■通信速度と買い物の関係
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通信速度の向上と反比例して秋葉原買い物頻度が下がり、同時にネット通販利用率が激増していることにふと気がついた
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インターネットへの接続環境について考え、少々以前のことまで思い返すと、ふと思い当たることがある。それは、俺が秋葉原へ行く頻度と通信速度の奇妙な反比例関係であると同時に、クレジットカード利用率と通信速度の比例関係でもある。
俺の記憶が正しければ、っていうか正しいことのほうが少ない俺の記憶だが、ちょいとそれを遡ってみたい。
1999年頃は、確か、NTTのINSテレホーダイサービスを使っていた。夜23時から翌朝8時までなら特定の電話番号への通話が定額で行なえるというサービスだ。通信速度はISDNの1Bで64kbps。プロバイダーによってはISDNの2Bで接続できるので128kbpsとなる。
2000年になると、フレッツISDNサービスを使い始めた。これはISDN回線を使った常時接続サービスで、毎月定額で好きなだけネットに繋ぎまくれるというサービスだ。この通信速度もISDNの1Bで64kbps。
INSテレホーダイの時もフレッツISDNの時も、スループット値というのを測った記憶がない。その頃は「より高速で通信したい」という速度的欲望よりも「より安く気楽に通信したい」という通信料金的欲望の方が圧倒的に強かった。DSLとかFTTHなんて話も聞いたが、それは俺にとって別世界での話であった。俺におけるネット接続のテーマは、“いかに安くネットを使うか”という時期だった。
2001年には、フレッツADSLの1.5Mサービスを使い始め、スループット値は平均すると680kbps程度という感じか。最新のチップを搭載したADSLモデムを使って最高785kbpsまで上がったが、さておきISDN時代と比べるとヤケクソなほど超っ速の通信環境を得たことになる。
2002年の春には、フレッツADSLの8Mサービスを使用開始。スループット値は一気に2Mbpsまで上がった。ただ今現在はどーゆーわけか少々落ち気味で1.95Mbps程度だったり、1.87Mbps程度まで下がったり、時々2Mbpsに戻ったりとやや不安定なスループット値となっているが、まあ2Mbps近く出ているという感じ。
まとめると、1999年と2000年あたりは64kbps(実際のスループット値はこの数値よりも低いと思われる)、2001年は680kbpsくらい、2002年は2Mbpsすなわち2000kbpsくらいの、通信速度となっている。
で、我ながら興味深いことに、1999年から2002年までに秋葉原へ買い物に行なった回数や、この期間内のクレジットカードの利用金額などを見ると、通信速度の向上と反比例して秋葉原買い物頻度が下がり、クレジットカード利用金額は通信速度と比例して上がり、ついでに銀行の窓口やATMで現金を引き出す回数も、通信速度と反比例して減っている。
なぜかと言えば、通信環境や通信速度の向上とあわせて、俺のネット通販利用率がどんどん上がっているからだ。1999年頃はたまに秋葉原に出かけて必要なハードウェア等を買い込んだりしたが、2000年以降は一度も行っていない。そのかわりに近くの大型電気店に行くようになったものの、2001年以降は近くの店にもほとんど行かなくなってしまった。たいてーのハードウェア等をネット通販で買えるようになったからだ。てなわけで最近はマジでホントに始終、ネット通販しまくりの拙者である。
■こなれ感が高まったネット通販サイト
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ネット通販が始まったばかりの頃に比べ、品揃えも便利さもぐっと向上!
