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グリー社長の田中良和氏に聞く「株式会社化の目的と今後の展望」

 個人運営ながら10万以上のユーザーを獲得している日本国内のソーシャルネットワークサービス(SNS)大手の「GREE」が、開発者の田中良和氏を代表取締役とした株式会社化を発表した。株式会社化によるGREEの今後の展開を田中氏に伺った。





株式会社化はより良いサービスを提供するための土台作り

グリー代表取締役の田中良和氏
――はじめに、株式会社化の目的を教えてください。

田中氏:(現在は個人で運営しているGREEも)ユーザーの規模が大きくなり、対応に必要な時間も増え始めていたので、楽天で仕事をしながら個人で運営、というのが難しくなっていました。また、これだけ規模が大きくなってくると、個人運営だからといって「明日出張で対応できません」とか「疲れたからGREEやめます」というわけにはいかなくなる。そういった問題を解決するためには、会社組織という土台を作らなければ、と考えて行動に移しました。

 より良いものを作ろうと思ったら、会社という母体がなければ話が始まらない。今回の会社設立は、社会人になって会社に行く前にスーツを買うとか、そういうレベルです。まだ準備段階ですが、大きな準備の1つだと思います。

――GREE Night 2.0でベータ版へ移行という話がありましたが、新機能の予定は?

田中氏:本来ならすぐにでもベータ版に移行したかったのですが、会社設立の準備が忙しくて新機能などを追加できない状態が続いていました。やっと体制が整ってくるので、(会社を設立する)12月からはいろいろな機能を追加していきたいと思っています。

 ユーザーからはモバイル版を作って欲しいという要望があるので、それは早い時期に対応したいですね。ユーザーから意見をいただくと「よし、作ろう!」という気になります。掲示板やメールで要望をいただければ、対応していきたいと思います。

――ユーザー数ではmixiが大きく伸びていますが、田中さんから見て思うところはありますか。

田中氏:僕も普通の人間なので、伸びているのを見ると「うらやましいなぁ」とは思いますが、、ユーザー数だけを考えていても仕方がなくて、自分が何をしたいのか、一番ユーザーに便利なものは何か、を考えて進めることが大事だと思いっています。ただし、ユーザーが少なくてもいいとは思っていません。良いサービスを作ったら1人でも多くの人に使ってもらいたいとは思いますし、その点ではユーザーを増やしていきたいと思います。

――SNS内の日記のようなコミュニティ機能をGREEで実装する予定はありますか。

田中氏:そういった機能も考えてはいます。ただ、僕が手がけていた楽天広場の経験から言うと、「広場中毒」という言葉があって、朝起きたら楽天広場を見て、寝る前にも見て、また朝起きたら見て、というように楽天広場に夢中になるユーザーがいっぱいいました。

 中毒になるくらい楽しんでくれるのもいいんだけど、それだけでは駄目なのかなとも思います。せっかくソーシャルネットワークという友達を増やしていくサービスなのだから、インターネットの世界だけに埋没してしまわないようにうまく設計して、意味のあるSNSが作れないかなと考えています。





「SNSだからといってすべての情報を隠す必要はない」

GREE
――現在、GREEではコミュニティや掲示板などの情報がユーザー以外からも閲覧できるようになっていますが、この点はどのようなお考えでしょうか。

田中氏:非公開にしているグループや、その人の名前、誰が友達かといった情報は(ユーザー以外には)隠す必要があると思いますが、ユーザーも増えてきていますし、何かが好きなコミュニティの一覧で、その中のコメントがニックネームだけであれば、そもそも隠す必要がないんじゃないかと思います。

――仕様の変更はいつ頃でしょうか。

田中氏:正直なところ、その頃は機能をどんどん拡充している最中なので時期などは覚えていないのですが、ある程度オープンにしたほうがいいという考え自体は当初から持っていました。

――自己登録ではありますが、現状では所属企業や学校などの情報もユーザー以外でも閲覧できます。この点はいかがでしょうか。

田中氏:単に世の中の標準と変わらないんだと思います。例えば僕の場合、「楽天のよっしーさん」というだけの情報だったら、同じニックネームが他にもあって誰のことかわからないし、そもそも本当によっしー(が田中良和である)かどうかもわからないですよね。

