第6回ファイバーオプティクス EXPOの専門技術セミナーでは、日本テレビの土屋敏男コンテンツ事業局次長が、2005年10月にプレオープンした動画配信サービス「第2日本テレビ」の現状と今後の展開に関して講演を行なった。
■ ユーザーは16万人を突破。認知度は低いが利用意向は高い傾向に
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日本テレビの土屋敏男コンテンツ事業局次長
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土屋氏によれば、第2日本テレビを始めたきっかけは航空機内の映画サービスだという。「電波少年のロケで海外に行った時、今までは決まった時間にしか見られなかった映画が、ある時自分の好きなタイミングで見られるようになっていて、コレは今までとはまったく違うサービスだと実感した」との感想を抱いたことから、第2日本テレビ事業を会社にプレゼン、サイトのデザインを自らプランニングし、2005年10月にプレオープンを開始した。
続けて土屋氏は、事業化のプレゼンに使用したという資料を使い、VODサービスの利用動向について言及。実際にVODサービスを利用しているユーザーは0.6%と極めて少ないが、今後利用したいというユーザーは46.2%と半数近いことから、「VODは非常に可能性のあるサービスだと感じた」とした。
第2日本テレビのユーザー数は、1月の最新の数字で16万4,565人。登録ユーザーの特性としては女性比率が32.1%と高く、中でもF1層(20~34歳女性)、F0層(10代女性)の加入率が高い点を指摘。「テレビを認知媒体として利用しているため、PCになじみのない層も加入している」との現状を分析した上で、「テレビ局ならではの女性ユーザー獲得を目指しながら、早期に100万加入を目指す」との目標を示した。
また、日本テレビが独自に行なったVOD利用意向調査では、USENのGyaO、Yahoo! JAPANの動画配信サービスと比較。サービス内容の理解度ではGyaOが27.2%、Yahoo! JAPANの11.7%に対して5.2%と低く、実利用では1.6%まで下がるものの、今後の利用意向ではGyaO、Yahoo! JAPANよりも高い56.7%という数字を獲得。「この数字がサービスを続けていくためのモチベーションになっている」とした上で、「認知度とサービス向上によって事業が進めていけるだろう」と述べた。
認知度の低さにも関わらず利用意向が高いというデータから、「視聴者は第2日本テレビに興味を持っており、会員になるきっかけの提供が重要」と土屋氏は分析。地上波の深夜番組との連動や、会員10万人突破を記念したキャンペーンを12月22日から1月3日の期間限定で実施。キャンペーンの影響は大きく、キャンペーン開始から短期間で6万人の会員増につながったという。
一方で、「放送の番組は作ってきたが、ネットに関するノウハウは正直言って素人レベル」と土屋氏が自ら認める通り、サイトの利便性などはユーザーから多く意見が寄せられるという。「コンテンツにたどり着くまで何クリックも必要だ、というように、さまざまな意見をいただいている」とした上で、「サポートセンターには『クリックって何ですか』といった質問が寄せられるほどPCに馴染みのないユーザーも加入している」という現状を指摘。「PCを利用していない層に対し、擬似的な商店街というコンセプトはわかりやすいだろう」との考えを述べ、「喜」「怒」「哀」「楽」によるサイト構成を変更することはないという考えを明らかにした。
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VODは実利用こそ低いが利用意向は高い
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女性ユーザー比率が高いという第2日本テレビの特性
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第2日本テレビが認知度は低いが利用意向は高いという
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会員になる「きっかけ」が重要
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■ ネット配信はテレビとは違う表現の場としての価値が
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新規コンテンツを拡充
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コンテンツも今後さらに拡充していく方針だ。キューピー3分クッキングのアーカイブを配信する料理コンテンツや占いコンテンツなど新コンテンツを追加するほか、宮里藍選手と横峯さくら選手が出場する「第2回ワールドカップ女子ゴルフ」を地上波に先駆けて配信する。また、ほぼ日刊イトイ新聞と共同で行なった「続・はじめての落語 立川志の輔ひとり会」ストリーミング中継など、他のコンテンツホルダーとも積極的に連携していくという。3月には第2日本テレビの女子アナウンサーを視聴者投票で決定するという試みも行なう予定だ。
過去に放送したテレビ番組のアーカイブも積極的に活用していく。「著作権の問題から映像配信は難しいが」と断った上で、「あぶない刑事」「熱中時代」「池中玄太80キロ」など過去のドラマをデータベース化した「ドラマの殿堂」を正式サービス時にオープンする。「テキストの資料に加えて、スチール写真や動画も使えるものは出していく。ドラマのテープはすべて保存しているので、著作権処理ができればすべてのドラマを配信できるだろう」。ドラマの殿堂を皮切りに、「バラエティの殿堂」「スペシャルの殿堂」など、「テレビの殿堂」シリーズも順次オープンする予定だ。
最近では、「第2日本テレビ報道部」というコンテンツの伸びも大きいという。第2日本テレビ報道部では取材映像をノーカットで配信しているが、ライブドアの強制捜査を受けてユーザー数が大幅に伸びた。土屋氏は「テレビは報道の速報性と言われるが、個人にとっての速報性とは“見たい時に見られる”こと。これこそがテレビ局のVOD事業の根幹なのではないかと思う」との考えを示した。
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「ほぼ日刊イトイ新聞」との連動コンテンツも配信
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過去のドラマをデータベース化した「テレビの殿堂」
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動画広告によるビジネスモデルも導入
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広告収益では、特定の広告動画を視聴するとコンテンツ購入用のポイントを付与する方式と、広告動画の後に本編が視聴できる方式の2通りを用意。現状では広告の相場なども決まっておらず、「チャレンジとして一緒に考えていきましょう、とスポンサーにお願いしている」段階だという。
フジテレビやTBSなども動画配信サービスを始めているが、「自分でプラットフォームを構築しているのは日本テレビだけ」と土屋氏は話す。「だからこそ完全無料やポイント制度も実現できるし、コンテンツのニーズも実際に体感できる」。土屋氏は「コンテンツメーカーというメリットを活かし、この時代で“楽しむ”とはどういうことなのかを追求していきたい」との決意を示した。
VOD事業によって地上波の視聴率に影響が出るのではないか、という会場からの質問には、「アメリカでは動画配信によって視聴率が上がったという事例が出ている」と説明。「ドラマで見逃した放送分をネットで見る、という連動によって、コンテンツへの接触率も高まるだろう」とした。
また、「テレビは視聴者数も多く、放送する番組もさまざまな配慮が必要だが、ネットであれば狭くて深いコンテンツも出していける」とのメリットも指摘。「ダウンタウンの松本人志に、ネットオリジナルのコントを作ろうと持ちかけている。彼のコントは作家性が強くマニアックで視聴率は取れないが、ダウンタウンのDVDが100万本売れていることを考えればニーズはある」とした上で、「テレビとは違う表現の場としてネット配信は大きなメリットがあるだろう」とした。
■ URL
第6回ファイバーオプティクス EXPO
http://www.foe.jp/
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(甲斐祐樹)
2006/01/19 20:47
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