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3~4年前と比べると、現在のネット通販サイトは非常にスゲぇスゲくスゴまってきていまくりやがりなさっちまっている。すなわち3~4年前の使えねー通販サイトと比べると、現在の通販サイトの多くが、問題なく快適に便利に楽しく使えるようになった。
一昔前の通販サイトってやつぁ、まるでダメと言えるショップが多く、例えば品揃えなんかも全然まるで大したことなどなかった。インターネットNO.1の携帯電話グッズ専門店です!! とか謳ってるサイトを見ても、何だよマジかよイヤホンマイク5種類とストラップ5種類と携帯電話ケース5種類だけかよ!! しかも5種類中3種類が売り切れかよ!! そしてラオックスの1.2倍の価格かよ!! さらにはいかにも売れ残りそうな品ばっかりかよ!! みたいな。
販売方式も完全なるダメさ加減を発揮していた。例えばサイトの中に注文フォームページがあり、そこに注文したい品を書き込む。まあそのあたりのローテクさ不便さはギリギリよしとして、注文品の価格から消費税を計算して書き込み、それに送料を加えた代金を、客側が申請するというショップが少なくなかった。客に伝票まで書かせんのかよ!! と。
もちろん、そのよーなサイアクのショップばかりではなく、おなじみ“買い物かごシステム”を使った便利なショップもあったし、品揃えもまずまずのショップもあった。が、たいてーのショップは「コレって詐欺のカホリがするかも!?」てな雰囲気のシステムだったりして、しかも「詐欺にしては品物が魅力無さ過ぎですな」というヘボさだったりした。明らかに「商売の片手間にネットでも売っとくか」というスタンスが見え見えのショップが多かった。深読みすると「店で売れ残った商品をネットで売っちゃえ」という雰囲気すらあった。さらに「“今話題の”とか“激安”とか“超レア”とかテキトーに書いときゃどっかのイナカモンが買うだろ」という魂胆すら垣間見えた。
ところがここ数年でそんな雰囲気がどんどん変わり、しっかりと営業努力をしているネット通販サイトがビシバシと増えていった。同時にかつてのヘボショップは消え去るか心を入れ替えるかし、いい加減な商売をやるショップが激減した(けどまだ相変わらずありますな)。
例えば品揃え。専門店を名乗るショップの多くは、非常に多くの品を扱っている。物理的に店舗を構える、いわばリアルショップには置いてなさそーな需要薄の商品もしっかりある。具体的には……えーと例えばGoogleとかで“(アナタが欲しい商品名) 専門 価格 販売”てなキーワードで検索してみてくれ。きっとアナタ好みの専門店がババッと現れ、多くの本格的在庫豊富専門店を発見できるだろう。
そういう専門店では、品物の価格もなかなか良心的だ。恐らく店側が「客はもはや検索エンジンで最安値店を見つけまくりゆえテキトーな上乗せ価格じゃ売れねぇ」ってことを心得ているのだろう。実際、ネット通販では、各種検索エンジンを使うかショップのページを見比べるかすれば、価格の高い安いなんざぁ一発でわかるのだ。だから価格面で良心的にならざるを得ない。あるいは価格はフツーだがポイントサービス等で客側の有利を提供せざるを得ない。結局、理屈通り、実在の店舗を構えたり店員をたくさん雇ったりしなくて済む分、ネット通販サイトは品物を安く売っている……ところが多いのだが、でもまだ何をどう勘違いしているのか、とても高価でしょうがねえネット通販サイトがあるので用心したいところだ。
便利さも十分にある。クリックしていけば買い物を済ませられる買い物かごシステム等や、各種支払方法・配送方法に対応した販売など、手軽に買い物ができるサイトが多い。また、商品検索や商品説明、あるいは商品メーカーへのリンクなどもしっかり整えられ、ヘタな通販カタログよりもずっと便利かつ快適に使えるようになっている……けど不便かつ不快な通販サイトもあるので要注意と言える。
ともあれ、現在のネット通販サイトは、恐らく過当競争時代に突入しているのだと思う。店舗構えて什器置いて品物仕入れて店員雇って……てな出費で千万クラスのお金がかかるリアルショップを開くよりも、コマースサーバ借りてサイト作って(もらって)商品写真や説明文を入れればさぁ営業開始のバーチャルショップの方が、どう考えてもローリスク。うまくすればかなりのハイリターンも期待できる。これを支えるネットユーザーの数ってのも揃ってきた。
