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【ケーブルテレビ ショー2008】
NHKオンデマンド講演、VOD市場の本格化で4年度目に黒字化目指す

「NHKオンデマンド」テレビ用画面
 ケーブルテレビ ショー2008で20日に開かれたセミナーでは、日本放送協会(NHK) NHKオンデマンド室の所 洋一氏が映像配信サービス「NHKオンデマンド」に関する説明を行なった。

 NHKオンデマンドは2008年12月1日に開始を予定する有料の映像配信サービス。NHKが放送した番組を、ブロードバンド回線などを通じて有料配信するもので、当初はPCとデジタルテレビ向けの「アクトビラ ビデオ・フル」、J:COMのVODサービス「J:COM オン デマンド」がサービス対象になる。

 提供形態は、NHKが日々放送している番組を1週間程度配信する「見逃し番組」と、過去に放送した番組を配信する「特選ライブラリー」の2メニュー。販売形式は、単品販売とパック販売に加え、「見逃し番組」では月額見放題プランも用意する。

 配信フォーマットは、PCはWindows Media Video(768kbps/1.5Mbps)、アクトビラがH.264(8Mbps)、J:COMがMPEG-2(14Mbps)で、いずれもストリーミング。また、PC版の特選ライブラリーではダウンロード版も用意し、ビットレートは3Mbps程度を見込んでいる。ただし、将来的にニーズがあればPC向けにHD品質の映像配信も検討するとしている。


サービス内容案。特選ライブラリーは毎年1000本ずつ追加する考えという 動画配信の技術案。番組によってはダウンロードコンテンツの展開も予定

NHKオンデマンドを通じて国内VOD市場の本格立ち上げを

NHKの所氏

NHKオンデマンドに関係する放送法の該当部分
 セミナーに登壇したNHKの所氏は、NHKオンデマンドの特徴について「テレビ系ではHD品質での配信が基本」「日本では初めてとなる『見逃し番組』の本格展開」と説明。また、幼児向けからドキュメンタリーまでと幅広いジャンルのコンテンツを用意した点も特徴として紹介するとともに、国内におけるVODマーケットの本格立ち上げに寄与したい考えという。

 NHKでは、NHKオンデマンドを通じて視聴者との接触率拡大と、再放送要望の多い番組を配信するなどして視聴者の満足度向上を目標に設定。特にテレビへの接触率に関しては、若年層を中心に低下しており、「本サービスを通じて新たな絆を作って、テレビ放送への接触率を上げていきたい」とした。

 所氏はまた、NHKオンデマンドのサービス提供を実現した理由として、2007年12月に成立した「放送法等の一部を改正する法律案(改正放送法)」を紹介。所氏は「第9条第2項第2号で、電気通信回線を利用したBtoC業務が認められた」ことで、サービス提供が可能になったと説明した。合わせて、同項第3号ではBtoB業務に関する規定も定められている。

 続けて、第9条第4項の「営利を目的としてはならない」点や、第39条第2項の「特別の勘定を設けて整理しなければならない」点を挙げ、「法律上、別会計での運用が定められている」と述べた。こうした点から、NHKオンデマンドでは実利用ユーザーから得られた料金収入で運営が行なわれる、受益者負担型のサービスになるという。

 また、NHKオンデマンドで配信可能なコンテンツは、法律上、NHKで放送した番組に限定される。このため、許諾が得られれば海外ドラマや海外ドキュメンタリーも配信は可能だが、「NHKオンデマンド向けの番組の外部購入や、番組の新規制作は行なえない」とした。


サービス開始に向けたNHK内の体制やテレビ向け展開条件も説明

提供部門と配信部門をNHK内に位置付けてサービス提供を行なう
 サービス提供に向けては、NHK内の部署をBtoC業務を行なう「配信部門」と、BtoB業務を行なう「提供部門」に位置付け。両部部門の間では、NHKオンデマンドで配信した番組の提供リクエストや許諾・提供のやりとりが行なわれ、手続きに関する経費も配信部門から提供部門に対して支払う形になる。また、提供部門は他の配信事業者との取引も行なわれる。

 システム面では、提供部門側が局内設備と原盤制作機能を保有。配信部門は商品管理や会員管理、課金、配信機能などを担当するが、これらはASPサービスを利用するため、設備として持つのは配信先に合わせてコンテンツを変換する「トランスコーダシステム」に限定される。なお、ASPサービスを利用する事業者は現在選定中のため、サーバー数や帯域幅などは確定していないという。

 本講演はケーブルテレビ ショー2008で行なわれていることもあり、終盤にはテレビ系プラットフォームの展開条件も示された。所氏によれば、NHKオンデマンドサービスを実施するための条件には、「コンテンツ編成がNHK側で実施できること」と「NHKが利用者と視聴にあたっての契約を締結できること(BtoC)」、それに「6Mbps以上のH.264、または14Mbps以上のMPEG-2による配信が可能な点(HDTV対応)」を挙げた。

 また、「オンラインによる番組データやメタデータの登録」や「コンテンツの即時公開停止の対応」も条件になるという。その上で、「1番大きな話として、コストバランスの面がある」と所氏は説明。「NHKオンデマンドは独立採算・非営利ではあるが、プラットフォームや展開コスト対して、売上が同等以上にならなければ運営は難しい」と語り、「売上が見込めないプラットフォームへの展開は厳しいのが現状」だとした。

 なお、サービス開始当初は赤字運営になるが、所氏は「4年度目で単年黒字化を、7年度目で累積損失を解消できれば」と見通しを語った。


関連情報

URL
  ケーブルテレビ ショー2008
  http://www.catv-f.com/
  NHKオンデマンド
  http://www.nhk.or.jp/nhk-ondemand/

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(村松健至)
2008/06/20 16:40
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