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イー・モバイル、NTTドコモ、KDDIのデータ通信サービスを比較

 13年ぶりとなる携帯電話市場への新規参入を果たしたイー・モバイルに続き、NTTドコモ、KDDIが次々に開始したPC向けの定額データ通信サービス。3サービスを利用までの流れや通信速度、料金などさまざまな面から比較した。


イー・モバイルに続きNTTドコモ、KDDIが高速の定額データ通信に参入

 2007年はモバイルブロードバンド環境に大きな変化のあった年だった。まずはイー・モバイルがHSDPA形式による「EMブロードバンド」を3月31日に開始。続いてNTTドコモが同じくHSDPA方式による「定額データプランHIGH-SPEED」を10月22日に、KDDIはEVDO Rev.A方式を採用した「WINシングル定額」を12月22日に開始し、3つの高速データ通信サービスが市場に出揃った。

 通信速度の理論値はキャリアごとに特性が異なり、下り速度ではイー・モバイルの7.2Mbpsが最速で、NTTドコモの3.6Mbps、KDDIの3.1Mbpsと比較しても2倍近い速度。逆に上り速度では下りが最も遅いKDDIが1.8Mbpsと最も速く、イー・モバイルとNTTドコモは共に384kbps。ただし、KDDIの場合EVDO Rev.Aに対応していないエリアではり2.4Mbps、上り最大144kbpsになるほか、NTTドコモもHSDPA対応エリア以外では下り最大384kbpsになる。また、これらは理論値であって実際の数値ではない点に注意しておきたい。

 料金の詳細は後述するが、イー・モバイルは完全定額プラン1種類と2段階定額プラン2種類を用意。KDDIは2段階定額プランのみだが、2年間の利用を条件とする「フルサポートコース」か、利用期間の制限がない「シンプルコース」で月額料金やパケット料金が変化する。NTTドコモは2段階定額プラン1種類のみで、最新の音声端末「905i」シリーズで採用された「バリューコース」「ベーシックコース」といった料金プランは対象外となる。

事業者名 サービス名 通信速度 方式 通信制限
下り 上り
イー・モバイル EMモバイルブロードバンド 7.2Mbps
(3.6Mbps)
384kbps HSDPA なし
NTTドコモ 定額データプランHIGH-SPEED 3.6Mbps
(384kbps)
384kbps HSDPA プロトコル制限
データ量制限
KDDI WINシングル定額 3.1Mbps
(2.4Mbps)
1.8Mbps
(144kbps)
EVDO Rev.A データ量制限
サービスの比較


左上からKDDIの「W05K」、NTTドコモの「A2502 HIGH-SPEED」、イー・モバイルの「D02HW」
 対応端末については、イー・モバイルはPDA型の「EM・ONE」シリーズを含む全機種がPCでの定額データ通信に対応するが、下り7.2Mbpsに対応するのは現在のところUSB接続型の「D02HW」のみで、他の端末は下り3.6Mbpsになる。また、KDDIのWINシングル定額に対応するのは現在のところCF型の専用端末「W05K」のみ。NTTドコモはもっとも対応端末が多く、HSDPA対応であれば音声端末でも利用可能だが、定額データプランを利用するには音声端末をデータ専用で契約する必要があり、1台で音声と定額データを兼用する、といった利用はできない。

 通信時における利用制限も各社で異なる大きな特徴の1つ。イー・モバイルは基本的に制限が設けられていないが、NTTドコモはWebブラウジングやメールといった利用用途に限定され、FTPやP2P、ストリーミング再生などは基本的に利用できないほか、接続時間が長時間におよぶ、通信データ量が多いといった場合には自動で切断する場合があるという。KDDIの場合は通信プロトコルの制限はないものの、トラフィック制御機能により大容量の通信は自動的に制御され、著しい容量の場合は通信を遮断する場合があるという。