そして、お店として十分に成熟している通販サイトが多々あるインターネットを、お客として常時接続というスタイルで使えたりすると、これはやはりリアルショップに出向く頻度がヤケに低下するのである。あぁ居ながらにしてお買い物できて便利~、と。机上で注文した品物が明日か明後日に玄関に届いて楽勝~、と。ちょいと検索すれば最安値が見つかってお得~、と。……まあ実物を手に取れないという残念感や不安感はあるものの、既に買いたいモノが決まっているならば、ネット通販より優れたショップはナイんではなかろうか。
■ネット通販の罠
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2000円以上買えば送料無料だけど買うべきものが1600円だったりしたとき、あと400円買って送料300円を無料にしてもらうべきか、あるいはすっきり欲しいものだけ買うべきか……
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便利でナイスで快適なネット通販だが、注意すべき点もある。それは、ネット通販でカード使ったら二重引き落としされてギャヒーン(涙)とか、注文したのに一向に返事が来なくてムカついていたらナゼかスパムメールが多発してギャーン(焦)とか、届いた品物が全然違うモノだったので電話したら「お客様がおかけになった電話番号はただ今使われておりません……」であってズギャァーム(怒)とかいった、初歩的な罠ではない。
これらの罠は、ネット通販をする者として気合が入っていれば防げる。例えば、買う前に、ページ上に店舗所在地や連絡先が書かれているかどうかをチェックしたり、そのサイトに関する悪いウワサがないかどうかBBS等で調べたり、初注文なら問い合わせメール出したり電話かけたりして探りを入れてみたり、トラブル時の対応等についてサイト上に書かれているかどうかを調べたりと、ネット通販前の準備や調査をすればほとんど問題ナイと言える。
ここで言う罠とは、我々消費者の中にとってお得な罠!! 罠だと知っていてもなぜか掛かってみたくなる魅力的な罠!! 知ってはいるけどついつい陥っちまうちょっと嬉しかったりする罠なんだよ店長!! 多くの消費者が思わずフラリと引っ掛かっちまう罠なんだよ支店長!! そして客!! すなわち俺!! [購入]ボタンをポチ!! って原稿書いてるそばからまた罠にハマったのか俺!! たるんどる俺!! ネット通販なんかやめちまえこの常時物欲野郎!!
俺が相変わらずよく陥る罠として、送料に関するものがある。例えば、1600円の書籍を買おうと書籍系通販サイトを巡る。お、あったあった、ココにあったよ例の本。コイツを買うぜペチッ(←[購入]ボタン押下音)。さぁお会計お会計……ん? 2000円以上買うと送料無料か。あと500円か。ところで、無料じゃない場合の送料は……300円かそうか現在は合計1900円なのか。すなわち!! 1600円の本を買って1900円払うか、1600円の本と400円の本を買って2000円払うかの究極の選択なのだこれは!! むむむ!! む!! 確実に後者がお得!! だから400円の本を買っていきたい!!
えーと400円、400円、400円……ていうか値段で選ぶんじゃなくて必要と思える本を選んでいきたい!! えーとえーと、あ、そうだコレを前から読みたかったからコレにしていきたい……けどこっちの本もイイなぁ、あ、こっちも良さそうだなぁ……えーいどうせ送料無料でお得だから全部!! そして合計6400円!! などと、300円の送料をどうにか無料にしようと思っていたらいつの間にかずいぶんたくさん本買っちゃったヨ、と。
他にも、5000円以上お買い求めのお客様に倍の1000ポイント贈呈!! とか、色違いで2点ご購入のお客様にオリジナルバンダナプレゼント!! とか、予約購入された方にはもれなく限定ストラップを差し上げます!! とか、あぁ~あと300ポイントたまると予備バッテリーをタダで買えるなぁとか、知っちゃぁいるけどついつい惹かれる優待サービスという名の罠。こーゆーのに弱い拙者であり、読者の方の中にも罠に弱い人が少なくないと想像する。
■常時接続で罠に陥りまくり
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常時接続だと通販サイトをみていくら思い悩んでも通信料金は一律! 買うべきか買わざるべきか悩む時間がありまくり
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このような罠にかかるのは、我々のせいではない。我々を取り巻く状況のせいなのである。状況が状況だけに、掛からざるを得ない罠なのだと言える。これはネット通販サイトであろうがリアルショップであろうが同じだ。