 インターネット上で、アルファベットなどでメーカー名を隠しながら「某大手メーカー『アルファベット』の後藤です」という情報があったとしたら、その情報だけで、どこのメーカーか簡単にわかってしまう場合もある。でも、その情報だけで後藤さんを見つけることは難しいし、そもそも本当に後藤という人なのかどうかもわからない。それと同じレベルだと思います。

 あとは中の情報をある程度公開することで、ユーザー以外でもサービスの内容を見てもらって興味を持ってもらえることもあるでしょう。見るだけで意味がある情報もあると思いますね。

 ただし、基本的には、情報を出すメリットも出さないメリットもありますので、個人個人で検討してもらった上で、ユーザーにGREEを使ってもらえればと思います。グリーとしてもどういうサービスの仕様やユーザの利用方法がもっとも良いのか、現段階ではまだまだ試行錯誤の状況ですが、僕個人としては、情報を出したほうがメリットのあるサービスを作っていきたいという考えですね。

 その際の情報の出し方については、株式会社としてサービスを提供することもありますし、4月から施行される個人情報保護法の内容も踏まえ、プライバシーポリシーの整備などを弁護士と相談しながら進めていきたいと思います。

――GREEが採用している招待制システムについてはどのようにお考えですか。

田中氏:招待制にこだわりがあるわけではないですが、今思っているのは、GREEは僕が個人で作ったサービスであって、GREEのユーザー全員が何らかの形で僕の知り合いであるということ。せっかく1人で始めたサービスなので、その点は面白いから残しておきたいなとは思います。

 あと、1人で入ってもつまらないというのもありますね。友達がいっぱいいるから入って面白いので、新しく入ったのはいいけれど友達がいなくてつまらないから終わりになっちゃう、というのはもったいないですから。





SNSというプラットフォームの上で、対ユーザーのサービスを展開

――株式会社化による収益の目標はありますか。

田中氏:具体的な数値などはないですが、(今現在は赤字であるけれども)無限に赤字でいいというわけにはいかないので、何かしら収益を上げる必要はありますね。会社という組織になって、GREEに関わる人が増えていけば対価を支払わなければいけないのですから、売上を増やさなければならない。ただ、それは個人でやっていても会社でやっていても同じ問題だと思います。

――楽天が資本に参加している理由は。

田中氏:理由は複合的なものですが、僕は、楽天には約5年ほど務めていて、退職して起業するにあたり、いろいろな話し合いの経緯をふまえてこういう形になりました。また、GREEを株式会社化したことで、今後は何らかの意味でECといったビジネスを絡ませていって収益化するという考えもあるでしょう。そういった意味では僕としても提携していきたいですね。

――グリー株式会社としての今後の展開についてお聞かせください。

田中氏:SNSにとらわれるつもりはありません。元々は楽天でアフィリエイトやブログなど、対ユーザー向けのサービスを手がけてきたので、そういったユーザー向けのサービスを自分で作っていきたいと思っています。GREEというSNSをプラットフォームとして利用して、GREEの上で新たなサービスを展開していく感じですね。

 僕が所属していた楽天も、最初は楽天市場だけだったのが今では証券も手がけている。はてなも、人力検索から始まって今ではブログやアンテナなどいろいろなサービスがある。それと同じように、1つのサービスの中で、いろいろな意味あるものを提供していけばいいのかな、と感じています。

 もともとGREEを始めたのは、米国の「Friendster」を見て「面白い」と思ったことがきっかけですが、だからといってFriendsterと同じものを作ろうと思ったわけではありません。Friendsterというサービスと、その当時自分が問題意識として抱えていたことが合致したからこそなんです。

 その当時考えていたのは、「誰と」「何を」するのかということが重要だということ。そのための「誰と」をSNSで提供して、その先の「何を」という部分もSNSの次の部分で実現できれば、世の中に対して意味のあるサービスが作れるだろうということからGREEが始まっているので、その点は追求したいですね。

――本日はありがとうございました。


関連情報

URL
  GREE
  http://www.gree.jp/

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(甲斐祐樹)
2004/12/09 11:29
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