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【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
楽天三木谷氏「フュージョン買収でオフラインへ楽天経済圏を拡大」

 楽天、東京電力、フュージョン・コミュニケーションズの3社は19日、楽天のフュージョン買収に関する共同記者会見を開催した。会見には楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏らが出席し、フュージョン買収の目的や今後の展開を説明した。


音声サービスでネット外コミュニケーションを楽天に取り込む

東京電力取締役社長の勝俣恒久氏(左)と楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏(右)
 三木谷氏は初めに楽天グループの経緯を説明。「ショッピングモールからスタートした楽天は、ポータルサイトや旅行予約、オンライン証券など業務を拡大してきたが、それらのコンセプトは楽天会員ベースだった」とコメント。今回のフュージョン買収に関しては「IP電話中心の通信事業ということで、今までの会員ベースのビジネスとは少し意味合いが違う」と語った。

 IP電話を中心とした電話起業をグループ傘下とした目的は、インターネットを利用しないオフラインユーザーの取り込み。これまでも楽天では楽天カードやポイント施策など、ネット外の経済を積極的に取り込む施策を進めており、三木谷氏は今回のフュージョン買収もその一環であると説明。先日発表した楽天メッセンジャーと合わせ、「ネット外のコミュニケーションを楽天に取り込んでいく」とした。


 三木谷氏は「Skypeや楽天メッセンジャーのようなサービスの登場で、これからはWeb上からも音声コミュニケーションが図れる時代になる」とコメント。「メッセンジャーやメールはオンラインユーザー同士のコミュニケーションだが、フュージョンを活用すればオンラインとオフラインのコミュニケーションを実現し、楽天を規模拡大できる」とのメリットを説明した。


インターネット外の経済圏を楽天に取り込む フュージョン買収の目的

楽天会員へ050番号を付与。楽天メッセンジャーとの連携も

楽天メッセンジャーとともにネット外のコミュニケーションを取り込む
 具体的なサービス展開では、Webと音声を組み合わせた新サービスの提供を予定。楽天会員への050番号付与に加え、楽天メッセンジャーから電話網への接続サービスなどを予定しているという。

 また、フュージョンのグループ参加により、VoIP技術の強化も図る方針。三木谷氏は「現在は個人情報保護対策として、楽天の店舗にはクレジットカード情報を渡していない」との施策を説明した上で、「050番号を会員に付与すれば、実際の電話番号を知らせずにショッピングできる」とセキュリティ面でもメリットがあると説明。さらに「常に050番号を会員に与えることで、携帯電話と050番号のの融合も図れるのではないか」との考えを示した。

 音声サービスによってネットを利用しないオフラインユーザーも楽天経済圏を広げていくと同時に、現在約3,700万人の楽天会員をフュージョンに誘導することで、フュージョンの加入者促進も図っていく。三木谷氏は「これまでもポイントプログラムや証券事業などで、楽天会員の誘導により大きな成果を上げてきた。楽天証券では新規会員の70%が楽天会員」とコメント。楽天のオペレーション力もフュージョンの収益向上に貢献できるとした。

 音声サービスによるマーケティング展開にも期待しているという。三木谷氏は「インターネット広告は単なるバナーだった時代から、会員獲得型やアフィリエイトなど、めまぐるしく成長している」とコメント。その中で三木谷氏が注目しているのが、着信課金型広告の「Pay Per Callだという。三木谷氏は「「高額な商品やサービスはどうしても音声での説明が必要。そういう場合には電話で対応し、1件あたりの収入をいただくというサービスが可能になる」と、新たなビジネスへの期待を示した。

 電話事業の買収により、通信事業を本格展開するのかという質問には、「VoIPはメールやWebに近い存在であり、我々は楽天会員をベースに既存のIPネットワーク上でサービスを拡大していく」と説明。「ソフトバンクのように大きなインフラを自前で構築する、という思想は無い」とした。


楽天メッセンジャーとフュージョンのサービスを融合 Pay Per Callモデルも導入

楽天グループ3,700万会員をフュージョンへ誘導 楽天証券の新規顧客は70%以上が楽天会員

フュージョンの楽天グループ入りは「チャンスと考えている」

フュージョン・コミュニケーションズ代表取締役社長の大島悦郎氏

楽天取締役常務執行役員CMOの島田享氏
 東京電力 取締役社長の勝俣恒久氏は、「フュージョンはIP電話の先駆者であり、現在約230万の回線サービスを提供している」とコメント。今回の売却に関しては「競争の激しい通信事業の中で他社とのアライアンスも含めて検討した結果、総合インターネットサービスを提供し、3,700万会員を抱える楽天に譲渡することで事業の強化が図られる」とコメント。「これまでのフュージョンの技術力を最大限に活用し、引き続き良好なサービスが提供されることを期待している」と語った。


 フュージョンの売却は、2005年に発表されたKDDIとパワードコム合併の際にも話が上がっていたが、実際にはKDDIがフュージョンを東京電力に売却したのち、今回楽天が買収する流れとなった。勝俣氏は「KDDIとフュージョンは重複する設備が多くシナジー効果で出ない」との背景を説明した上で、「まずはFTTHのインフラ統合から先に話を進めていった結果、フュージョン売却までに時間がかかった」と説明した。


 フュージョン・コミュニケーションズ代表取締役社長の大島悦郎氏は、「今回の楽天グループ入りは社員一同チャンスだと考えている」とコメント。「我々はIP電話の技術に自信を持っている。この技術を生かして楽天の各種サービスを豊かなものにしていきたい」との意気込みを示した。また、NTTグループでIP電話の障害が相次いでいる件については「我々はIP電話事業の先駆者であり、サービスを安定して提供できている」とコメント。「信頼性にも自信があり、そうした障害の問題は無いと考えている」とした。


関連情報

URL
  ニュースリリース
  http://www.rakuten.co.jp/info/release/2007/0619.html

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(甲斐祐樹)
2007/06/19 19:55
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