QUALCOMMは、12月に発表したAirgo買収に関する記者説明会を開催。Director, Business DevelopmentのBeau W. Beck氏が、買収の目的や世界初のIEEE 802.11n ドラフト2.0に準拠した無線LANチップセットについても説明を行なった。
■ Airgo買収でモバイルブロードバンドのリーダーに
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Business Development部門のディレクターを務めるBeau W. Beck氏
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QUALCOMMは、同社のワイヤレステクノロジーの強化を目的として、MIMO技術をベースとした無線LANチップセットを主力に展開するAirgo Networksの買収を2006年12月に発表している。携帯電話向けのビジネスを中心に展開してきたQUALCOMMが、次世代の高速無線LAN規格「IEEE 802.11n」のベースとなるるMIMO技術を持つAirgoと組み合わさることにより、Beck氏は「モバイルブロードバンド市場においてQUALCOMMがリーダーシップを握ることになる」とコメント。「携帯電話と無線LANチップセットの技術を両方持っているのはQUALCOMMだけ」と自信を示した。
Beck氏は、「家庭やオフィスでは無線LAN、移動中は携帯電話というように、モバイルの通信手段はエリアや利用シーンによって異なる」と指摘。「モバイルブロードバンド技術を統合することで、オフィスや家はIEEE 802.11nで接続し、その間の移動時には3Gを使うなど、ネットワークが異なっても変わらず同じコンテンツにアクセスできる環境を作り出せる」とした。
無線LANと携帯電話のチップセットメーカーが統合されることは技術的なメリットだけではなく、チップセットを購入するメーカーにとっても購入先を一元化することが可能。また、チップセットのスペースを小さくすることで製品の小型化を図るというメリットも考えられるとした。
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携帯電話と無線LANの統合でモバイルブロードバンドのリーダーシップへ
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異なるネットワークでもシームレスにアクセスできる環境が実現できる
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■ ドラフト2.0はドラフト1.0の課題を改善。通信速度も高速化
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AGN400の概要
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Beck氏はAirgoが2006年12月に発表したIEEE 802.11n ドラフト2.0準拠のチップセット「AGN400」についても説明。AGN400は同社のTrue MIMO Gen-N技術を採用したチップセットで、同社のIEEE 802.11nチップセットとしては第4世代にあたる製品だ。理論値上の通信速度は第3世代の240Mbpsから315Mbpsまで高速化が図られたほか、第1世代から第3世代の同社製品だけでなく、EWCやドラフト1.0規格との互換性も確保。MIMOの構成も1x2、2×2、2×3など柔軟に対応できるとした。
すでに市場ではIEEE 802.11n ドラフト1.0に準拠した製品が数多く登場しているが、Beck氏は「異なるメーカーの製品で互換性がない、既存の無線LAN網に干渉を起こすなど、ドラフト1.0製品は市場に混乱を生んでいる」と指摘。ドラフト2.0ではこうした問題を解決するために1,00以上のコメントが寄せられ、300近い技術的な改善が行なわれたという。
「市場はドラフト2.0を待ち望んでいた」と語るBeck氏は、世界で初めてドラフト2.0に準拠したというAGN400への自信を示した。同社ではドラフト1.0が十分な使用を満たしていないとの考えから、これまで製品に「IEEE 802.11n」の名称を使用してこなかったが、AGN400の発表では「IEEE 802.11n」の名称を初めて使用していることからも、ドラフト2.0へ対する同社の期待と自信が伺える。
Beck氏は、「高速なIEEE 802.11nは有線LANをも代替できる」と説明。順調に成長を続けるデータ通信市場だけでなく、ホームネットワークの市場においても「映像伝送やSTB、IPTVなど、新しい市場が切り開ける」と期待を示した。買収後もIEEE 802.11nチップセットなどの製品群には「Airgo」のブランドを継続する方針。IEEE 802.11nの正式規格化が見込まれる2008年に向けて積極的に展開していくとした。
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前世代モデルやドラフト1.0などとのスループット比較
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市場はドラフト2.0を待ち望んでいた
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miniPCI型のAGN400
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こちらはCardbus型
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■ URL
2007 International CES(英文)
http://www.cesweb.org/
ニュースリリース
http://japan.qualcomm.com/press/releases/2006/061203_availability_worlds_first.html
■ 関連記事
・ Airgo Networksがカンファレンス開催。11nにはドラフト2.0以降で対応
(甲斐祐樹)
2007/01/11 18:30
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