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「法改正でIEEE 802.11aの既存製品と新製品がつながらなくなる?」
IEEE 802.11aチャネル変更に対するバッファローの取り組み

 総務省が取り組む電波開放政策の一環として、5GHz帯の開放に関する告示が2005年5月に公開される。この告示には、IEEE 802.11aのチャネル変更が内容として盛り込まれており、既存の11a機器が新製品と通信できなくなる可能性が生じる。このチャネル変更や5GHz帯開放に関する取り組みを、無線LAN機器メーカー大手であるバッファローに伺った。


11aチャネル変更により、既存製品と新製品との通信ができなくなる

日本と欧米のチャネルの違い。5月以降は欧米と同じガードバンドのないチャネルに変更となる見込み(資料は電波産業会開催イベントのもの)
 電波開放政策とは、「新しい電波ビジネスを育成するとともに世界最先端のワイヤレスブロードバンド環境を構築するために大量の電波を開放していく」ための総務省の取り組み。総務省はこの戦略の中で、現在IEEE 802.11aなどで利用している5GHz帯を無線LAN向けにさらに開放する方針を示している。

 この5GHz帯の新たな開放がユーザーに与える影響は大きく2つ。1つは「IEEE 802.11a製品のチャネル拡大」、そしてもう1つが「既存のIEEE 802.11a製品のチャネル変更」だ。

 現在日本国内では、5.15~5.25GHzの帯域をIEEE 802.11aで利用しているが、この帯域のチャネルの利用形態は欧米と異なっている。日本国内では、IEEE 802.11aの利用帯域と隣り合う5.25~5.35GHzが気象レーダー用に広く利用されており、無線LANが気象レーダーへ干渉を与えないよう、両帯域の境目となる5.24GHz~5.25GHzという10MHz幅をガードバンドとして設けているためだ。

 今回の電波開放は、2003年7月に開催された世界無線通信会議(WRC-03)」での決定事項に基づいており、国際的な電波開放という考えも盛り込まれている。総務省では気象レーダーへの干渉に関する実験を踏まえた上で、日本国内で設定していたガードバンドを取りやめ、国際標準と同じチャネルへ変更する方針を打ち出している。

 この方針を受け、5月に予定されている総務省の告示以降に発売されるIEEE 802.11a製品は、ガードバンドのない新たなチャネルに対応する。この結果、新製品と既存の製品との間ではチャネルが異なるために、お互いが通信できなくなる事態が発生してしまう。これに対してコレガやバッファローといった無線LAN機器メーカーは、ファームウェアやドライバの更新で新チャネルへの対応できるよう、総務省に対して意見を表明していた。


ファームウェアやドライバで既存製品も新チャネルに対応の見込み

 バッファローは情報通信審議会 5GHz帯無線アクセスシステム委員会の作業班にも参加しており、無線LAN機器メーカーとしての意見表明を行なってきた。同社 ブロードバンドソリューションズ事業部 マーケティンググループリーダーの石丸正弥氏は、最終決定はしていないものの、ファームウェアでのチャネル変更が可能になる見込みだという。「チャネル変更に関するパブリックコメントの募集が2月中に開始される予定だが、既存のIEEE802.11aのチャネルをファームウェアのバージョンアップで10MHずらすことは可能になると見ている(石丸氏)」。

 本来、無線LAN機器の周波数が変更する場合は、電波法上では別の商品という扱いになるため、改めてTELECの認証などを受ける必要がある。しかし、石丸氏によれば、今回のチャンネル変更は特例処置として認め、TELEC番号もそのまま読み替えればいいという方針になる可能性が高いという。これを受けて、バッファローは既存製品向けにチャネル変更のためのドライバやファームウェアを公開する予定だ。また、機器の追加や交換といった需要に応えるために、法改正後も旧チャネル対応製品は併売していく方針という。


