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Yahoo! BB、イー・アクセスを正式に提訴

ビー・ビー・テクノロジーの孫正義社長
 Yahoo! BBを運営するビー・ビー・テクノロジーは、イー・アクセスの小畑至弘CTOに対し、3億円の損害賠償を求める訴えを27日の昼に東京地方裁判所に提出、受理されたことを発表した。訴状はビー・ビー・テクノロジーが先日行なった記者説明会での発表に沿ったものとなっている。

 今回の提訴についてビー・ビー・テクノロジーは、2つの行為を営業妨害にあたる不法行為とみなしている。1つはイー・アクセスが2001年11月に発表したプレスリリースで用いた資料において、Yahoo! BBが採用するAnnexAではISDNの干渉があり、距離も2kmを超えた場合、ほぼ接続できなくなるという発表を行なっている点について。2つ目は先日行なわれたTTCの技術勉強会において、小畑氏がYahoo! BB 12Mで採用しているAnnexA.exという規格を「他社のADSL回線への干渉について十分な検証がされておらず、他社のADSL回線に影響が出る恐れがある」と発言したことについてである。

 先日TTCに動議を提出した際の記者説明会でもイー・アクセスや小畑氏への提訴については検討していることが明らかにされていた。正式に提訴した理由としてビー・ビー・テクノロジーの孫正義社長は「手続きを行なうために十分な資料が用意できたため」としている。

訴訟代理人の牧野二郎弁護士
 訴訟代理人の牧野二郎弁護士は、「Yahoo! BBが採用するAnnexAは、TTCにおいて標準的なADSLの仕様である第1グループに属する」点を前置きした。第1の不法行為については、イー・アクセスが使用した資料はTTC標準「JJ100.01」の中で「本グラフは(中略)実際の機器特性を考慮していない理想的な状況を想定しているため、実機の期待性能を表していない」と注意書きされているにもかかわらず、この注釈を削除した上で資料として引用しており、不正確かつ虚偽の情報を流し、営業妨害を行なったという主張だ。

 また、Yahoo! BBのサービス開始後にマスコミが行なったADSLサービスの比較調査を引用し、Yahoo! BBが線路長が2kmを超えた場合でも他社のADSLと比較して速度が劣ることがなく、イー・アクセスが引用した資料とは異なった結果が得られていることも示された。

 第2の不法行為について牧野弁護士は、通信の標準化を行なうTTCのリーダー的存在である小畑氏が、その地位を利用して1事業者であるYahoo! BBに対して行なった誹謗中傷であり、中立性に欠けた行動であると述べた。また、TTCのメーリングリストで「議事の内容や発言した企業名がマスコミに対してそのまま掲載されており、委員会の存続に関わることが必至である」という内容の注意喚起がTTCの専務理事から発信されていることも明らかにした。

報道関係者に配布された訴状の写し。印紙代が100万を超えている
 孫社長は、「苦労して開発した製品に誤解を呼ぶような表現がされたことで迷惑を被っている」とコメント。第1の不法行為については「ユーザーに体感してもらえれば自然と判明すること」と思い、積極的に反論を行なわなかったという。しかしながら、TTCでのYahoo! BB 12Mに対する小畑氏のコメントを受け、「2回に渡り不法行為が行なわれた上に、TTCで不当な決議がなされ、Yahoo! BB 12Mのサービスが拒否される可能性があり、ユーザーの理解を待つどころの話ではなく、ユーザーに被害を与える可能性がある」とし、提訴に踏み切ったという。

 被告を小畑氏個人としたのは、一連の行動については「小畑氏のスタンドプレー」と認識しているためであり、イー・アクセスへの提訴などについては、今後の展開によるという。また、技術競争で勝負するのであれば、市場の発展など良い効果が生まれるものの、こういった営業妨害が行なわれることについては遺憾であるという認識を示した。

 牧野弁護士によれば、今回の提訴の内容はイー・アクセス側に内容証明などを送るといった手段での通知は行なっていないという。ただし、孫社長は1カ月前に小畑氏へ「Yahoo! BBの80万人のユーザーが実際に接続できており、発表は明らかに異なるため、Yahoo! BBは迷惑を被っている」と口頭でコメントしたという。

 損害賠償額については、第1の不法行為が開始された9月4日から会員獲得数が低下しているとする7カ月間において、単月につき3万人の入会人数を失ったと推定、1ユーザーは平均して36カ月まで解約しないというデータに基づき、利益率を50%として約106億円を計算している。第2の営業妨害としている行為については時期が近かったこともあり、現段階では提示されていない。ただし、今回小畑氏に請求するのは全体額の一部となる3億円であり、損害賠償額の算出について全体の大小は厳密に計算する必要がないという認識であるという。

 また、今回の提訴は積極的な防御策であり、好んで損害賠償を行なったのではないため、金額そのものに最大の関心がある訳ではないとした。また、裁判の流れについても技術論争をするためのものではなく、TTCの責任者たる人物が偏ったデータをTTCの記者発表会で公表するという行為を不当であるとしているのであり、この点については裁判所の理解が早期に得られると認識しているという。今後小畑氏やイー・アクセスから謝罪があり、ユーザーやマスコミに対しても明確な妨害行為を中止するのであれば、和解といった手段も検討するということを明らかにした。

 今回の提訴についてイー・アクセスは、「イー・アクセスという会社が訴えられたわけではない」としながらも「弊社の役員である小畑の問題であるから、会社の問題として考えていく」とコメント。裁判で実際に争っていくという姿勢を見せた。


□関連記事:Yahoo! BB、TTCに動議を提出しスペクトル管理について意見
http://bb.watch.impress.co.jp/news/2002/08/20/bbtttc.htm
□関連記事:イー・アクセス、BBテクノロジーの訴訟検討について見解発表
http://bb.watch.impress.co.jp/news/2002/08/22/eacken.htm
□ビー・ビー・テクノロジー
http://www.bbtec.net/
□イー・アクセス
http://www.eaccess.net/

甲斐祐樹
2002/08/27 19:57

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