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USBでお手軽マルチモニタ環境を実現!「サインはVGA」


海連の「サインはVGA」。実売価格は1万円前後。最近のケータイと大差がない大きさで、約100gと軽量なので持ち運びにも困らない
 今回の製品には意表を突かれてしまった。ボディの上端にはモニタ接続用でお馴染みのD-SUBコネクタがついている。しかし反対側からは、何とUSBケーブルが伸びているのだ。そう、本製品はUSBからモニタに映像を送ってしまうという強烈なアイテムなのである。

 やはり注目度は大きく、発表直後から海外のIT系ニュースサイトでも採り上げられていたようだ。しかも製品名が「サインはVGA」(笑)。女子バレー日本代表アテネオリンピック出場記念というわけではないだろうが、今回サンプル品をお借りする機会を得たので早速試用してみた。

 USBにモニタをつなげられるメリットは、マルチモニタ環境が簡単に実現できてしまうという点にある。マルチモニタとは、文字通り1台のパソコンで何台かのモニタを利用することだ。それぞれに同じ画像を映し出すのではない。複数台のモニタを組み合わせて大きな1台のモニタにしてしまうのである。テレビのバラエティー番組などで、いくつかの画面を縦横に並べて大きな映像を表示しているのを見たことはないだろうか。規模に違いはあるが、アレのパソコン版と考えれば良い。

 パソコンでモニタが大きくなるということは、その分デスクトップが広く使えるということを意味している。たとえば1024×768ドットのモニタを左右に2台並べれば2048×768ドットの横長デスクトップになる。これだけのスペースがあれば、タスクバーから目的のウィンドウを探したり、重なり具合を調整したりといった手間から一気に解放される。

 資料を見ながら文書を作成したいときなど、一方のモニタでワープロを使い、もう一方のモニタに資料を置いておけば良いのだ。あるいは、プロジェクタを接続して顧客向けのプレゼンテーション資料を映し出し、パソコン側のモニタで解説用の資料を見るといった用途も考えられる。


ボディからは太めのUSBケーブルが直出しされている。長さは50cmほど D-SUB15ピンコネクタ。アナログRGB入力のモニタ用としては一般的なタイプ

 筆者の場合、一方のモニタにワープロやテキストエディタ、もう一方にWebブラウザと電子メールソフトを表示させるという使い方が多かった。どれも使い慣れたソフトだが、ウィンドウを開いたまま左右のモニタに振り分けておくと、何だかとても贅沢な気分になれるから不思議だ(笑)。ちなみに、マルチモニタのことをデュアルモニタとかデュアルディスプレイと呼ぶこともあるようだが、デュアルは「2つの」という意味なので、マルチモニタの一種と考えて良い。

 何かと便利なマルチモニタだが、いざ使ってみようと思うと少々敷居が高いのも事実。Windows自体はマルチモニタを意外に早くからサポートしていて、Windows XPは最大で10台のモニタを同時に利用することができる。しかし、これはハードウェアが揃っていたらの話。マルチモニタを利用するには、複数の出力端子を備えたマルチモニタ対応のビデオカードか、あるいはビデオカードそのものを必要枚数用意してパソコンに取り付ける必要がある。

 比較的大型のデスクトップパソコンならビデオカードを対応製品に交換したり買い足したりもできるが、これはこれで大変な作業。ノートパソコンや省スペース型パソコンにいたっては、製品自体が対応していない限りお手上げだ。やろうと思っても、なかなか実現できないことが多かったのである。

 ところが、「サインはVGA」なら簡単。パソコンがUSB 2.0に対応していさえすれば、付属のCD-ROMから専用ドライバをインストールし、USBケーブルとモニタを接続すれば良い。あとは、画面のプロパティを少々設定しなおすだけでマルチモニタ環境ができあがってしまうのである。モニタは一般的なアナログRGB信号が入力できるものなら、何でもかまわない。筆者は以前使っていたCRTを再利用したが、「サインはVGA」のおかげで新しいモニタが欲しくなってしまった。液晶なら2台並べても場所を取らないし、価格も下がってきているので投資に見合うだけの効果が期待できそうである。

 さて、気になるのは、やっぱり性能だ。果たして、USBに接続したモニタでマトモな表示が可能なのか。少々懐疑的になるのもムリはない。しかし心配は無用。マトモどころか、驚いてしまうほどのパフォーマンスを発揮してくれるのである。