D02HWの接続イメージ A2502の接続イメージ W05Kの接続イメージ

A2502はUSB延長ケーブルとクリップ付のスタンドが付属 W05Kはアンテナが付属 ノートPCへの設置イメージ

設定はイー・モバイルが手軽。NTTドコモはやや煩雑

 実際に利用までの流れを各サービスごとに見てみよう。端末はイー・モバイルの場合下り7.2Mbpsに対応した「D02HW」を、KDDIは専用端末「W05K」を、NTTドコモはUSB接続型のデータ通信用端末「A2502 HIGH-SPEED」を使い、ユーティリティの設定や接続までの設定手順を比較した。

 最も手軽で簡単なのはイー・モバイルで、D02HWであればPCに接続するだけでドライバやユーティリティのインストールが可能。ISPもイー・モバイルが提供するため、ドライバやユーティリティをインストールすればアクセスポイント接続先などを設定することなくすぐに利用できる。

 KDDIの場合、W05K同梱のCD-ROMから「W05Kマルチポートドライバ」をインストール。専用インストールなどは用意されておらず、Windows標準のダイヤルアップ接続設定をユーザーが行なうほか、「PacketWIN」対応のプロバイダー契約も必要になる。各ISPのブロードバンドサービスであればPacketWINに無料で対応している場合もあるので、まずは自分が加入しているプロバイダーのPacketWIN対応状況を確認するといいだう。未対応の場合は、KDDIが運営するau one net(月額682円)や、IIJmio(月額420円)などが利用できる。


D02HWはPCに接続するだけでドライバやユーティリティをインストールできる D02HWのユーティリティ W05Kは「マルチポートドライバ」をインストール

 少々手続きが煩雑なのがNTTドコモ。NTTドコモの「定額HIGH-SPEEDプラン」を利用するには専用ソフト「定額データプラン接続ソフト」が必要だが、このソフトは端末同梱のCD-ROMなどには収録されておらず、Webからダウンロードするか、ドコモショップなどでCD-ROMを入手する必要がある。対応プロバイダーの加入も必須だが、KDDIと異なりNTTドコモの場合は専用のプロバイダー「mopera U」の「定額HIGH-SPEEDプラン」(月額840円)のみとなる。

 設定に関してはmopera Uへの加入を行ない、定額データプラン接続ソフトをインストールすればあとは端末をPCに接続し、接続ソフトを起動するだけ。設定にはmopera UのIDやパスワードが必要になるが、接続ソフトを利用すれば自動で行なってくれる。ただし、設定の途中で契約したFOMA回線のネットワーク暗証番号が求められる点は注意しておこう。


定額データプラン接続ソフトの設定ウィザード 対応機器を自動で認識

初期設定はネットワーク暗証番号が必要 moera Uの申し込みが完了していれば設定は自動で行なわれる

定額データプランのユーティリティ 接続時には注意事項が表示される

下り速度はイー・モバイルとドコモが高速。KDDIは上下ともMbpsを下回る

 設定の次は実際にスピードを計測。PCはCPUにIntel Core 2 Duo、OSにWindows Vista Ultimateを搭載した「ThinkPad X61」を使い、秋葉原と市ヶ谷でそれぞれ計測。スピード測定サイトはNTTドコモがパケット制限のためか「speed.rbbtoday.com」が利用できなかったため、「gooスピードテスト」を併用しているが、gooスピードテストではKDDI測定時に10分以上を要してしまい計測できなかったため、2つのサービスによる計測結果を併記している。

 イー・モバイルはこれまでにも何度かレビューを掲載しているが、場所によって多少の速度差はあれど数Mbpsを計測。ただし、以前は4Mbps近い数値が確認できた秋葉原では、2Mbpsを下回る結果となっていた。イー・モバイルと同じHSDPA形式のNTTドコモも、下り速度は数Mbpsを計測している。

 予想外の結果となったのがKDDIで、理論値では上下ともにMbpsクラスの速度ながら、実測では上下とも100kbps程度という結果になった。体感でもイー・モバイルやNTTドコモと比べて明らかに遅く感じ、ウィルコムのPHSデータ通信と同じかやや速い程度、といった印象だ。KDDIによればW05Kは回線の混雑状況などにより通信速度が変わるため、数百kbpsという数値もベストエフォートのシステム上正常な数値としている。

