東京国際フォーラムで開催中の「NTTグループ コミュニケーションEXPO」で20日、ポータルサイト「goo」の事業戦略についてのセミナーが行なわれた。gooを運営するNTTレゾナントの国枝学氏(ポータル事業本部メディア事業部長)が、同社の掲げる「goo 2.0」への取り組みなどを説明したほか、NTTコミュニケーションズとの事業統合後のgooについても一部言及した。
■ 「goo 2.0」の背景にユーザーニーズのロングテール化
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NTTレゾナントの国枝学氏
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goo 2.0とは、ユーザーが目的を達成できるようにする「行動支援メディア」となることを目指すものだ。国枝氏はその背景として、ブロードバンドやモバイルといった環境の変化のほか、ブログやRSS、CGM(Consumer Generated Media:消費者発信型メディア)といった“Web 2.0”の流れがあると説明する。ただし、一番大きいのは、ユーザーのニーズが多様化してロングテール化していることだという。「ブロードバンド回線が家庭にどんどん行き渡っていく中で、ユーザーが生活のあらゆることをインターネットで調べるようになった」結果だ。
ここで国枝氏はロングテールの実例として、1日に数百万種類の言葉が入力されているというgooの検索キーワードにおける占有比率のデータを示した。検索件数が1位のキーワードでも全体における占有率は0.24%に過ぎず、1,000位でも11.16%、50,000位でも41.34%であり半分に達しないという。これらの順位に相当するキーワードは、この時期であれば1位が「年賀状」、以下は例えば1,053位が「クリスマスソング」、50,078位が「立ち読みまんが喫茶」といったものだ。
■ ユーザーニーズのロングテール化に4つの要素で対応
ロングテール化に対応するためにgooでは、「AISCEAS(アイシーズ)」と呼ぶ消費者の行動モデルをベースに、どのようなサービスを提供するか考えているという。
AISCEASとは、消費行動の流れを「Attention:注意」「Interest:興味・関心」「Search:検索」「Comparison:比較」「Examination:検討」「Action:購買」「Share:情報共有」という7段階に分け、その頭文字をとったもの。従来のモデルと比較して、ユーザーが検索・比較するプロセスがある点と、商品を購入してもそれで終わらずに購入者が商品やお店などの情報を消費者同士で共有するプロセスがある点が特徴だ。この消費行動モデルに対して、gooは主に「検索」「CGM」「地域」「RSS/コミュニケーションツール」という4つの要素でサービスを提供しているという。
このうち検索は、AISCEASのうちのSearchとComparisonに対応する。CGMは、ExaminationとShareに対応する。さらに、生活全般のことをインターネットで調べるようになったためにリアルな消費行動も重視しなければならず、すべてのプロセスを通じて地域という観点が重要になってくる。そして、これらの情報発信を活性化するためのツールがRSS/コミュニケーションツールというわけだ。
このうち、例えばCGMでは「教えて! goo」「goo ブログ」といったサービス、地域については「goo 地域」「goo タウンページ」といったサービスを提供している。RSS/コミュニケーションツールにあたるのは「goo RSSリーダー」だが、そのアプリケーション版は累計で約45万件のダウンロードがあったという。さらに検索については、21日に正式サービスを開始した画像・動画・音楽の検索サービス「MultiMedia Meister」などを紹介した。
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gooにおける検索数上位キーワードの占有比率グラフ
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「AISCEAS」と呼ぶ消費行動モデルと、それに対応するgooのサービス要素
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■ 「goo 2.0」では検索キーワードをあれこれ考える必要もなくなる?