 用途やパソコンそのものの性能にもよるだろうが、ゲームやDVD鑑賞以外なら十分に対応できるレベルといって良いだろう。動画もちょっとしたアニメーション程度は苦もなく表示する。もっとも、さすがに何十MBものメモリを搭載し、高度な3Dグラフィックスや高画質のビデオをバリバリ再生する今のパソコンのビデオパフォーマンスに比べれば、見劣りするのはやむを得ないだろう。

 とはいえ、ワープロや表計算といったビジネスアプリケーションならストレスを感じることはないはずだ。画質や色合いはモニタによるところが大きいが、筆者の環境ではまったく問題は感じられなかった。はっきりいって我が家では、現役の古いノートよりも快適なくらいである。


「サインはVGA」は「USB 2.0 SVGA Adapter」として認識された 筆者の場合、一方のモニタにワープロやテキストエディタ、もう一方にWebブラウザや電子メールソフトを表示させる使い方が多かった

 残念ながら弱点がないわけではない。1つは解像度と表示色数の選択肢が限られているという点、もう1つはDirect 3Dをサポートしていないという点だ。ただ、Direct 3Dに関しては今後のドライバアップデートで対応する可能性があるという。これは大いに期待したいところだ。

 ボディは淡いブルーのスケルトンで内部が透けて見える。中にはプリント基板が1枚。片面の半分ほどが銀色のプレートで覆われているほかは、数えるほどの部品しか見当たらない。巨大な冷却ファンまでついた最近のビデオカードと比べると、拍子抜けしてしまうほどシンプルな作りだ。

 しかし、これだけで予想をはるかに上回るパフォーマンスを叩き出しているのである。興味をそそられて基板を観察してみたが、目立つものといえばプレートとは反対の面にある15mm角ほどのチップのみ。これはUSBとPCIバスとを橋渡しするためのコントローラのようだ。ビデオチップが取り付けられているはずのカンジンな部分は、プレートの下に隠されているらしい。見えそうで見えないと余計気になってしまう。いっそのこと不透明なボディにしてくれれば良かったのに(笑)。


基盤の半分ほどが銀色のプレートに覆われている。この下に何があるのか非常に気になるところ(笑) 基板の裏側にもいくつか部品が取り付けられている。右の黒い正方形はUSBとPCIバスをコントロールするチップなのだろうか

解像度はタスクバーからも変更が可能だ
 というわけで、現状ではビデオチップの種類などのスペックは不明。サンプル品に同梱されていた資料にも、詳しい情報は記載されていなかった。ただ、出力可能な解像度や色数から考えるとビデオメモリの容量は2MB程度と思われる。少し前のノートパソコンに多く採用されていたようなワンチップ型のグラフィックアクセラレータをチューニングして搭載している可能性が高いのではないだろうか。ボディ横はグレーのプラスチック製で、通気のためか、斜めにスリットが刻まれている。銀色のプレートはヒートシンクを兼ねているようだが、気になるような発熱はなかった。

 解像度は640×480/800×600/1024×768ドットの3種類。色数は640×480/800×600ドットが32bit、1024×768ドットは16bitまでとなる。対応OSはWindows XP、またはWindows 2000だ。USBインターフェイスから電源を供給するバスパワー方式で、ACアダプタは必要ない。原稿執筆時点ではサイズなどのデータは発表されていなかったが、筆者が測定した範囲では、本体サイズが約50×110×25mm(幅×奥行×高)で、重さは100gほどだった。これならノートパソコンとペアで持ち歩き、出先にある機器でマルチモニタ環境を作り上げるなんてワザも使えてしまう。

 以前のUSBは、キーボードやマウスといった、どちらかといえば遅い周辺機器を接続するためのインターフェイスだった。ところが、最大480Mbpsという高速データ転送を実現したUSB 2.0が主流となり、今ではDVDやCDはもちろん、ハードディスクなどのストレージデバイスまで接続できるようになっている。インターフェイスの性能から言えば、モニタ出力に利用されてもおかしくはないだろう。しかし、このアイディアを手軽に使える形で製品化したばかりか、十分以上のパフォーマンスを引き出したという点には恐れ入りましたというしかない。


関連情報

URL
  製品情報
  http://www.telegnosis.jp/usb_vga/usb2vga.html
  海連
  http://www.telegnosis.jp/


(斉藤成樹)
2004/07/14 11:02
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