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吉田氏
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インテルは1日、WiMAXに対する取り組みや標準化動向に関する説明会を開催した。
インテルでは、4月にもWiMAXに関する説明会を開催しているが、今回は同社 代表取締役共同社長の吉田和正が出席。また、来日している米Intelのインテル・フェロー 兼 モバイル・ワイヤレス事業部CTOのシアバッシュ・アラムーチ氏、コーポレート・テクノロジー統括本部 通信/技術政策・標準化担当ディレクターのピーター・ピッチ氏に加え、WiMAXフォーラムの代表 兼 会長を務めるロン・レズニック氏も登壇した。
吉田氏は、「インテルでは2002年頃からモバイルブロードバンドを推進しているが、その中で重要だと考えている技術がWiMAXになる」とコメント。「モバイルブロードバンドの利便性向上は、我々の生活に変化や変革をもたらすとともに、コンピュータ業界の発展に繋がるもの」と語り、「日本を豊かにしていく上で、WiMAX技術によるサービスを積極的に提供していくことが重要になる」と述べた。
■ モバイルインターネット実現には低価格な機器や回線、妥当な速度が必要
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アラムーチ氏。手に持つのは同社のWiMAXチップ
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最初に登壇したシアバッシュ・アラムーチ氏からは、モバイルWiMAX(IEEE 802.16e)の技術動向における説明があった。
アラムーチ氏は、「モバイルインターネットの実現には、低価格な機器や月額固定制といった適切な料金設定が必要」と説明。また、「インターネット上で提供されている多くのサービスやアプリケーションを利用する上で、下り1Mbps、上り200kbps程度の通信速度に加え、どこでも利用できる常時接続性やシンプルなユーザーインターフェイスの実現が条件になる」とした。ただし、通信速度面に関しては「ムーアの法則に従うならば、2年ごとに倍増する可能性もあるかもしれない」と付け加えた。
また、ADSLやDSL、無線LANとのデータレート比較を紹介し、WiMAXが実測値でこうしたサービスとの透過性を持っていると紹介。加えて、WiMAXフォーラムで計測したWiMAXとHSPA、EVDOのスループット比較を示し、「他の規格と比較して、モバイルWiMAXのスループット性能が高いことがご理解いただけるのではないか」と優位性を語った。
技術面に関しては、異なる周波数帯やチャネルでの運用をサポートする拡張性や、OFDMAによる通信性能などの特徴を紹介。また、複数のプロトコルが混在する第3世代携帯電話(3G)と比較して、「レイヤ1、レイヤ2、IPというようにWiMAXではシンプルな構成を取っている点も特徴である」とした。
このほか、第4世代のモバイルブロードバンドについては、「複数の形態が存在すると思うが、いずれもOFDM技術をベースに、新しい周波数帯を利用する、フルIP環境のものになるだろう」と予想した。
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モバイルインターネットで必要な条件
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HSPAやEVDOとのスループット比較
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■ 周波数帯域の解決には柔軟な対応が必要に
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ピッチ氏
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ピーター・ピッチ氏は1980年代に米国の連邦通信委員会(FCC)に在籍経験があり、同国の通信政策を交えながらWiMAXの標準化動向を紹介した。
ピッチ氏は、「ムーアの法則に従えば、2010年には1つのMPUに数十億個のトランジスタが集積され、1秒あたりで1兆回以上の処理が可能になる」と発言。「現在、無線機器には非常に多くのアナログ部品が実装されているが、今後はこれらがデジタル化され、ムーアの法則によるコスト効果が期待できる」と語った。
機器の改良が進む中で、ピッチ氏が指摘するのは「通信に使用する帯域が不足する」ということ。「大部分の周波数帯域は特定の目的で使用されており、これらは以前から存在する古い技術を使用した状態が継続しているとも言え、今後はこれら効率の低い利用形態から効率を高いものへと移行する必要がある」とした。
このうち、IEEE 802.11b/gが利用する2.4GHzやIEEE 802.11aが利用する5GHzのように免許不要で利用できる帯域に対しては、「UWBが新しい利用形態として考えられ、次世代の高速PAN的な役割を担える」と説明。また、米国の例としてテレビの空きチャネルを利用した無線通信方法も紹介し、「ニューヨークやサンフランシスコなどでも数カ所の空きチャネルが利用可能で、限定的かもしれないが、価値のある利用形態になるのではないか」と語った。
免許が必要な帯域へのアプローチに関しては、米国での2.5GHz帯の周波数割当動向を紹介。「従来は片方向の動画配信などに利用されていたが、スプリントが2年間で20億ドルを投じて、モバイルWiMAXのサービスを計画している。これによって、6,000万人から8,000万人の米国民をカバーできるサービスになるはずだ」と述べた。このほか、米国におけるテレビ放送デジタル化に際した周波数の活用事例も紹介された。
ピッチ氏は、「さまざまな分野でデジタル化が進む中で、無線分野においても技術的な変化が生じるだろう」とコメント。「周波数帯における問題解決は、技術的な柔軟性を優先した体制が必要になる」とした。その上で、「日本は物事に対する適用性や適合性、熟達性が高い国であり、次回来日する際には新しい技術が市場に登場していることを期待している」と締めくくった。
■ WiMAXフォーラム代表「日本におけるモバイル市場の成長余地は大きい」
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レズニック氏
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WiMAXフォーラムのロン・レズニック代表 兼 会長からは、WiMAX技術の概要とフォーラムの活動状況を中心に説明が行なわれた。
レズニック氏は「WiMAXは携帯電話の音声市場に競合する技術ではなく、3Gのデータ通信サービスを補完するものだ」と改めて説明。「3Gとの補完、ADSLとのバンドルに加え、デジタル・デバイドソリューションへの活用が考えられる」と利用シーンを紹介した。日本市場に関しては、「固定回線は約3,120万件であるのに対して、モバイルはPHSの200万と大きな開きがある」と指摘し、「モバイル市場の成長余地は大きい」と語った。
WiMAXフォーラムには現在440社以上が参加。このうち、日本企業はボードメンバーを務める富士通とKDDIなど合計30社(5月15日現在)に上るという。そうした中で、WiMAXフォーラムでは中国とインドに支部を現在設けているが、「新たに日本にも地域支部を設ける考えで、30日から60日以内に開設に関するアナウンスを行なう予定である」と日本での活動を強化することを明らかにした。
レズニック氏は、5月15日に総務省が2.5GHz帯の周波数を新規参入事業者2社に原則割り当てるとした指針案にも関して、「既存事業者にとっては驚きだったかもしれないが、私自身としては非常に良い決定だと考えている」とコメント。「既存事業者は出資による参加も可能であり、新規参入によって競争が促進され、消費者にとってメリットが得られるサービスが期待できる」とした。
このほか、「WiMAXに対応した機器は、ノートPCへの内蔵やPCカードタイプがトリガーになり、低価格で提供することが可能である」と述べるとともに、「多様なフォームファクタとしての利用が可能で、家電やエンターテイメント機器への活用も期待できる」とした。
その上でレズニック氏は、「WiMAXは世界65カ国以上、270社以上の事業者がトライアルやサービス展開を行なっている」と発言。「プラグフェスタでも65製品が登場しており、今後は日本を含めて普及に向けた機運が高まるだろう」と自信を示した。
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日本における固定回線とモバイルのインターネット市場
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WiMAX認証製品のロードマップ
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■ URL
インテル
http://www.intel.co.jp/
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(村松健至)
2007/06/01 16:25
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