5月以降は11aのチャネルが8チャネルに拡張

日本国内で新たに割り当てられる5GHz帯の周波数帯域(資料はバッファローが開催したセミナーのもの)
 5GHz帯の周波数開放のもう1つのポイントは、IEEE 802.11aのチャネル拡大だ。従来の5.15~5.25GHzという4チャネルに加えて、新たに5.25~5.35GHz帯の4チャネルが追加され、合計8チャネルを選択できるようになる。

 なお、新たに追加されるチャネルは、前述の気象レーダーと同じ帯域を利用するため、利用は従来と同様屋内に限られる。また、追加チャネルではレーダーの発する電波を検出し、同じ周波数帯を使わないための仕組み「DFS(Dynamic Frequency Slection)」を採用する必要があるが、このDFSは親局との通信が必須であるため、追加チャネルでは無線LANクライアント同士で通信するアドホックモードが利用できなくなる点が違いだ。


バッファローは8チャネルに対応した11a製品を5月以降に発売

バッファローは自社のサイトでも5GHz帯のチャネル変更に対する取り組みを表明
 バッファローでは5月以降、追加チャネルに対応した製品を発売する予定。従来製品のマイナーチェンジではなく、新製品を用意する方針という。前述の通り、5.15~5.25GHzのみ対応する製品も併売するが、こちらはチャネル変更には対応できると予想しているものの、追加される5.25~5.35GHzチャネルには対応できない。「既存チャネルの変更だけでなく、新たなチャネルへの対応をファームウェアで行なうことは、法律上無理がある(石丸氏)」。

 既存の製品を一旦回収し、バッファロー側が追加チャネルへ対応する有償サービスも可能だが、「有償サービスは3,000~4,000円程度の料金が必要になる。無線LAN製品が安価になっている現在、はたしてユーザーメリットがあるのか。また、ユーザーが一定期間無線LANを利用できなくなる点もマイナスだろう」とし、現在は検討段階にあるとした。

 なお、総務省では5.25~5.35GHzのほかに、屋外でも利用可能な5.47~5.725GHzも新たに開放する方針を明らかにしているが、今回の法改正の時点ではこの帯域は事実上使用できない。石丸氏によれば、この帯域は米国で軍事レーダーに利用されているため、軍事レーダーを検出するためのDFSが必須になるという。「米国のFCCで仕様が最終的に決まっていないため、今回の告示では“この帯域も使えるようになる”という予告で終わるだろう(石丸氏)」。

 また、5.47~5.725GHzは屋外でも利用が可能なため、FWAといったラストワンマイル用途としてキャリアの要望も強いという。石丸氏は「利用可能になった後も、無線LAN機器とキャリアで同時に利用する形をとるのでは」との見通しを示した。

5.15~5.25GHz 5.25~5.35GHz
チャネル数 4チャネル 4チャネル
利用場所 屋内のみ 屋内のみ
通信速度 最大54Mbps 最大54Mbps
インフラストラクチャ
アドホック ×
対応製品 新旧製品※ 新製品のみ
※旧製品はファームウェアのアップグレードが必要
従来チャネルと新たに追加されるチャネルの違い


 バッファローでは、「5月の法改正により、新たなIEEE 802.11a製品と既存の製品が繋がらなくなると言う事実を、多くのユーザーがご存じない状況にある。このまま5月に新チャネルに対応した製品が発売されれば、多くのユーザーに対して混乱を招いてしまうだろう」とコメント。今回のチャネル変更とその対応をメディアを通じてユーザーに訴えていくほか、自社カタログなどを利用したユーザーへの告知も積極的に行なっていくという。


関連情報

URL
  バッファロー
  http://www.melcoinc.co.jp/
  総務省「5GHz帯無線アクセスシステムの技術的条件」の一部答申への対応について(バッファロー)
  http://buffalo.melcoinc.co.jp/products/new/2004/067_1.html

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(甲斐祐樹)
2005/02/09 13:31
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