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プロジェクトの目的
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独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、公衆無線LANサービスの利用促進技術に関する実証実験を1月19日から21日まで開始する。初日となる1月19日には、プレス向けの説明会と実証実験のデモが行なわれた。
この実証実験は、NEDOのほかに社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)のモバイル・ホームシステム協議会、同協議会の開発メンバーとして参加するNEC、富士通、日立製作所が共同で行なうもの。公衆無線LAN上で新たなサービスを提供するための基盤技術開発を目的とし、2004年度は「フェーズ1」期間として仕様検討や技術開発、今回の実証実験を踏まえてビジネス要素を確認。2005年度はユーザーを交えた疑似ビジネスの展開によって実用仕様を固め、ビジネスストーリーを確認する「フェーズ2」が予定されている。
実証実験は六本木ヒルズ森タワー2階のWEST WALKで各日3回に渡って行なわれる。参加者には無料でPDAが貸し出され、エリア内を移動しながら異なるサービスへシームレスに切り替わる「シームレス認証」、現在位置に応じた店舗情報をプッシュ配信する「プラグ&サービス」、映像ストリーミングが途切れることなく無線LANと公衆通信網を切り替えられる「シームレスハンドオーバ」の3技術が体験可能。なお、実証実験には事前に申し込みを行なったユーザーのみ参加できる。
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プロジェクトの活動計画
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NECの「シームレス認証」実験概要
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富士通の「プラグ&サービス」実験概要
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日立の「シームレスハンドーバ」実験概要
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■ エリア内を移動しながら自動で認証・情報配信
実証実験はNECの「シームレス認証」、富士通の「プラグ&サービス」、日立製作所の「シームレスハンドオーバ」の順に体験できる。シームレス認証は端末貸し出し時に赤外線で無線LANの設定を行ない、無線LANエリアが切り替わった場合は、エリア内のRFIDタグへPDAをタッチさせるだけで自動的に無線LANの設定を変更する仕組み。RFIDタグへタッチした際に、六本木ヒルズのガイド情報も画像と音声で配信される。
シームレス認証の最終エリアではSIPサーバーへ自動で接続、音声認識による道案内やコールセンターのコンパニオンとのVoIP通話が体験できる。音声認識では「ここから**駅まで行きたい」とPDAのマイクに向かって話しかけることで自動的に経路の検索結果を表示する。この技術によって、端末のみでガイド情報を伝えられる「無人ガイド」が実現できるほか、迷子になった場合もコールセンターへすぐに連絡が可能だという。
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NECの実験端末
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エリア内のRFIDタグにPDAでタッチ、設定を自動変更すると同時にエリア情報を取得
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配信された六本木ヒルズ情報
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音声認識による駅経路検索も可能
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富士通の「プラグ&サービス」は、利用開始時に登録したユーザーの嗜好と無線LANによる位置情報を組み合わせ、付近の店舗情報をプッシュ配信する仕組み。PDAにはユーザーの嗜好に合致した店舗が地図上に表示されるほか、店舗に近づいた時には店舗の詳細情報を配信する。地図には店舗情報以外に付近のスタッフの居場所も表示される。
日立の「シームレスハンドオーバ」では、無線LANとauのCDMA 1x EV-DOのネットワークを切り替えながら動画を途切れずに再生するデモを実施。無線LANでは動画のサイズを大きく、EV-DOではサイズを小さくすることで、ネットワーク切り替えを視認しやすくなっている。デモではネットワークが頻繁に切り替わっていたが、動画はまったく途切れずに再生されていた。
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富士通の実証実験。ユーザーの嗜好に合った店舗を地図上に表示。店舗付近では店舗情報も配信する
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日立のデモは視聴のみ
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無線LAN接続時の動画。画像サイズが大きい
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auのCDMA 1X EV-DOネットワークに自動で切り替わると、画像サイズが小さくなるが動画は途切れずに再生される
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■ 技術自体は完成に近く、2005年度中の技術公開が目標
六本木アカデミーヒルズ49階では、実証実験を含めた本プロジェクトの構成技術や、実証実験エリアでは行なわれていないデモなども紹介。NECでは認証L2トンネルや認証プロキシの技術説明などを展示していた。
認証L2トンネルは、IP層のレイヤ2とは異なるレイヤ2(L2)で認証を行なうことで、管理体系が同じであれば、無線LANのセグメントの異なるエリアへ移動しても認証を保持できる技術。この技術を使うことで、同じ店舗内でフロアを移動した場合にも認証を保持、無線LANのシームレスな移動が可能になる。
認証プロキシは、ユーザー認証をプロキシサーバーで行なう技術。従来まで同じエリアに複数の公衆無線LAN事業者が存在する場合、事業者ごとに異なるアクセスポイントを設置、ESS-IDなども違っていたが、認証プロキシで事業者を特定して接続を切り替えることで、異なる事業者でも共通のアクセスポイントやESS-IDを共有でき、ユーザーの利便性も高められる。また、機器設置を追加する必要がないため、サービス提供者の増減も容易に対応できるという。
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認証L2トンネルでは、同じ店舗内でフロアを移動した場合でも無線LANの認証を保持できる
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同じアクセスポイントを異なる事業者が共有できる認証プロキシ
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展示会場では、実証実験のプレゼンス情報を利用した会場管理システムも展示。ユーザーの位置情報をプレゼンス情報として抽出し、エリアごとの混雑状況や大まかなユーザーの位置などを一括して表示できる。
実証実験は赤外線とRFIDで認証を行なっているが、今後の展開としては、可視光に付与したタグでも同様の認証が可能だという。可視光タグであれば、店舗内の照明にタグを付与できるほか、照明の効果でよりユーザーの認知を高めることも可能。ただし、可視光タグは有効範囲が広いため、初回のユーザー認証には赤外線のように指向性が高い認証が向いており、可視光タグはエリア移動時の認証や情報配信用のタグに適しているという。
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2Fの実証実験のプレゼンス情報を確認できる会場管理システム
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可視光IDによる認証や情報配信のデモ
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富士通は、公衆無線LANとPHSデータ通信をシームレスに切り替える「@niftyコネクトforモバイル」のデモを展示。これは@niftyが2003年に試験サービスとして提供していた「@niftyモバイルパック」を正式サービス化するもので、@niftyのPHSデータ通信サービス「「@nifty Mobile P」と公衆無線LANを自動で切り替えることが可能。近日中にサービスを公開する予定だという。
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富士通の保有技術。無線LANとPHSの自動切り替え「@niftyコネクトforモバイル」は近日公開予定
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日立は実証実験と同じシームレスハンドオーバの技術説明を展示
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モバイル・ホームシステム協議会の無線LANスポットワーキンググループ主査を務める江崎浩東京大学助教授は、今回の実証実験について「技術的には十分サービスインできるものもあるが、実際に使ってみないとわからない問題もあり、こういった実証実験のプロセスは非常に重要」とコメント。技術自体は完成に近づいており、2005年度中にはミドルウェアの形で本技術を公開したいとの展望が示された。
■ URL
NEDO
http://www.nedo.go.jp/
モバイル・ホームシステム協議会
http://mhsf.jeita.or.jp/
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(甲斐祐樹)
2005/01/19 16:02
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