事業者名 測定サイト 上下 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 平均
イー・モバイル RBB 下り 0.99Mbps 1.47Mbps 1.31Mbps 1.11Mbps 2.91Mbps 1.56Mbps
上り 348kbps 363kbps 333kbps 326kbps 326kbps 339kbps
goo 下り 1.43Mbps 1.20Mbps 1.00Mbps 1.93Mbps 1.19Mbps 1.35Mbps
ドコモ goo 下り 1.68Mbps 1.66Mbps 1.67Mbps 1.69Mbps 1.97Mbps 1.73Mbps
KDDI RBB 下り 201kbps 43kbps 66kbps 340kbps 116kbps 153kbps
上り 156kbps 117kbps 83kbps 85kbps 67kbps 102kbps
秋葉原での測定結果
事業者名 測定サイト 上下 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 平均
イー・モバイル RBB 下り 2.70Mbps 2.51Mbps 1.65Mbps 1.68Mbps 1.67Mbps 2.04Mbps
上り 367kbps 367kbps 364kbps 361kbps 62kbps 304kbps
goo 下り 1.79Mbps 1.44Mbps 1.73Mbps 1.77Mbps 1.82Mbps 1.71Mbps
NTTドコモ goo 下り 1.34Mbps 1.60Mbps 1.53Mbps 1.39Mbps 1.61Mbps 1.49Mbps
KDDI RBB 下り 41kbps 322kbps 52kbps 210kbps 135kbps 152kbps
上り 129kbps 63kbps 69kbps 122kbps 67kbps 90kbps
市ヶ谷での測定結果


 通信時の制限については、NTTドコモの場合Webとメールを利用している場合はほとんど意識することはないが、接続したまま長時間離席した場合などに自動で切断されていることがあった。その場合、接続ソフトから再度接続を試みるとすぐに復帰できた。

 一方のKDDIでは、RSSリーダーでWebサイトを次々に巡回していた際に速度の低下が感じられた。また、前述の通りgooスピードテストでは計測中にスピードが低下していき、実質的に計測できない状況にまで陥った。

 通信制限の具体的な数値などは非公表だが、KDDIでは通常のインターネット閲覧程度であれば規制対象にはならないとしている。今回はタブブラウザで複数のサイトをいくつも開きながらのWeb閲覧であったため、これがKDDIが想定する通常を上回った可能性もあるが、動画や音楽といった大容量ファイルの送受信ほどまではいかなくとも、Web閲覧を積極的に利用するユーザーであれば制限の対象となる可能性もありそうだ。ただし、通信制限の詳細が公開されていないこともあり、実際の制限についてはユーザーの環境ごとに異なるだろう。

 また、ドコモの場合基本的にはWebサイトの閲覧やメール送受信などが利用できるのみで、P2Pやストリーミング配信などは利用できないが、VPNに接続した場合はこれらの制限がなくなり、SkypeなどのP2PソフトやWMVのストリーミング再生なども可能だった。NTTドコモによれば、通信制限はプロトコルによって判断しているが、VPNの場合はトンネリングされている内容までは把握できないため制限の対象にならないのだという。ただし、VPN接続時はVPN処理によって速度が低下し、実験した環境では数十kbpsまで低下してしまったため、あまり実用的ではないかもしれない。

 接続環境に関しては速度、利用制限ともにイー・モバイルが抜きん出ている状況だ。NTTドコモはWebブラウジングやメール送受信程度であれば十分に快適だが、メッセンジャーなどを多用するユーザーには不便だろう。KDDIに関しては速度、利用制限ともに厳しい結果となった。


料金も低廉なイー・モバイル。最大の課題は提供エリア

 最後に料金プランやサービス提供エリアを比較してみよう。

 料金プランはKDDIの場合、2年契約のシンプルコースとフルサポートコースの2種類を比較。イー・モバイルは料金プランと割引プランの組み合わせでかなりの数の料金体系となるが、今回は2年契約を条件に料金を割り引く「新にねん」を適用した。NTTドコモは料金プランが1種類のため、そのまま比較している。

