幕張メッセで開催されている「CEATEC JAPAN 2004」で7日、特別セッション「電話の声はよくなってきているか?」が行なわれた。登壇したのは、情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)通信品質委員会委員長でNTTアドバンステクノロジ音声音響事業ユニット担当部長の入井寛氏。IP電話端末の品質規格に関する取り組みについて解説した。
■ IP電話の普及を受け、ハンドセット型IP電話端末の認定業務も
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CIAJ通信品質委員会委員長を務めるNTTアドバンステクノロジ音声音響事業ユニット担当部長の入井寛氏
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CIAJは、電子・通信系の企業が会員となっている任意団体。政策提言を行なっているほか、電話機の性能や品質に関する規格を制定し、それに適合するかどうかを認定する「Cマーク制度」といった業務も行なっている。IP電話の普及を受けて10月1日から、ハンドセット型IP電話端末について「CES-Q003-2」という規格に則った製品であるかを認定し、適合品には「C ipマーク」を発行する業務を開始した。ある一定の品質が確保された製品であるかどうかの目安となるわけだ。
今回の講演では、その規格制定のために実施された、市販IP電話機の性能把握試験の結果について特に時間を割いて解説した。入井氏は「市販製品の性能を把握し、それを反映させなければ、意味の薄い規格になってしまう」と説明。その上で「普通、電話機はどれも同じように見えるだろうが、送話口と受話口の距離やデザイン形状によって、通話性能が相当変わるケースもある」と語り、重要な試験であることを強調した。ちなみに「事業用電気通信規則」という法令は、“IP電話網”の品質を規定しているもので、CIAJの規格とは対象範囲が異なるという。
■ CIAJの品質規格は、現実的な実験を踏まえて制定
性能試験は3回にわたって行なわれた。1回目は同一のIP電話機、2回目はIP電話と通常の電話機、3回目は異なった種類のIP電話機をそれぞれ接続し、通話品質を測定するという内容だ。男女40名が主観で回答したアンケートの結果なども加味されている。
同一機種間の接続試験では、「IP電話の品質は携帯電話以上、固定電話以下」との結果になった。通話品質を示す数値である「R値」による判断でも、固定電話の平均である80~100を下回り、携帯電話の50~60を超えるケースが多かったという。
IP電話と通常の電話機との接続試験では、通常の電話機側では品質の低下は少なく、IP電話側でもそれなりの性能に落ち着いたと分析。3回目についても、異なる機種間で極端に性能が落ちるケースはなかったとしている。
これら計3回の試験の結果について入井氏は、「電話機一般では、メーカー側のチューニングによって同一メーカー・同一機種同士での接続時に、極端に通話性能が高くなることも予想されるが、それを覆すほどではなかった」と補足している。
CIAJでは、これらの試験結果を総合的に勘案し、最終的な規格として制定したという。入井氏によると、「端末遅延時間など、国際規格より緩和された部分もある」とのこと。数値だけにこだわらず、現実的な決定をした結果と言えるとしている。
■ 今後はハンズフリー製品の規格化も検討
ここまで解説してきたのは、受話器を手に持って使うハンドセット型製品を対象とした規格について。今後はハンズフリー型IP電話の規格化も検討しているという。入井氏は、「テレビ電話は究極的にハンズフリーが理想。テレビ電話会議の機材も増えており、手を使わずに通話する製品は今後需要が見込まれる分野でもある」と指摘する。
そこで実際に、ハンズフリー型IP電話の性能試験も8月に実施。“ソフトフォン”と呼ばれる、PCにインストールして使うソフトウェアタイプのIP電話も対象にR値を算出。いずれの製品も、R値がおおむね50を超える結果だったという。ただし、ソフトフォンと比較して、専用設計のハードウェアタイプに一日の長があるのも事実だとしている。
なお、講演の最後に入井氏は、電話機全般の進化の方向について「通話品質、(持ち運べるかどうかなどの)利便性、価格という3要素で考えてみると、固定電話や携帯電話は方向性がそれぞれ異なる。ただ、ISDN用に通話品質を向上させた『広帯域電話』のような製品をNTTが開発していた例もある。全般的に通話品質を追求する方向にありそうだ」と私見を述べた。
■ URL
CEATEC JAPAN 2004
http://www.ceatec.com/
(森田秀一)
2004/10/07 22:26
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