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MDからパソコンへ楽曲転送できる! Hi-MDウォークマン「MZ-RH1」


MDウォークマン「MZ-RH1」。通常製品のボディカラーはシルバーだが、直販サイト「ソニースタイル」では限定色のブラックも選べる。同サイトでの販売価格39,800円
 今回紹介するアイテムは隠れた人気商品といって良いだろう。フラッシュメモリやHDDを利用したプレーヤーばかりが目立つポータブルオーディオ機器の中にあって、発売から数カ月が経過した今も品薄状態が続くという、非常に気になるHi-MDウォークマンである。

 ソニーの「MZ-RH1」は、ネットワーク対応の録再Hi-MDウォークマンとしての基本を押さえた上で、リムーバブルストレージ、リニアPCMレコーダといった数多くの機能が詰め込まれた製品だ。中でも注目はMDに録音された楽曲をパソコンに転送、付属のアプリケーションソフト「SonicStage」で管理できるという点。つまり、MDに収録された音源をパソコンに吸い出して保存、他の機器へ転送することができるのである。歴代製品の中ではもっともパソコンとの関わりを重視したモデルと言えるだろう。

 MZ-RH1は、ポータブル型と据え置き型をうまく融合させたデザインが特徴。重量100gほどのコンパクトなボディながら、裏面には小さなゴム足がついており、平らな面の上でしっかりと安定。側面にあるドットマトリクス式有機ELディスプレイと相まって、据え置き型オーディオ機器の雰囲気を醸し出す。表示をスペクトルアナライザーに切り替えれば、まるでミニコンポのイルミネーションを見ているようだ。デスクに置いてこれほどサマになるポータブル機器は珍しいのではないだろうか。

 ボディはディスクドライブのサイズに合わせた正方形に近い箱形。横から見ると端が丸められた長楕円形だ。色は光沢を抑えた上品なシルバーで、アルミニウムやチタンといった軽量金属を思わせる手触り。ディスプレイ関係が側面にまとめられているので、とてもシンプルな印象を受ける。操作はボディの突起部に設けられたジョグダイヤルが中心。ボタンなどは小さく、ストロークは浅いが、オーディオ機器として不満のないレベルに仕上げられているのは、さすがソニーというしかない。もちろん再生に関する操作はヘッドホン端子に接続する付属リモコンで可能だ。


上面パネルが浅い角度で開く、MDウォークマンではお馴染みのスタイルだ。写真のHi-MD専用ディスクは従来MDと同じサイズで容量1GBを実現したもの ボディ側面に並んだ3つのジャック。左からリモコン付きヘッドホン端子、マイク入力端子、オプティカルケーブル対応のライン入力端子だ

試用した製品には「SonicStage Ver.3.4」が付属。ちなみに現在はサポートページでAAC形式に対応した最新版の「SonicStage CP」が無償提供されている
 MDからの楽曲データ吸い出しなど、パソコンとの連携には付属の音楽データ管理アプリケーションソフト「SonicStage Ver.3.4」を利用する。ソフトについての詳細は省くが、使用法は至って簡単。ほかのSonicStage対応機器と同じようにMD内の曲を取り込むことができる。楽曲データはパソコン上で管理、プレイリストを作成するなどして、例えばウォークマンEシリーズなどに転送し、外出先で楽しむといったことが可能だ。

 少々年季の入った筆者の環境ではMD1枚あたりの転送時間は平均10数分といったところだったが、最近のパソコンであれば、さらに短縮されることだろう。これなら手持ちのMDに収録された曲をすべてパソコン上に移行するのもそう面倒なことではない。製品にはそれ以外にも、CDからMDへの楽曲データ直接転送が可能な「MD Simple Burner」と、Macintosh用の「Hi-MD Music Transfer for Mac」も付属している。

 パソコンユーザーとしては外部ストレージとしての機能も気になるところ。その点、本製品ではコンビニなどで手に入る安価なMDに約300MB、1枚数百円のHi-MDなら約1GBのデータを記録できる。コストパフォーマンスに優れた手軽なリムーバブルメディアとして注目に値する。

 ただ、デメリットがないわけではない。1つはパソコン用ストレージとしての普及率が低いため、気軽にディスクだけをやりとりできない場合が多いこと。もう1つはフラッシュメモリなどに比べて読み書きが遅く、データの転送に時間がかかるという点だ。これらの問題さえ気にならなければ、利用価値は非常に高いと言えるだろう。


MDまたはHi-MDに収録された楽曲データはウィンドウ上部の「音楽を転送する」を選ぶことでリストアップされる MDからの吸い出しはリストから曲を選び、中央の赤い矢印ボタンをクリックするだけ。筆者の環境ではMD1枚あたり10数分で転送が完了した