キャリア名 プラン名 初期費用 プロバイダー料金 月額基本料金
イー・モバイル データプラン
(新にねん)
9,980円
(D02HW)
無料 4,980円
ギガ
(新にねん)
9,980円
(D02HW)
無料 1GBまで
(8,388,700パケット)
〜1.7GB
(8,388,700〜8,960,100パケット)
上限
3,980円 +0.0105円/パケット 9,980円
ライト
(新にねん)
9,980円
(D02HW)
無料 約17MBまで
(141,700パケット)
〜約52MB
(426,700パケット)
上限
2,480円 +0.0105円/パケット 5,480円
KDDI WINシングル定額
(フルサポートコース)
10,000円前後
(W05K)
682円(au one net)
420円(IIJmio)
※ISPによっては無料
無料通信分無し 〜72,000パケット 上限
3,150円 0.0525円/パケット 6,930円
WINシングル定額
(シンプルコース)
オープン
(W05K)
682円(au one net)
420円(IIJmio)
※ISPによっては無料
無料通信分無し 〜72,000パケット 上限
2,205円 0.0525円/パケット 5,985円
NTTドコモ 定額データプラン
HIGH-SPEED
20,000円前後
(A2502)
840円 50万パケットまで 〜100万パケット 上限
月額4,200円 +0.0126円/パケット 10,500円


 料金面でもイー・モバイルは他サービスより充実しており、2,480円から利用できる低価格プラン、1GBまで3,980円のプランに加えて制限のないプランでも4,980円と5,000円を下回る。これに対してKDDIは2年契約のフルサポートコースでも6,930円と7,000円近く、ドコモは1万円を上回る価格設定だ。

 料金や通信速度、通信制限など複数の項目に渡ってメリットの大きいイー・モバイルだが、最大の課題と言えるのがサービスエリア。2007年3月31日の開業からまだ1年も経過していないこともあり、利用できるエリアは東名阪など人口の多い地域が中心となっている。イー・モバイルでは2008年3月より音声サービスを開始する予定だが、その時点での目標人口カバー率は約65%であり、携帯電話の人口カバー率が99%以上であることを考えると大きな差が開いている。


イー・モバイルのエリア。東名阪でも中心部以外では未対応エリアが多い


左がNTTドコモ、右がKDDIの東海〜関西エリア。中心部以外でも対応エリアが多い


 また、人口カバー率では市町村役場が計算の基準となっているため、それ以外のエリアは数値に表われない。例えば地下街などは携帯電話であればつながる場合が多いが、現状イー・モバイルは地下はほとんどつながらない状況だ。

 高速かつ低価格なサービスであっても、電波が届かないのであればまったく利用できない。イー・モバイルがエリアを急速に拡大していることもあり、都内かつ地上を中心に利用している際にはほぼ気にしないでも使えるレベルに近づいているが、日本全国を動き回るビジネスマンや地方都市のユーザーにとってはエリアの問題は大きいだろう。

 以上、3サービスをさまざまな角度で比較した。どのサービスを利用するかについてはいろいろな観点があるが、まずは自分が主に利用するエリアで対象となるサービスが利用できるかどうかが選択のポイントになるだろう。

 ただ、エリアの問題を除けば、料金や通信速度、利用制限ともにイー・モバイルのコストパフォーマンスが高い。音声サービスですでに多くのユーザーを抱えるNTTドコモとKDDIだけに、回線負荷や利用ユーザー数の多さも課題ではあるが、エリア以外でもイー・モバイルと競争力のある料金プランやサービス体系の展開にも期待したい。


関連情報

URL
  イー・モバイル
  http://emobile.jp/
  定額データプラン(NTTドコモ)
  http://www.nttdocomo.co.jp/service/data/foma/flat_rate/
  「WINシングル定額」ニュースリリース(KDDI)
  http://www.kddi.com/corporate/news_release/2007/1129/index.html

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(甲斐祐樹)
2008/01/10 11:49
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