この次世代無線LAN規格は、2006年6月の策定を目標に、現在作業が進められている。基本的な通信方式は802.11gと同じOFDMを採用しており、既存の規格で同方式を採用している802.11aや802.11bとの互換性も備えるという。大きな特徴はその速度だ。井上氏は「無線LANは理論値と実測値の差があまりにも大きいが、新規格では実測スループットで100Mbpsを目指す」という。現在はまだIEEE内のHigh Throughput Study Groupで研究されている段階で、ようやくTask Group発足のための準備が完了したところだ。
冒頭に記した規格名、「802.11n」というのはあくまでも仮称だ。ただ、802.11委員会の中でTask Group Bが規格を制定したので802.11b、Task Group Gによるものが802.11gと名付けられている前例を考えれば、まもなく発足するTask Group Nが制定する次世代無線LAN規格は「802.11n」だと考えるのが自然だろう。
井上氏は「現在有力なのは」と断った上で、「MIMO-OFDM」という技術が採用されるのではないか、と予測する。MIMOはMulti Input Multi Outputの略称で、送信側、受信側双方に複数のアンテナを用意し、データを分割して送信する仕組み。アンテナを増やしていけば、倍々でスループットが向上するのが特徴だ。すでに一部のメーカーはMIMO-OFDMを既定路線として取り組み始めているという。