVIに対応した製品を試すことにした。DVIによるデジタル接続は、アナログ接続(D-sub15)と違って画質の劣化がなく、細部までくっきりと表示できるのが特徴だ。Mac miniは、このDVI接続に標準で対応しているため、これを生かさない手はない。従って、今回はこのDVI対応を前提に、話を進めることにする。
なお、今回使用するキーボード・マウス・ディスプレイは以下の通りである。
○キーボード:FILCO FKB-113-JU
○マウス:Microsoft IntelliMouse Explorer 4.0A(バルク)
○ディスプレイ:I-O DATA LCD-AD201GS
WindowsマシンのOSはWindows XP SP2、グラフィックボードはNVIDIA GeForce FX 5200を採用したアイ・オー・データ機器の「GA-5200/AGP」だ。Mac miniについては、素のモデルそのままなので省略する。
■ DVI対応のKVMスイッチは4製品
本題に入る前にお断りしておくが、KVMスイッチというのは、相性問題がとびきり発生しやすい製品である。ただでさえ3つのデバイスと2台のパソコン、計5つの機器を接続することに加え、OSのバリエーションやロットの違いによる個体差まで考慮すると、その組み合わせは天文学的な数字になり、発売元のメーカーといえど完璧な動作検証は不可能だ。今回の結果も、あくまで筆者の環境で試した結果であり、同じ構成での再現性を保証するものではないことを予めお断わりしておく。
さて、今回試用するKVMスイッチは以下の4製品だ。いずれもDVIに対応し、2台の切替が行なえる製品である。解像度については、特に断りがない限り1,600×1,200ドット(UXGA)にてテストを行なっている。なお、ATEN製品は、国内代理店であるプリンストン・テクノロジーからお借りし、それ以外の製品はメーカーから直接お借りしている。
○ATEN「CS-1762」
○サンワサプライ「SW-KVMA2DVU」
○コレガ「CG-PC2UDA」
○エヌエムアイ「Edesse DVI」+「Edesse mini USB Plus」
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ATEN「CS-1762」。実売価格は21,800円。背面にファームアップ用のポートが付属するのが大きな特長。サンワ・コレガ製品と異なり、縦置きは不可能。マニュアルは英語だが、各国語版のクイックスタートガイドが付属する
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サンワサプライ「SW-KVMA2DVU」。標準価格は31,290円。縦置きスタンドが付属することや、各ポートのシルク印字の向きを見る限り、完全に縦置きを想定した仕様。黒のフェイスが精悍だが、Mac miniと並べて置くには少々ゴツいかも
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コレガ「CG-PC2UDA」。標準価格は23,100円。サンワ製品と同じく縦置きスタンドが付属するが、安定性はもう少し
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エヌエムアイ「Edesse DVI」と「Edesse mini USB Plus」。標準価格はそれぞれ21,000円と10,290円。付属のケーブルを用いて接続することで連動切替に対応する。今回試用した製品の中では唯一のプラスチック筐体。キーボードホットキーには対応せず、切替は本体ボタンで行なうという仕様
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■ それぞれ異なる使い勝手、ただし3製品はほぼ同じ機能
検証の結果をまとめたのが以下の表である。
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各製品のスペックと筆者環境下での検証結果(クリックで拡大)
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表をご覧いただければわかるが、ATEN、サンワサプライ、コレガの製品は機能や挙動が非常に似通っている。外観を見ても、ポートの配置や添付ケーブルの形状もほぼ同一であり、ビープ音、ショートカットキーも同一で(*ただし初期値は若干異なる)、OEM供給による同一製品がベースになっていると考えられる。
相違点として挙げられるのは、ATEN製品にはファームアップデートのための専用ポートとケーブルが付属していること、コレガとサンワの両製品は縦置スタンドが付属していることである。また、コレガとサンワの両製品は日本語マニュアルが付属しているが、ATEN製品は英語マニュアル+日本語クイックガイドの構成となっている。
