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はてな川崎氏「有料サービスによる良好なコミュニティを構築」

 はてなの広告事業戦略担当を務める川崎裕一氏は、「はてなのブログビジネス戦略」と題した講演で、はてなのサービス紹介や収益向上に向けた今後の取り組みなどを紹介した。


有料サービスによって荒れにくい良好なコミュニティを構築

はてなの川崎裕一氏
 川崎氏は初めにはてなの会社概要を説明。2001年7月に京都にて人力検索サイト「はてな」を立ち上げたはてなは、現在は事業所を東京都渋谷区に移転し、社員7名で運営している。川崎氏は「7人のうち開発が4人で、新機能が1日に2つは提供されてプレスリリースが間に合わないほど開発先行の会社」と語った。

 はてなとしての最初のサービスである人力検索サイトは、知りたいホームページのURLを達人が教えてくれる、というコンセプトのサービス。川崎氏は「例えば“チャンネルもわからないけれど昨日見た深夜番組の名前を調べたい”という時、これを検索エンジンで調べるのは難しい。ならば達人に聞いてしまおう」とサービスの趣旨を説明、「3分以内に回答がつく質問が全体の80%で、1つの質問について3つは回答が付く」と補足した。

 人力検索は有料のポイント制度を導入しており、質問者が設定したポイントが回答者へ支払われる仕組み。川崎氏は「この手のサービスは荒らされやすいという問題があるが、有料のはてなでは質問者が強い立場にあり、金銭的なポイントバックによって荒れにくい良好なコミュニティを構築できている」とした。


はてなの月間PVとユーザー数の増加傾向 人力検索サイト「はてな」の概要

辞書的側面も持った独自の機能「はてなダイアリーキーワード」

はてなダイアリーキーワード
 現在主力となっているブログサービス「はてなダイアリー」は、もともとは日記サービスとしてスタートしたが、途中でコメントやトラックバックといったモジュールを実装することで“ブログっぽく”変化していったという。川崎氏は他のブログとの違いとして「はてなダイアリーキーワード」を紹介。はてなダイアリー内の特定のキーワードに対して、そのキーワードを説明するページへのリンクを自動で生成することで、ユーザー間のコミュニティを構築できるとした。

 はてなダイアリーキーワードは現在65,000近い登録数で、はてなダイアリーの20%近いトラフィックをキーワードのページが占めているという。川崎氏は「キーワードが辞書的な側面を持つことからWebサイトで参照される率が高く、広告掲載媒体としても価値を持っている」と指摘、Google AdSenseやアフィリエイトといった広告に加えて、今後はキーワードの価値を最大限にいかした独自の広告商品を展開していく方針を示した。

 川崎氏ははてなの広告に対する取り組みの裏話も披露。現在はてなダイアリーキーワードのページでは下部に広告を表示しているが、これは上部に設置した時の4倍のクリック量だという。川崎氏は「広告を最後に見ることで続きの情報として認知されるのではないか」とコメント。また、もっともクリックレートの高いのが「人力検索の質問の直後に表示される広告」だという例を挙げ、「クリックレートが高いということは、ユーザーの視点が広告で一旦止まっているのではないか。これは仮説に過ぎないが、質問を読んで答える前に、質問の内容を頭の中で消化するプロセスがあり、そのタイミングで広告を表示すると効果が高いのではないか」との考えを示した。


辞書的な側面を持つはてなダイアリーキーワードはSEO効果が高いという はてなダイアリーのトラフィックの20%を占めるはてなダイアリーキーワードのページ

「不満は期待の現れ」。素早い対応でユーザーの支持を得る

機能改善とクレーム対応の方針
 サービス概要の説明に続いて、川崎氏ははてなのコミュニティに対する取り組みについて説明を行なった。川崎氏は「コミュニティビジネスでは機能改善やクレーム・問い合わせが多く、はてなでも新機能に対してトラックバックが20は付く」との例を挙げた上で、「不満値は期待の現われでもあり、問題を先送りせずに対応していくことでユーザーの支持を得ることを狙っている」との方針を示した。

 クレームの中では中傷や名誉毀損といった事例も多いという。川崎氏は「我々はユーザーの考えを理解し、それが正しいかどうかを判断してからアクションを起こすというスタンス」とコメント。「強い事業者からの削除要求だから対応するということはない。それをやってしまえばユーザーが離れていってしまう」とした。

 現在は弁護士と相談しながら規約改正やガイドライン整備、判例の公開といった作業を進めているという。川崎氏は「この規模の会社にしては弁護士にお金を払っているのではないか」と前置いた上で、「我々はユーザーが自己解決能力を持っていると信じている。判例を出すことでユーザー自身による問題の処理が可能になるのではないか」と語った。

 はてなでは、人力検索「はてな」に加えて、はてなダイアリーをベースとしたグループウェア「はてなグループ」、各種サービスの追加機能などを有料サービスとして提供するほか、アフィリエイトプログラムによる広告事業や法人向けのサービスで収益を上げている。法人向けサービスとしては、bk1と共同運営する「bk1はてな」に加えて、人力検索エンジンのOEM事業を紹介。「社内で人材検索をする時に、どのようなスキルを持った人材がいるかを人に聞くことができる“Know Who”マネジメントが実現できる」との長所を挙げた。

 今後ははてなのさらなる収益向上が課題だという。川崎氏は「現状はコミュニティの維持・拡大に注力している」と述べ、ブログサービスの生き残り競争に勝ち残るため、新サービスの提供や機能拡張によってはてなの独自性を追求。こうしたコミュニティを収益につなげるほか、企業向け販売の強化や広告サービスに取り組むことで、収益力を上げていく方針を示した。


判例を公開することでユーザーによる処理を促進 今後は「はてならしさ」をより追求していく

関連情報

URL
  はてな
  http://www.hatena.ne.jp/

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(甲斐祐樹)
2004/10/18 14:28
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