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ジャストシステムの鍋田毅氏
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セミナーにはジャストシステムの鍋田毅氏(取締役経営企画室長)も登場し、gooとATOKの連携機能として10月に提供を開始した「goo サジェスト β with ATOK」を紹介。これを使って実際に検索するデモも行なわれた。
デモを行なったNTTレゾナントの稲家克郎氏(ポータル事業本部メディア事業部サーチプロダクトマネージャー)は、「文章を入力する時だけでなく、インターネットで検索する時に(かな漢字)変換が非常に重要な役割をする」という。従来、日本語で検索を行なう場合、ユーザーは無意識に変換してから検索しているが、誤変換によって最終的に探している情報を見つけられない場合があるためだ。
goo サジェスト β with ATOKは、gooで検索キーワードを入力する際に、ひらがな入力した時点で変換候補を次々に表示してくれる機能だ。例えば、「は」と入力した時点で「長谷川理恵」「浜崎あゆみ」「浜田省吾」といった人名や、「は」で始まる地名・ランドマーク名などが表示され、1文字入力していくごとに候補が絞り込まれていく。人名の場合、それぞれの候補には「モデル」「J-POP」などの属性情報もあわせて表示されるほか、顔写真まで用意されている場合もある。
このような機能により、テレビなどで聞いただけの人名やキーワードなど、フルネームや正確な綴りがわからない場合でも、ユーザーが検索キーワードを考えた挙げ句、検索してみた後で「あれ、違った」などとなることがなくなるとしている。稲家氏は、「検索サービス側が(変換候補を)『これですか?』『これですか?』と、どんどん提案していくサービスだ」と表現した。
なお、goo サジェスト β with ATOKには現在、約29,000語のスーパー人名辞書、約740語のランドマーク辞書、約930語の四字熟語辞書の3つの辞書を実装している。ジャストシステムの稲野豊隆氏(ATOKビジネスオーナー)によれば、ニーズに応じて他の辞書も導入を検討していくという。
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NTTレゾナントの稲家克郎氏
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ジャストシステムの稲野豊隆氏
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■ NTTグループ内で結集するだけでは事業強化に限界
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goo、OCN、ぷららが統合されれば、ユーザー数は約2,100万人になるという
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NTTが11月9日に発表した同グループの中期経営戦略では、2006年夏をめどにNTTレゾナントとNTTコミュニケーションズを事業統合し、グループの上位レイヤーサービスを結集・強化する方針を示していた。これを受けてNTTレゾナントの国枝氏はセミナーの最後に、gooの今後についても言及した。
国枝氏によれば、具体的な計画は検討している最中だとしながらも、上位レイヤーサービスの代表としてgoo、OCN、ぷららを挙げた。さらに、これ以外にもNTTグループ内には上位レイヤーサービスを提供している会社が多くあるとし、「そういったところができるだけ連携し、NTTグループとしての上位レイヤーサービス/ビジネスを強化していきたい」と述べた。
ここで国枝氏は、これらのサービスが連携した結果ががどうなるかという一例を、ネットレイティングスのインターネット利用動向調査のデータをもとに紹介した。11月の同調査によれば、国内におけるポータルサイトの利用者数(家庭からのアクセス)は、Yahoo! JAPANが唯一3,000万人以上あり突出。1,000万~1,500万人のレンジにinfoseek、MSN、NTT(goo)、Google、livedoorなどの2位集団が密集している。
これに対して、「代表に挙げたgoo、OCN、ぷららのユーザーが全部一緒になったと想定すると、重複ユーザーを除いた実数値で約2,100万人になり、だいぶヤフーに近付く。残念ながらまだ届きはしないが、団子状態から単独の2位に浮上する。そうなれば、あとはヤフーを目指してサービスを強化していくことが、我々のミッションになる」という。
ただし国枝氏は、NTTグループ内の事業が結集するだけではなかなかサービスは強化はできないとし、「NTTグループにはさまざまなリソースがあるが、ジャストシステムとの提携からもわかるように、ないものもある。そういったものをパートナーとWin-Winの関係で提携して、オープンな形でNTTグループの上位レイヤーサービス/ビジネスを強化していきたい」と述べてセミナーを締めくくった。
■ URL
NTTグループ コミュニケーションEXPO
http://www.ntt.co.jp/expo2005/
NTTレゾナント
http://www.nttr.co.jp/
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(永沢 茂)
2005/12/21 16:23
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