これら3製品とまったく異なる系列に属するのが、エヌエムアイのEddesseシリーズだ。この製品はDVI切替器とUSB切替器が別筐体になっており、専用の連携ケーブルを用いて接続する方式になっている。2つの筐体に分かれてはいるものの、DVI切替器本体のボタンのみで同時切替が行なえるので、使い勝手そのものは1筐体のKVMスイッチと変わらない。ただし、キーボードのホットキーによる切替はサポートしておらず、本体のスイッチでの切替となる。
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上からサンワ、コレガ、ATENの各製品(前面)。各ボタン・ポートの配置はまったく同一
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上からサンワ、コレガ、ATENの各製品(背面)。ATEN製品の左上にあるファームアップポートを除き、背面ポートの配置はほぼ同一
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ATEN、サンワ、コレガの製品に付属する専用ケーブル。DVI-D、USB、オーディオケーブル×2が一体化したもの。固く径が太いため、取り回しは必ずしもよくない。重量もあるため、縦置きスタンドが付属するコレガ・サンワの製品でも、木ネジを使って机や台に固定させないとケーブルが支えられない雰囲気だ
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ATEN製品の接続例。一体化したケーブルを用いているため、配線は比較的コンパクト。前面のコンソールポート(左奥)にはキーボードとマウスを接続して使用する。コレガ、サンワの製品も接続方法は同一
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エヌエムアイEddesse製品の接続例。2製品の連携ケーブルがあるぶん、ケーブル本数は少々多めの印象。筐体は薄く軽いため、ケーブルに引っ張られて位置が動いてしまうこともしばしば。キーボード、マウスはEdesse mini USB Plus(右)に接続する
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■ 切り替えはスムーズだが、一部で不具合も
KVMスイッチは、切替時の挙動がどれだけスムーズであるかが使い勝手にダイレクトに影響する。そもそもUSBデバイスは、PS/2仕様のデバイスのように瞬時に切り替えることは仕様上難しく、若干のタイムラグが発生してしまうのが常だ。
しかし、今回試用した4製品はいずれもタイムラグはほとんどなく、実用上問題はなさそうである。唯一、Eddesse製品がWin→Mac切替時に無反応時間が筆者の環境では2秒ほどあったが、致命的ではなく、十分に使用に耐え得るといって良いだろう。
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ATEN「CS-1762」本体前面のUSBコンソールポート(手前)。ここにキーボードをつないでいる場合のみ、キーボードのホットキーによる切替が行なえる。背面の汎用USBポートに接続している場合は、ホットキーは機能しない
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ATEN「CS-1762」本体前面の切替ボタン。ATEN、コレガ、サンワの3製品では、この本体ボタン以外に、キーボードショートカットでの切替も行なえる
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ATEN「CS-1762」背面左上にある、ファームアップ用の専用ポート。このポートとシリアルポートを付属の専用ケーブルでつなぐことでファームアップが行なえる
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もっとも、別の問題がないわけではない。筆者が試用した環境で特に気になったのが、サンワ/コレガの2製品に共通する以下の症状である。
(1)Mac→Win→Macと切り替えると、Macの壁紙が消失する
(2)Mac→Win→Macと切り替えると、Macのウィンドウ位置がリセットされる
(3)Macの画面上で、黒および濃い特定色の部分にチラツキが発生する
(1)は壁紙さえ使わなければ気にならないが、(2)は明らかに作業効率が低下してしまう。どうやらエミュレートが完全でないらしく、一旦、解像度1,024×768ドットとして認識され、その後1,600×1,200ドットに切り替わっているようだ。この点に関しては、ひょっとするとDVIの仕様なのかもしれない。
また、(3)のチラツキに至っては、テレビのサンドストームのような明滅を繰り返すため、グラフィックやDVD鑑賞などの用途では目障りだ。ネット上でのユーザーからの報告を見る限り、特定のディスプレイ・グラフィックボードに依存する問題のようだが、それほどレアな環境に限定した症状とも言えないため、一刻も早い対処を望みたいところだ。なお、動作保証外となるが筆者環境ではATEN製品でも1,600×1,200ドット表示ができたが、同様の問題が発生していた。