例えばリアルショップの場合。1万円以上買うとコレ、2万円以上ならコレ、5万円以上ならななな何とコレをプレゼーンツ!! とかいうキャンペーンがよく行なわれている。釣り具ならば1万円以上買うとレアなルアーが貰えるとか、パソコン周辺機器なら2万円以上買うとアクティブスピーカー贈呈とか、コスメなら3万円以上でステキな化粧品ポーチプレゼントとか、そういう「お客様ァ~もっと金使えやぁコラ!!」という罠だ。
だが、誰もがその罠に掛かるわけではない。フツーは、1350円のルアーを買うだけであり、7800円のCFメモリカードを買うだけであり、ファンデーションと化粧水と口紅買って15000円なのである。
しかし、時として、1350円のルアーと1800円のプライヤーと300円のフックディスゴージャと1400円のラインとえーと他に必要なモノもうちょっとないかなぁ~おおあったコレだこのタックルボックス買ってよっしゃぁ1万円越えたッとかやる人がいる。CFカードの他にナゼかプリンターも買って一気に2万円オーバー達成だぜ~と満足する人がいる。どうせなくなっちゃうしアタシ的には定番の必需品だからこの際とか言ってファンデーションと化粧水と口紅を2本ずつ買うご婦人もいらっしゃる。で、プレゼント品をゲットするのだ。
そのような人物に向かって「ていうか買いすぎてねえ!? そのプレゼント品を単体で買ったほーが安くねえ!? どーなんよ」などと問いつめてはいけないのはもちろんとして、なぜ前述の人々がプレゼントゲットを目指して頑張って頭をひねって努力して散財しているのかと言えば、それは、時間があるからだ。店舗に居続ける余裕があるからだ。金がなくても金を使う正当な理由が見つかれば、我々は金を捻出する構造になっている。そして、時間は理由を作り出し、ついでに金も出しちゃうのである。
一方、忙しくて時間がなくて余裕がなければ「んーあのプレゼント欲しいけどあーもう時間ないや今回はいいやとりあえず必要なコレだけ買えばいいや」と割り切れるのだ。余分な金を出さずに安全に店を出られるのだ。惹かれた後ろ髪を自ら断ち切れる状態なのである。
これと同じことがネット通販にも言える。
接続環境が常時接続でない従量課金の通信ならば「んーあと400円買えば送料無料だ~んーんーんー」などと、商品リストを見て悶々と悩まずに済むのだ。なぜなら、悩み中も刻々と課金されており、悩めば悩むだけチャリンチャリンと1円玉を落とす感覚であり、すなわち時間の無駄が金の無駄に直結するからだ。悩めば悩むほど電話会社等が自動的に儲かる構造になっている。
必要なモノだけ買って速攻で接続を遮断して終了!! これが従量課金接続者におけるネット通販の常識であり、かつ、ネット通販の甘い罠に引っ掛からない利口な方法なのである。
だが、従量課金とは無縁の常時接続環境では、こうは行かない。つまり、悩む時間がありまくりだ。「んーあと400円買えば送料無料だんーんーんーんーんーんー」と悩んだ挙げ句さらに長時間「んーんーんーんーんー」と悩んでも、悩み中はタダなのだ。同時に、悩んでいる最中が買い物において最もエキサイティングな瞬間とも言えるわけで、タダで楽しめるからヒジョーに愉快なのである。そしてタダで悩み続けて楽しんでいるうちに多発して反射して増幅して脳内からこぼれだした物欲やお得感により、我々は[購入]ボタンや[精算]ボタンを押してしまうというシクミになっている。
ってまあこの話の約50%は冗談だが、残りの950%は本当のことである。ってオイ合計1000%かよズルいよ>俺。実はさらに残りの9万9000%は超本当なので正解は10万%でした。今後は“%”の意味を勉強してから原稿を書きたいと思います。
しかし、マジメな話、いわゆるブロードバンドは確かに便利で快適で好都合だ。他の接続環境と比べると、一般向けのADSL接続サービスは、コストパフォーマンスが非常に高く、実用性も十二分にある。が、時々、このよーなコストパフォーマンスが高い通信環境があるからムダなコトもやっちまってるなぁと実感したりする。
前述のネット通販の罠もそのひとつだし、あるいは、理由も目的もなくとりあえずウェブページを何となく閲覧したりような“ネット中毒的行為”もそうだ。あの情報が必要、あの手続きをやらなきゃ、と思った時にブロードバンド接続環境があればいいだけなのに、ブロードバンド接続環境があるから何かしたりしよーかなーとか思ってしまうのは、本末転倒であると同時にミョーな害をももたらしているかも、と思う。
そんなことを考えるのは、インターネットへの接続環境が変わりゆく過渡期に生きているからかもしれない。
□スタパ齋藤常時出演中!!「スタパトロニクスTV」(impress TV)
(2002/07/03)
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