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【Interop Tokyo 2006&IMC Tokyo 2006】
TVバンク中川氏、「コンテンツのリッチ化で動画が付加されるように」

 Interop Tokyo 2006で7日、東京大学の安田浩教授をモデレータに特別講演「放送と通信の連携による新たなデジタルエンターテイメントの世界」が行なわれた。パネラーとして出席したTVバンクの中川具隆取締役COOからは、インターネット事業者からみた放送と通信の融合おけるコンテンツビジネスのあり方が述べられた。


放送と通信の融合で新しいマーケットの広がりに期待

TVバンクの中川氏

ブロードバンド普及でコンテンツは動画・音声が主体に
 中川氏は「放送と通信の融合では、双方がマーケットを食い合うのではなく、新しいマーケットを広げていくのではないか」と発言。「インターネットは、ナローバンドからブロードバンドへと通信速度が劇的に速くなり、伝達できる情報が質・量の双方で変化してきている」と現状を述べた。

 続けて、「現在、Web 2.0という言葉がもてはやされている。しかし、これはインターネットが本来持っていた基本理念や特徴であって、ブロードバンドという高速回線によって、流れる情報がリッチ化したものである」と自身の考え方を示した。その上で中川氏は「インターネットのコンテンツビジネスはオンデマンド性やコミュニティなどからくる双方向性で、ミクロコミュニティのような文化が大切」とし、「放送のヘッドコンテンツも重要だが、ロングテール的なコンテンツがマーケットを広げていくと考えている」と語った。

 インターネットにおける広告市場に関しては中川氏は、「ユーザーの接触(利用)時間に対して、成長の余地がまだある」と指摘。「2004年にラジオ広告を抜いたと言われたが、2005年にはインターネットが0.28兆円、ラジオが0.17兆円とその差は大きくなった」と成長の推移を述べた。

 中川氏は、今後のインターネット配信におけるコンテンツ調達について「インターネットで1億人のうち20%が視聴するようなコンテンツが出てくるかと言えば、それは難しい」とコメント。「しかし、1万人が視聴するコンテンツを1万本用意する考え方であれば、実現は難しくない」とテールコンテンツの重要性を示した。

 そうした中で「良い面も悪い面もあるが、ユーザー投稿型のコンテンツも重要になってくる」と考えているという。その上で「コンテンツビジネス全体で、“魅力的なコンテンツ”“トラフィック拡大”“広告出稿・売上拡大”の3点で良いスパイラルを創っていきたい」と述べた。


Yahoo!動画ではユーザー投稿型コンテンツのコンテストも行なっている コンテンツビジネス全体の良いスパイラルを目指すという

すべてのコンテンツがリッチ化すれば動画が付加されてくる状況に

動画配信サービスの競合状況

日本から世界へと逆タイムマシン経営が重要に
 また、Yahoo!動画におけるサービスの競合状況について、「Yahoo!動画のようなポータルサイト運営タイプ、GyaOのような動画配信サービス単独タイプ、テレビ局が直接運営するタイプの3種類」と分類。中川氏は、「インターネットはテキスト主体のものから、画像やFlashなどが付加されたように、すべてのコンテンツがリッチ化されれば動画も同様な流れになってくる」と指摘する。

 「例えば、不動産情報で駅から物件までの経路や室内の動画を配信して購買につなげていくケースなど、我々はすべてのコンテンツに動画が付加されていくことを目指している」とコメント。「動画から物販に繋げていくという考え方は我々とは逆だと思っている」と語った。

 今後の動画配信市場の拡大に向けては「映画やDVD、テレビ放送に加えて、インターネットでの配信も制作したコンテンツの出口に加えるのは、制作者側にもメリットがある」との考え方を示す。中川氏は「権利許諾の課題をクリアすることで、告知機会としてのインターネット利用が可能になり、広告収入が得られれば制作費にも還元が可能になる」とした。

 最後に中川氏は「グループ代表の孫正義は、米国で生まれたインターネットビジネスが日本に何年か遅れてやってくることから、先行して米国企業に投資して利益を得る“タイムマシン経営”を行なっていた」と発言。しかし、「ブロードバンドという側面では日本や韓国などアジアが先行しており、こうしたビジネスモデルを各国と協力して、日本から世界中に展開する“逆タイムマシン経営”が今後重要になってくる」と語った。


安田東大教授「ようやく放送と通信が一緒に利用できる環境になった」

安田東大教授
 特別講演ではこのほか、NTTの宮部博史常務理事、YRP研究開発推進協会の甕(もたい)昭男会長、国際IT財団/スタンフォード日本センターの中村伊知哉研究所長の3氏からも、放送と通信の融合に向けた考え方が示された。

 講演のまとめとして安田教授は、「人間の感性から見れば、放送と通信は技術的に別々でしか使えなかっただけ」と指摘。「ようやく放送と通信が一緒に使用できるようになった今、人間として感性を活かして情報の発信や活動が重要になっていくのではないか」と締めくくった。


関連情報

URL
  Interop Tokyo 2006
  http://www.interop.jp/
  TVバンク
  http://www.tv-bank.com/
  Yahoo!動画
  http://streaming.yahoo.co.jp/


(村松健至)
2006/06/08 12:42
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