3Dバーチャルワールド(メタバース)に関するカンファレンス「バーチャルワールドサミット2007」(主催:バーチャルワールドサミット2007実行委員会)が17日・18日の2日間、東京・両国のKFCホールで開催されている。「Second Life」を運営するLinden Labのほか、「There」を運営するMakena Technologies、中国の「HiPiHi」、日本発の「meet-me」を開発中のココアなど、海外・国内のメタバース業界のキーマンが多数参加して講演などが行なわれる。
■ Second Lifeは、ずべてのユーザーがつながれる世界を形成
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米Linden LabのGinsu Yoon氏(Vice President、Business Affairs)
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初日の講演には、米Linden LabのGinsu Yoon氏(Vice President、Business Affairs)が登場。「セカンドライフ・グリッドによるグローバルプラットフォーム構想」と題して、登録ユーザー約1,000万人の3Dバーチャルワールド「Second Life」の戦略について触れた。Yoon氏は、Second Lifeに関する国際市場開発や、企業およびビジネス開発、対外デベロッパープログラムなどのビジネスを統率している。
Yoon氏によると、現在、米国からのユーザーは約30%、欧州が50%以上。一方でアジアが最近急増しており、10%を占め、アジア地域の中では日本のユーザーが一番多いという。
「1カ月に2,400万時間もがSecond Lifeで費やされており、100TBに近いコンテンツがユーザーによって作られている。しかも、その世界が、区分けされた細かなものではなく、すべてがつながった大きな世界を形成している。すべてのユーザーがつながることができる。また、企業が宣伝という観点でも利用できるようになっている」と、Second Lifeの特徴を示した。
また、「コンテンツを作成するためには、レゴのブロックのようにピースを組み合わせて、手間と膨大な時間をかけることが必要。ただし、作られたものをSecond Lifeの世界では知的財産権で守っている。クリエイターのモチベーションを上げて、制作物を他の人に提供するというビジネスも可能になる。さらに、仮想通貨のリンデンドルを活用した商取引が可能であり、仮想社会で稼いだお金を、取引によって実際の通貨に変えて、それをビール1本やリアルの世界の家賃に充てている人もいる」と、これまでの仮想社会にはないSecond Lifeならでの動きを紹介した。
Yoon氏自らがSecond Lifeの活用を積極的に始めたのは、ボイス機能が導入されてからだという。
「リアルの社会においては、電話による会議が行なわれているが、黒い箱に向かって話すのは興ざめである。しかしSecond Lifeでは、相手のアバターがいて、そこに向かって音声で話をすることができる。テレカンファレンスよりも、むしろ実際の会議と同じような環境が実現できる。仮想社会に惹きつけられたのは、こうしたリアルの社会を補完する使い方ができるからだ」とした。
Second LifeにあるLinden LabオフィスのYoon氏の部屋には、現実の四半期の計画書が貼り出してあり、それを活用しながらリアルのビジネスを推進するということもあるようだ。また、一部には、企業の面接にSecond Lifeを活用している例があることも紹介した。
調査会社の米Gartnerでは製品やサービスのブームなどを示す「Hype Cycle」を提示。その中で、市場投入と認知の後に過剰な期待をもとにしたピークを経て、ユーザーの期待が幻滅に変わる谷を経由し、活用したい人だけが残りるフェーズへと移行するとしている。Yoon氏は「現在、Second LifeはHype Cycleのスロープを上っている段階にある。まだまだ始まりであり、高いところに上っていくことになる」などとした。
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Second LifeにあるLinden LabオフィスのYoon氏の部屋の様子
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Gartnerの言う「Hype Cycle」におけるSecond Lifeのポジション
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■ 日本のコミュニティは、日本の企業やユーザーが独自に作ればいい
Yoon氏は、日本における戦略についても触れたが、ここでのメッセージは、日本におけるSecond Lifeは日本のユーザーや企業が独自にやっていくべきというものだった。
「Linden Labは、カリフォルニアにある会社。その会社が、日本のユーザーのことを熟知しているわけがない。プロバイダーをはじめとする日本のローカルな企業や個人が、日本に最適化したコミュニティを作ればいいだろう。Linden Labが提供するSecond Life Gridは、こうした環境を作ることができるものだ」とした。
また、Yoon氏は次のように語る。「多くの人から、なぜLinden Labはもっと使いやすいインターフェイスを作らないのかと聞かれる。もちろん、Linden Labの中にもそうしたプロジェクトはある。しかし、オープンな環境を提供すれば、多くの人がもっと使いやすいものを開発してくれる。それこそが、多くの人がすばらしい体験ができる近道になる」。
Yoon氏は、10億人といわれるインターネットユーザー全員がSecond Lifeのユーザーになるだろうと、大胆な予測を展開する。「1,000万人の登録ユーザー、100万人のアクティブユーザーという数字はまだまだ小さい。これから、オンラインのコミュニケーション手段として共通に活用されるプラットフォームになるだろう。私は、個人の利用時間がどれだけなのかという点を重視している。これが今後の成長の指標になる。あなたはなぜSecond Lifeでこれだけの時間を費やすのかという質問があるが、その質問の多くがメールやブログで行なわれており、その質問行為自体が仮想社会で時間を費やしていることになる」と皮肉ってみせた。
最後に、Yoon氏は「1つの企業でこれだけ大きな世界を作り上げることは不可能。だからこそLinden Labは、オープンな世界を実現し、それを多くの企業や個人が利用できる環境を提供している。Linden Labの技術を超えるようなことが、Second Lifeの世界では数多く行なわれている。Linden Labは、Second Life Gridの広がりに力を注いでいくことになる」と締めくくった。
■ URL
バーチャルワールドサミット2007
http://www.virtualworldsummit.com/
Linden Lab(英文)
http://lindenlab.com/
(大河原克行)
2007/10/17 17:15
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