デジタルガレージは7月1日、設立10周年記念行事「New Context Conference 2005」の第1弾「BLOG & Solution Day」を都内で開催した。“ブログのビジネス活用”をテーマに、日米を取り巻くブログの現状や、同社のグループ企業が運営するブログ検索サービス「Technorati.jp」について解説した。
■ 少数とのコミュニケーションが目的のブログは「会話に近い」
|
デジタルガレージ共同創業者で、顧問の伊藤穰一氏
|
はじめに登場したのは、デジタルガレージの共同創業者の1人である伊藤穰一氏。現在は同社の顧問を務める立場から、「BLOGがもたらす次世代インターネットビジネス」というテーマで基調講演を行なった。
伊藤氏は、米国においてブログを積極的に活用するユーザー層を指す言葉「Creative levels」を紹介。マスコミを信用せず、口コミを特に重要視する若年世代のことで、米国ではインターネット利用者の大きな割合を占めていると説明する。
「このユーザー層を狙い撃ちしたのが、アップルコンピュータのiPod shuffle。発表された段階で市場にはすでに似たような商品があったものの、事前告知なしであれだけの数が売れた」と話す伊藤氏は、この背景にブログによる口コミ効果が欠かせなかったと分析する。
また「通販サイトのAmazonでは、書店には並びにくいが実際には一定規模の市場が確保されている作品に人気が集まる」とし、マスコミの前評判などとはまったく異なった人気商品がネット上で生まれていると指摘する。
これらの口コミを媒介するブログは、作成や流通に関するコストがゼロに近い一方、中小規模の商用サイトを超えるほどの人気ページも存在するという。プロ並みの技量を持つアマチュアブロガーも存在する現状を、伊藤氏は「アマチュアによる革命」と表現。捏造報道がブロガーによって暴かれ、ついには米国テレビ局の名物キャスターが降板に追い込まれた一連の事件も、その一例だと話す。
だが、ブログのビジネス用途には、いまだ明確な筋道がないという。伊藤氏も「ブログのビジネスモデルとは何だ? とよく質問されるが、現状ではあまりない」と本音を語っている。
伊藤氏はビジネスブログの1つのアイデアとして、ブログがメールやWebに近いオープンなサービスであることを強調。その上で「メールによって社内間のコミュニケーションは劇的に変化し、Webの存在はAmazonを生み出した。自分の会社にブログを導入することで、コミュニケーションがどのように変化するか真剣に検討すべき」と語る。
伊藤氏の指摘で興味深いのは「ブログは会話である」という点だ。「大多数のブログは、少数の仲間によるコミュニケーションが最大の目的としており、これらは人と人の“会話”そのもの」と伊藤氏は解説する。さらに「一般的なバナーなどは、どちらかといえば会話を邪魔する存在。ただし会話の流れの中で、話題となった商品だけをアピールするのは決して邪魔ではない」と続け、企業はいかにユーザー間の“会話”に入り込めるかを模索すべきと述べた。
例として「観光地への集客を目的としてWebサイトを作るだけではなく、著作権処理済の観光地画像をWebサービスで提供し、ユーザー間の口コミを狙っては」というアイデアも披露している。
■ 「ブログはネット上の自宅」と語るシフリー氏
|
Technorati, Inc. Founder & CEOのデビッド・L・シフリー氏
|
|
新しく作成されたブログ数をまとめたグラフ。6月時点では1日に55,000件ものブログが生まれているという
|
伊藤氏に続いては、Technorati, Inc. Founder & CEOであるデビッド・L・シフリー氏が登壇。「No.1 ブログサーチビジネス/Technorati」と題し、正式スタートしたブログ検索サービス「Technorati.jp」の優位点や特徴を語った。
シフリー氏が「真のリアルタイム検索エンジン」と説明するように、Technorati.jp最大の特徴はスピードだ。ユーザーから寄せられるpingなどを処理し、記事投稿から平均7分程度で検索対象としてインデックス化させるという。
シフリー氏は「Googleでは見つけられないような、新しいコンテンツを見つけるのに最適」と、従来の検索エンジンとの違いを強調。さらに2004年12月のインド洋大津波を例に挙げ、緊急性を要する重大事件の情報を集めるのにも効果を発揮できると補足した。
シフリー氏は、ネット上で飛び交う口コミ情報や噂の把握のため、今後は企業にとっても有益なサービスになっていくと言及。一例として、米国の著名な錠前メーカーである「Kryptonite」の一連の騒動を説明した。
「高信頼性が売り物の同社製錠前が、ボールペン1本で簡単に開いてしまうことを説明する映像がブログ経由で出回った。テレビ・新聞などの主要メディアで取り上げられたのは5日後。最終的には製品がリコールされたが、ブランド価値の低下は計り知れない(シフリー氏)」。
シフリー氏は「映像が出回った段階で、メーカーはなんらかの対策がとれたのではないか」と指摘。ブログ上で取り交わされる話題に目を光らせる必要があると強調する。
なぜ従来型の検索だけでなく、ブログ検索が重要なのか? これに対しシフリー氏は「ブログはネット上に作られた自宅だから」と語った。
「チャットやBBSは基本的に匿名だが、ブログはあくまでもユーザー自身の空間。自宅をネット上につくるようなものだ。もちろん暴言を吐くことも可能だが、同時に説明責任も発生している(シフリー氏)」
つまり、シフリー氏によればブログとは、ユーザー個人の本心に近い情報が記述されている点が特徴だという。マーケティングを行なう企業にとっては、ブログで話題になる情報の把握が欠かせず、「ブログによってWebサイト作成が容易になったぶん、ユーザーが発信する情報量も飛躍的に増加する。これにより、一般ユーザー自身が作成したコンテンツの影響力も無視できなくなる。今後、一般ユーザーによるコンテンツの重要性はますます高まるだろう」とブログ検索の将来性をアピールした。
■ URL
New Context Conference 2005
https://www.garage.co.jp/news/conference2005/
Technorati.jp
http://www.technorati.jp/
デジタルガレージ
http://www.garage.co.jp/
■ 関連記事
・ ブログ検索「Technorati.jp」正式サービス。ブログ検索の標準を目指す
(森田秀一)
2005/07/01 19:23
|