■やっぱりもうダメかしら
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どんなにがんばってもダメじゃん!! 努力しても意味ないじゃん!! と担当編集者ともどもアキラメの色に染まりつつあった拙者だが |
これまでの数カ月、ADSLについてアレコレ試してきたが、ユーザーとしてやれることはほとんどヤッちまった。いろいろやった結果、俺のフレッツADSL(1.5Mサービス)のスループットは平均してだいたい630~650kbps程度。
より高いスループット値を!! と気合を入れ、ADSLモデムのフォールバックによる速度低下の解消、MTUやRWINの調整、ケーブルの交換、ノイズフィルタ類の使用、ADSL高速化ソフトの使用など、やれそーなコトはほとんど試したのだが、結果、フレッツADSL導入当初とそーんなに変わらない630~650kbps程度のスループット値である。
まあ、激遅ってわけじゃないので、実際の使用上はさほど差し支えないと言えば、ないのだ。だが、「遅くないからこれでいいや」ってのは、どちらかと言えば現状で納得するための“自分への言い訳”であり、ホントはあと10kbpsでもスループット値が上がるのを望んでいる筆者であり拙者でありまろであり俺。
だけれどしかし、一向にスピードアップしない、意固地なほど変化のない俺のADSL環境に対し、正直なところ、少々辟易している。どんなにがんばってもダメじゃん!! 努力しても意味ないじゃん!! やってらんねーよ!! 海に向かって馬鹿野郎とか叫びてーよ!! ついでにこの連載も終わりだ終わり!! 終了!! と、マジで思い、担当編集者と「もう何やってもダメそーなのでいったん打ち切りましょうか!?」みたいな話まで出た。
ところが、話し合いっつーのはしてみるもので、話し合ううちに、ポロッとひとつ、スループット値向上につながるかもしれない案が出てきた。そして、あぁそうだソレも試してみる価値アリかも!? と、本連載の終了は先送りされた。
■最新のADSLモデムを使うとイイかも
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NEC Aterm DIRECTSTARΔシリーズ「Aterm DR35FH/CE」パッケージ。NECのAtermはGlobeSpanのチップを使った型番の最後が「/GS」のものと、Centilliumのチップ採用の「/CE」のものがある。フレッツ・ADSLやイー・アクセス利用者にはCE版が、アッカ利用者にはGS版がお勧め |
その案とは、最新のADSLモデムを使ってみるということだ。
ご存じのように、日本のADSLサービスは、始まってからまだあまり時間が経っていない。また、ADSLユーザーが激増している最中であり、回線やモデムや周辺ノウハウも、増えつつこなれつつ向上しつつある、いわば過渡期でもある。
そんな状況の中、毎週のように新しいADSLモデムが登場している。新しい製品なので、使い勝手が良くなっているなどの成熟はもちろんあるし、同時に、ADSLモデムの肝心要の心臓部であるモデムチップもより洗練・高性能化しているに違いないであろー、と。最新のモデムチップが載ったADSLモデムなら、もしかしたらスループット値も上がるかもよ!? てなわけだ。
ADSLモデムチップに関して全然詳しくねー拙者なので、最新のADSLモデムに関して「高性能化してるに違いないであろー」とか「スループット値上がるかも」など、自信が持てなかったりする心意気は我ながらヘボい。のだが、しかし、天はヘボい拙者にちょっとだけ味方してくれたようで、まず、読者様よりちょいといいお話をいただいた。
スタパバンド読者の鹿川さんからの情報によれば、フレッツADSL(1.5M)ユーザーの場合、1.5Mプランのみに対応した古いモデムを、フレッツの1.5Mプランにも8Mプランにも対応した新しいモデム――例えばADSLモデムMSやADSLモデムMNに換えると、スループット値が意外なほど向上する(ケースがある)らしい。ちなみに、鹿川さん、この方法でスループット値が何と650kbpsから930kbpsに急上昇したとか!!
むむぅ~これは“最新ADSLモデム使うとイイかも説”の生き証人登場ってことで、俺の脳内温度がちょいと上がる。試す価値アリと言わざるを得ないっていうか試してみたい!!