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Mac miniで1,600×1,200ドットにて表示を行なった状態。筆者の環境では、この状態でいったんWin側に切り替え、その後またMac miniに戻すと、ウィンドウ位置がリセットされ、かつ壁紙が消失するという問題が発生した
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ウィンドウ位置リセットや、壁紙消失が発生したところ
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また、Macに接続した際、解像度とは無関係に、黒および濃い特定色の部分にチラツキが発生した。写真の黒い部分などはご覧の通りで、かなり目立つ。ただし、ディスプレイに依存する問題らしく、この問題がまったく発生しない場合もある模様
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エヌエムアイ「Edesse DVI」は本体前面のディップスイッチで設定を行なう。パソコン本体の電源投入と連動させるなど、細かい挙動を設定することができる
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一方のエヌエムアイ製品については、さしあたって不具合らしきものは見当たらない。一方のPCの電源がオフになった際、もう一方に自動的に切り替わるなど、使い勝手を向上させるための細かい工夫も好感が持てる。ただし、同社製品情報ページでは1,920×1,280ドットまで動作確認されているとのことだが、筆者の環境では1,280×1,024ドットまでしか表示できなかった。
なお、これは4製品すべてに言えることだが、USBポートはいずれもUSB 1.1仕様であり、現在主流のUSB 2.0には対応していない。HDDなどのストレージを接続する際には、スピードの遅さを我慢して使うか、もしくはUSB-LANコンバータのような製品を利用して、LAN接続で使用する方が良さそうである。
また、いずれの製品も、Win/Macそれぞれの電源投入時に、起動するマシンを選択しておかないときちんと立ち上がらない。PS/2タイプの切替器であれば、一方のパソコンを使用中に別のパソコンの電源を投入し、完全に立ち上がってから切り替えて使うことが可能だが、今回試用した4製品ではそれは不可能であった(※エヌエムアイ製品では、電源投入時に強制的にそのPCのポートに切り替わる)。これは切り替え器の仕様というよりも、DVIおよびUSBに依存する問題だと推測される。
■ 利用スタイルに合わせた製品選びを
以上、KVMスイッチ4製品を比較してみたが、いずれも一長一短であり、ベストバイ製品は非常に選びにくい。筆者が試用した環境下では、不具合が見られないエヌエムアイ製品がお勧めだが、キーボードショートカットでの切替をサポートしていないこと、Mac→Winへの切替時に若干のタイムラグが発生する点は注意したいところだ。また、音声の切替は未サポートなので、スピーカーも切り替えたい場合は別途オーディオ切替器を用意する必要がある。
一方、ATEN系列の3製品からチョイスする場合は、将来のファームアップに期待したければATEN製品を、縦置きスタンドに魅力を感じるならコレガ・サンワ両製品から選ぶことになるだろう。ただし、ATEN製品も、本稿執筆時点の3月15日ではファームウェアは公開されていないため、ファームアップの有無が決め手にはならない。どの製品も1万円台半ばから3万円程度と、決して安い買い物ではないので、上の表などを参考にしてもらいながら、自分の利用スタイルに合った製品を選んでほしい。
■ URL
ATEN「CS-1762」(プリンストン)
http://www.princeton.co.jp/product/kvm/kvm_cs176x.html
サンワサプライ「SW-KVMA2DVU」
http://www.sanwa.co.jp/product/syohin.asp?code=SW-KVMA2DVU&cate=9
コレガ「CG-PC2UDA」
http://www.corega.co.jp/product/list/changer/pc2uda.htm
エヌエムアイ「Edesse DVI」(MEM-DVI)
http://www.edesse.com/edesse_jp/dvi01.htm
エムエヌアイ「Edesse mini USB Plus」(MES-USB-P)
http://www.edesse.com/edesse_jp/m_usb.htm
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(kizuki)
2005/03/30 11:03
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