インテルは9日、同社のWiMAXに関する取り組みや2.5GHz帯の無線を利用した広帯域移動アクセスシステム(BWA)の動向に関する説明会を開催した。
■ WiMAXの好調な展開状況をアピール。固定/モバイルWiMAXの中間規格も検討
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インテルの庄納氏
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今回の説明会では、インテルの研究開発本部 シニアリサーチャーの庄納崇氏からWiMAXの取り組みなどに関する説明が行なわれた。同氏は冒頭、「Centrinoが2003年に登場して以降、無線LAN機能を搭載するノートパソコンは飛躍的に伸びた」と発言。現在標準化作業が進められているWiMAXについて「Wi-Fi(IEEE 802.11a/b/g/n)と携帯電話の補完的な関係を持っている」と語り、両者の中間にWiMAXが位置することを改めて強調した。
また、モバイルWiMAXについては「数Mbpsの通信速度で常時接続できる環境を屋外で実現させるもの」と説明。「モバイルインターネットを実現できる既存規格はなく、モバイルWiMAX=モバイル・インターネットである」とも述べた。庄納氏は続けて、業界団体であるWiMAX Forumのメンバー数が2004年春の46社から437社へ大幅に増加している点、すでに認証を受けた固定WiMAX製品がある点を挙げ、「あとはビジネスを開始する段階だけ」と同フォーラムの活動が好調なことをアピールした。
庄納氏はWiMAXの標準化組織として、IEEE 802.16ワーキンググループ、インテルやKDDIなど14社がボードメンバーを務めるWiMAX Forumの2つを紹介。庄納氏は、「IEEE 802.16ワーキンググループでは物理層とMAC層に関する作業を行なっている」と述べる一方、「WiMAX Forumは、IEEE 802.11のWi-Fi Allianceに相当する組織だが、免許取得が必要な点などWi-Fi Alliance以上にWiMAX Forumが果たす役割が大きい」と説明した。
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各無線規格の位置付け
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WiMAXの展開状況
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WiMAX Forumには8つのワーキンググループが存在するという
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庄納氏はWiMAXの標準化組織として、IEEE 802.16ワーキンググループ、インテルやKDDIなど14社がボードメンバーを務めるWiMAX Forumの2つを紹介。庄納氏は、「IEEE 802.16ワーキンググループでは物理層とMAC層に関する作業を行なっている」と述べる一方、「WiMAX Forumは、IEEE 802.11のWi-Fi Allianceに相当する組織だが、免許取得が必要な点などWi-Fi Alliance以上にWiMAX Forumが果たす役割が大きい」と説明した。
WiMAX Forumでは8つのワーキンググループ(WG)が活動しており、「特にサービス提要を踏まえた要求条件を定めるService Provider WG(SPWG)が大きな影響力がある」と庄納氏は語る。実際、同フォーラムメンバーの中でサービスプロバイダーが占める割合は33%と最も大きいという。
また、「最も新しいワーキンググループ」として紹介された「Global Roaming WG」では、3G携帯電話のようなグローバルローミングの実現に向けた活動を行なっているという。庄納氏は「日本のKDDIや韓国のKT、米国のスプリントなど各国の通信事業者がグローバルローミングの取り組みを進めている」と語った。
WiMAXの技術仕様面では、固定WiMAXと位置付けられる「IEEE 802.16-2004」、モバイルWiMAXと位置付けられる「IEEE 802.16e-2005」について、「固定WiMAXがODFMを、モバイルWiMAXがOFDMAを使用しており、物理的に規格が異なっている」と説明。ただし、「IEEE 802.16e-2005は、IEEE 802.16-2004にモバイル要素を追加した補足修正的な仕様書となっており、単独で仕様が参照できる『IEEE 802.16-2007』を2007年内にまとめる動きがある」とした。
加えて、「IEEE 802.16-2004を屋外環境で使用したい需要もあり、WiMAXとモバイルWiMAXの中間として、OFDMをベースにした発展型WiMAXという考え方も出てきている」と述べ、固定WiMAX、モバイルWiMAXに続く、新たなWiMAXの登場を示唆した。このほか、WiMAXの認証スケジュールでは2006年1月に固定WiMAXの認証を実施し、2007年第2四半期にはモバイルWiMAXの第1回認証が行なわれる予定。認証ラボは既設済みのスペインに加えて、韓国・中国・台湾でも順に開設される見通しだとした。
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Service Providerが占める割合が最も大きい
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IEEE 802.16の仕様概要
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■ モバイルWiMAXでは2.5GHz帯に注力。ローミング対応製品の投入も
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ピークPHYデータレート
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モバイルWiMAXの今後のロードマップとして庄納氏は、「2.5GHz帯で生じる不感地帯に対応するためのマルチホップ技術をサポートした『IEEE 802.16j』への取り組みが2006年第2四半期から始まっている」と説明。また、「時速360kmや500kmでの利用などを想定した『IEEE 802.16m』の議論も2007年第1四半期に開始された」と述べた。
モバイルWiMAXの性能に関しては、1ユーザーで帯域をすべて占有し、ダウンリンク(DL)またはアップリンク(UL)片方の通信を行なった場合で、「10MHz幅のピークPHYレートがDLで31.68Mbps、ULが14.11Mbpsになる」と説明。また、「スループットおよび1Hzあたりのスループット効率は、第3.5世代携帯電話と比較して3倍程度ある」と語り、モバイルWiMAXの性能の高さを語った。一方、第4世代ではブロードバンド、モバイルともにOFMDAを採用する流れにあり、「非常に似た技術が将来的に採用されることで、双方の間で融合が生じるかもしれない」と付け加えた。
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各地の周波数割当状況
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また、世界各地の周波数割当状況に関しては、「複数ある周波数帯の中で、特に2.5GHz帯への注目が集まっている」と庄納氏は説明する。そのため、IEEEとWiMAX Forumでは協力して、IMT-2000にモバイルWiMAXを追加するよう提案しているという。この提案に対する議論は2007年5月の京都での会合で実施される予定で、庄納氏は「これらの議論を踏まえて、2.5~2.69GHz帯のグローバルな利用が可能になる見込みだ」とした。
日本における2.5GHz帯の使用した広帯域移動アクセスシステム(BWA)の動向に関しては、モバイルWiMAXや次世代PHSなど4種類の仕様が検討されている。庄納氏は海外動向を含めて、「2.5GHz帯では特定技術ではなく、事業者が使用したい技術を柔軟に選択できる体制にすべきだと考えている」とコメント。また、日本では同周波数帯に衛星やモバイル放送が隣接するためガードバンドが設定されている点を挙げ、「BWA内でもモバイルWiMAX事業者間で1MHz、異なるBWA規格事業者間で5MHzのガードバンドが必要だとされている」と付け加えた。
最後に庄納氏は、日本におけるBWAの運用スケジュールを紹介。「総務省が2007年第2四半期に周波数割当計画を含めた割当方針(案)を発表予定である」と述べ、「その後に認定申請や周波数割当を経て、2008年後半には免許割当を受けた事業者がサービス提供を開始する見通しである」とした。
また、同社におけるWiMAX製品としては、2007年にかけてモバイルWiMAX(Wave2)対応カードの出荷を予定。そして、2008年にはノートPCなどへのWi-FiとWiMAXの内蔵化を進めるとしており、「2009年にはグローバルローミングが可能な端末が登場するのではないか」と今後の製品展開を語った。
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日本における2.5GHzを使用したBWA運用スケジュール
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インテルのWiMAX製品展開見通し
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■ URL
インテル
http://www.intel.co.jp/
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(村松健至)
2007/04/09 19:06
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