急にやる気が出てきた俺に、もうひとつ心強いメッセージが。ケータイWatchの携帯電話系筆者としておなじみでありかつ通信モノ全般にメチャ強い法林氏曰く、「ADSLモデムを換えると性能向上が見込めるよ。スタパさんが導入された当時はまだ、(AnnexC規格の場合は)チップやファームが枯れてないから、最新製品に変えたら良くなると思うのでやってみたらどうか」とのこと。
そうなのか!! ADSLモデム交換なのかやはり!! 交換推奨をする人物がふたりも登場したとなれば、これはヤルでしょ!! てなわけで、最新のADSLモデムを使ってみることに。
■NECのAterm DR35FH/CE
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Aterm DR35FH/CE本体。写真は縦置きだが横置きも可能。オープンプライスで、店頭価格は2万3800円程度。LANポートを4つ備える。LANポート1つの「Aterm DR30FH/CE」もあり、実売は1万9800円程度 |
ADSLモデムに使われている(主流の)モデムチップは2種類あり、ひとつはCentillium社製のチップ、もうひとつはGlobeSpan社製のチップになる。前者はCEチップとか呼ばれ、後者はGSチップとか呼ばれたりしている。
で、ADSLサービス提供事業者から販売ないしレンタルされているADSLモデムを使わず、いわゆるサードパーティが出しているADSLモデムを選ぶ際、知っとくべきは、ADSLサービス提供事業者が(電話局側)に設置しているADSLモデムのチップの種類だ。
例えば、NTTフレッツやeAccessではCEチップのADSLモデムを採用していて、ACCAなどではGSチップを採用している、ということ。CEチップ採用のフレッツADSLのユーザーが、GSチップ搭載のADSLモデムを使って接続すると、接続できないってこともないらしいが、モデムとモデムの相性が悪くてトラブったりするらしい。
てなわけで、フレッツADSLユーザーの俺が最新のADSLモデムを選ぶとなると、Centillium社製のチップを搭載したADSLモデムっつーことになる。そして「法林さん法林さんどのあたりのADSLモデムがいいですか~」的に御指南願って挙がったのが、NECのDIRECT STARΔ、Aterm DR35FH/CEであった。
Aterm DR35FH/CEは、型番後半の“CE”が示すとおり、Centillium社製のモデムチップを搭載した、ITU-T勧告のG.992.1(G.dmt)およびG.992.2(G.lite)のAnnexCまでに対応したADSLモデム内蔵ルータだ。ていうかつまり要するに、フレッツADSLの1.5Mタイプに(もたぶん8Mタイプにも)対応した、いわゆるブロードバンドルータってヤツだ。コレがあれば、複数台のパソコンをルータ経由でフレッツADSLに接続できちまうゼってわけである。
ちなみに、DIRECT STARΔ(←サンカクじゃなくてデルタだヨ!!)は、この他にも3種類あって、合計4つのモデルがある。搭載チップ別に、GlobeSpan社製チップ搭載機種が2モデル、Centillium社製チップ搭載機種が2モデル。それぞれの2モデルは、LANポートが10BASE-Tが1ポートだけのものと、100BASE-TX/10BASE-Tの4ポートのスイッチングHUBとなっているものがある。俺が使おうとしているAterm DR35FH/CEは、Centillium社製のモデムチップを搭載=フレッツADSL向けで、100BASE-TXまでのLANポートを4つ装備=複数台パソコンを同時にADSL回線に接続する人向け、という製品だ。
■スゴっ!! 思わず声が出ましたヨ!!
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連載始まって以来の快挙!! なんと一気に100kbps以上のアップ! |
Aterm DR35FH/CEを試した結果をダイレクトに書けば、自室でひとりで最初のスループット計測をした時、思わず「すげぇッ!!」と声を上げてしまったほど、大いに効果があった。
それまでNTT東日本からのレンタルで使っていた1.5Mタイプ専用のADSLモデムで、ここ半月ほど620kbpsから630kbps程度だったスループットが、ADSLモデムをAterm DR35FH/CEに換えただけなのに、ななな何と770kpbsを上回ったのだ!!