パソコンと接続し、MD内の楽曲データを転送。ディスプレイには「ACCESS」の文字が点灯し、右側にアニメーションが表示される パソコンにセットしたCDの楽曲データをMZ-RH1に直接転送する「MD Simple Burner」。使い勝手は悪くないが、使用頻度は高くなさそうである

半透明パネルの内側に配置されたドットマトリクス式有機ELディスプレイ。文字や図形が青い光点で描かれる。暗い場所での視認性は良好だ
 Hi-MDウォークマンのハイエンドに位置するだけあって、アナログ回路や電源には音質に対するこだわりが感じられる。MZ-RH1の紹介ページにはHDデジタルアンプ内蔵、カップリングコンデンサの大容量化、電源コンデンサの高性能化というようなオーディオファンの心理をくすぐる語句が並んでいるのだ。実際、音のクォリティは非常に高いように感じられた。

 アナログ部分だけでなく、デジタルエフェクト系の機能も充実している。筆者が気に入ったのはダイナミックノーマライザ。これは曲ごとに異なる音量を聴きやすいレベルに自動調整してくれるというもの。このほかにも6バンドイコライザ、vptアコースティックエンジン、15段階のデジタルピッチコントロールといった効果を使い分けられる。また、指定したポイント間を繰り返し再生できるA-Bリピートといった語学学習やテープ起こしに便利な機能も搭載している。

 実を言うと、筆者がMDからの楽曲データ吸い出し以上にそそられた機能がある。それはリニアPCM録音だ。マイクを接続すれば、16bit 44.1KHzという音楽CDと同じクォリティのサウンドを記録できるのである。会議の録音や音声メモといった用途なら、これほどの高音質は必要ないが、楽器の演奏などをレコーディングしたいというユーザーには、この上なく嬉しい機能なのだ。今回、本格的なライブ録音の機会には恵まれなかったが、自宅での楽器演奏を録ってみたところ、非常に満足のいく結果だった。

 リニアPCM録音はATRAC3plusやMP3などとは異なり、音声データを圧縮しない。つまり、同じ時間でも、より大きな容量のストレージが必要になるのだ。ポータブルオーディオ機器でこんな贅沢な録音ができるのは、コンパクトで大容量のメディアが簡単に交換できるHi-MDだからこそだろう。


バーグラフ式のスペクトルアナライザーは、まるでミニコンポのイルミネーションのようだ。ディスプレイの表示はこれ以外にも数パターンが選べる リモコンにはバックライト付きの液晶ディスプレイを装備。側面にいくつかのボタンが配置されており、再生関係の操作はこれだけで対応できる

ACアダプタとはUSBケーブルで接続するバスパワー方式。もちろん、パソコンのUSBポートに接続しても、AC電源駆動やバッテリー充電が可能
 面白いことに、MZ-RH1にはAC電源用のジャックがない。なんとUSBバスパワーを利用するのだ。付属のACアダプタにはUSBポートが設けられており、本体とはUSBケーブルで接続する。もちろんパソコンのUSBポートに接続してもAC電源駆動や充電が可能。パソコンと組み合わせて利用するのなら、ACアダプタの使用頻度は低い、というよりなくても困らないのである。少々残念なのは旧来のウォークマンが対応していた単3乾電池駆動が省かれている点だ。もっとも、電源には大容量のリチウムイオン充電池を採用しており、連続動作時間は大幅に伸ばされているようである。さらにキメ細かい残量が把握できるので、バッテリー切れに悩まされることはないだろう。

 少々逆説的だが、このMZ-RH1があれば、MDで音楽を聴く機会が一層減ってしまうのではないかと筆者は思っていた。ところが実際に使ってみると、その音の良さやこだわりの機能にのめり込んでしまいそうになるのだ。魅力的なアイテムという意味では、フラッシュメモリやHDDを搭載したプレーヤーに決して引けはとらない。ポータブルオーディオの基礎を作ったソニーならではの一品だといえるだろう。


電源のリチウムイオン充電池。以前からあるガム型ニッケル水素充電池より大柄。左の突起部にある銀色のツマミはジョグダイヤルだ パッケージの内容は本体とバッテリーのほか、ACアダプタ、電源兼用のUSBケーブル、リモコン付きイヤーレシーバー、携帯用のポーチなど

関連情報

URL
  製品情報
  http://www.sony.jp/products/Consumer/himd-rec/
  Sony Drive
  http://www.sony.jp/


(斉藤成樹)
2006/10/04 11:02
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