630kbps→770kbps!! くわわわわわわわわッ!! くわッ!! くわーッ!! あうあうあうあう(大動揺)!! 140kbpsのスループット値上昇!! 凄いぜ凄いぜ凄くて死ぬぜーッ!! マジかよ!! ホントにかよ!! 素晴らしいよAterm DR35FH/CE!! ブラボーAterm DR35FH/CE!! ハラショーAterm DR35FH/CE!! 好き好きAterm DR35FH/CE!! チュっ>Aterm DR35FH/CE!! ああッ借り物のADSLモデムに思わずキスマーク付けちまったゼ!!
まじめな話、ADSLモデムを換えただけでスループット値が1.22倍に上がったのだ。22%アップなのだ。ノイズ対策やOSのチューンナップなど一切せず、つまり何ら環境を変えることなく、単にADSLモデムを交換しただけで、これほどの効果があるとは驚いた。
効果があったと同時に、なんか凄くやる気が出てきた。というのも、何を隠そう、この140kbpsのスループット値上昇の気持ちよさである。こないだまで630kbpsとかで頭打ちなんだろーなぁと思いつつ抱いていた、ほぼゼロに近い希望が、Aterm DR35FH/CEによって劇的に増幅された感じ!! まだ何か方法があるに違いない!! と勇気づけられたりなんかした拙者ッ!! よっしゃぁヤルぜヤルぜハードにスループット値向上に取り組んでいきたい!! とヒジョーに元気づけられたのである。もしかしたら、前述の鹿川さん(ADSLモデム交換でスループット値が650kbpsから930kbpsに上がった方)のように、さらなる変化があるのかもしれないッ!! と。
ちなみに、この140kbps程度のスループット値向上だが、体感的にも実感のある速度向上だ。630kbps程度でもさほどストレスを感じていなかったものの、770kbpsだとさらにストレスがなくなる。パッ、パッ、パッと開いていたページが、パッパッパッと開くような、ちょっとした差があって嬉しい。
また、これまで使っていたNTT東日本お仕着せのADSLモデムを、Aterm DR35FH/CEに換えたことで、いくつかラクになったことやオモシロくなったこともある。例えば、ADSL回線に対してADSLモデムを再接続――フォールバックによって低下したスループット値なんかを高めるための操作を行なうとき、Aterm DR35FH/CEだと、全ての操作をウェブブラウザ上から効率よく行えるのだ。ADSLモデムのリブート、ADSL回線への再接続、それから、そういった時にぜひ見たいし知りたいADSL回線への接続状況がキッチリと数値として見られる。
実際のところ、俺の環境の場合、ADSLモデムのリブートやADSL回線への再接続は、朝4時から7時前あたりに行うと、スループットが好ましい値を示しがちだ。が、時には、リブートや再接続によって、スループット値が下がってしまうこともある。何度かリブートや再接続を行ない、良さそうなスループット値が出るまで試すような手間もかかっていた。
しかし、Aterm DR35FH/CEの場合、ADSL接続状態として(ウェブブラウザ上から)接続速度やノイズ状況をこのような数値で確認できる。
Payload ADSL Line rate(Down) | :928(kbps) |
Payload ADSL Line rate(Up) | :512(kbps) |
Current Attenuation | : 35(dB) |
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上の2行が直接スループット値になるわけではないが、特にいちばん上の1行のレートを見ていれば、好ましい状態でADSL回線に接続されたか否かがよくわかる。この数値が高ければ、スループット値も高まるからだ。同時に、いちばん下の行を見ていれば、ADSL回線を通る信号の減衰率が掴めたりする。ノイズや他回線との干渉がどのくらい起きているのかがわかるのだ。
ともあれ、最新のADSLモデムは、なるほど最新のモデムチップを搭載しているゆえにスループット値的にすげー有利なのであり、より委細にわたった操作・使用ができたりして、マジでイイ!! と思う拙者なのであった。てなわけで、Aterm DR35FH/CEにより再度熱い希望を持てた俺のこの連載記事は、恐らく、今後も、けっこー続くような気がする。
□Aterm DIRECTSTARΔシリーズ「DR35FH/CE」製品情報(NEC)
http://aterm.cplaza.ne.jp/product/directstar/dr30h_dr35fh.html
□スタパ齋藤常時出演中!!「スタパトロニクスTV」(impress TV)
(2002/03/26)
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