■常時接続でオークション加熱
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常時接続でなければ出品物の確認だけでもそれなりに通信料金がかかってしまうオークション。常時接続で利用頻度がアップ!
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インターネットへ常時接続できるようになってから、大きく変わったコトってのはけっこーある。本連載バックナンバーの、『常時接続は健康的な通信サービス!! ~フレッツISDNからADSLへ・1~』や『全然イライラしないんです ~フレッツISDNからADSLへ・2~』でも書いたが、まずはコンピュータを使う時間帯や、使うときの気分が大きく変わる。コンピュータにインストールしたアプリケーションを起動する感覚で、いつでもネットを利用できることが俺というユーザーに大きな変化をもたらした。また、ちょいと前にも書いたが、良いことが悪いことか、ネット通販を存分に利用しまくれるというのもある。
そんな変化の中でも、特に目に見えて変わったのは、オークションの利用。すっげぇ積極的にオークションサイトを使うようになった。俺の場合、オークションではもっぱら買い専門で、手近な小間物からレアなアイテムまでいろいろ買っている。近頃では新品を安く売る業者方面からの出品もありまくりだし、以前と同様に奇品珍品実用品の出品も多いしで、探して見つからないモノはほとんどナイって感じ。物欲によりオークションに参加することも多いが、それ以上に“手近で手に入らないモノを手っ取り早く買う場”としてオークションサイトが役に立ちまくりである。
さておき、なんで常時接続にしてからオークションを活発に使うようになったのかと言えば、お察しのとおり、オークションってのはついつい長時間接続しちまうサービスだからだ。品物を吟味するために各出品のページを長時間閲覧する。新たな出品がないかと頻繁にページを開く。安心して購入するため、出品者の評価等をじっくり調べる。入札後は毎日のように品物や同カテゴリの他出品物を見てしまう。単に買おうとするだけでも、何度も何度もネットに接続してページを見たくなるわけだ。
接続ごとに、接続時間単位で通信料金がかかるダイヤルアップ接続だと、何を買おうか吟味するだけでお金がかかってしまう。フレッツISDNや各種ADSL接続などの常時接続サービスなら、最低限の出費で存分にじっくりとオークションを楽しめる、という単純な理由から、常時接続にしてからオークションを活発に利用するようになったのだ。
■オークションの有利不利
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Yahoo! オークション
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通信料金を気にせず、じっくりとオークションを眺めたり楽しんだりできるから常時接続がイイ、ってのは当たり前として、他にも“オークションするなら常時接続”と思う理由がある。ここからはオークションで購入する側の話になるが、常時接続だと入札・落札する時のメリットが多々ある。
それは前述のように、よーく調べてから入札できるので安全かつ万全な体制でモノを買えることもある。が、それ以上に、より確実にターゲットを落札できるという有利さが大きい。
ひとつは新着メールを常時チェックできるということ。メーラの設定で5分おき程度に新たなメールを読み出すようにしておくと、オークションでの入札を有利に進められる。
例えばヤフーオークションの場合(まあ他のオークションでも同様だが)、最高額にて入札中の出品(つまり自分に落札権がある品物)に、他の誰かがより高額の入札をすると、「他の人が商品に対してあなたよりも高値を付けました」というような高値更新通知メールが送られてくる。常時接続環境なら、つまり短時間の間に何度もメールをチェックできるような環境ならば、この重要なメッセージをいち早く受け取れるのだ。ぼーっとしていようが仕事していようが他のウェブページを見ていようが、メーラがライバルの出現をすぐに知らせてくれるから、その後速攻で対処できて有利だ。
ただ、高値更新通知メールの受信に関しては、常時接続環境でなければ具合が悪いってことでもない。例えば送られてきたメールを携帯電話に転送するようにしておけば、高値更新をほぼリアルタイムで知ることができる。しかし、金曜日や土曜日の夕方から深夜にかけてとか、あるいは携帯電話のキャリアによってとか、もしくは日本人全員が注目するイベントがある期間など、携帯電話へのメール転送がヤケクソに遅延することもあるので、多少は不都合の可能性があったりもするが。
物好きで強欲な俺は、実はモバイルでの入札も少々行なう。一応入札はしたものの、オークション終了時刻にはたぶん打ち合わせで移動中だなぁ、みたいな時にだ。モノにもよるが、オークション終了時刻間際には、クルマを停めてサブノートを開いてオークションの行方を眺めたりする。で、ここでも、携帯電話への高値更新通知メール転送は非常に便利だ。
例えば、オークション終了間際の5分間は、サブノートでオークションの成り行きを見るとする。が、さぁそろそろオークションが終わる頃だと思って終了5分前に接続すると、ややや!! いつの間にか最高額入札者が拙者じゃなくなってるヨ!! と。
さぁどうする俺!! あと4分30秒だぞ俺!! 自動延長はないぞ俺!! その“ペプシマン型貯金箱シルバータイプ(音が出ます)現在価格1600円”に、1700円で入札してみるのか!? あるいは一気に2000円とかにしてライバルを引き離すのか!? それともこんなくだらねーグッズには見切りを付けてサブノートを閉じるのか!? いやしかしこのブツは7日も前から目を付けていたシロモノ!! 銀色だよレアだよ初期型ってヤツだよ!! そう簡単には諦められ……ああっもうあと3分しか、ああっ3分切ったよ2分45秒くらいしかないぞどうするどうするどうする俺っ!! 汗!! どうしよう!! あうあうあうあう……といった状況は非常にヤバい。
刻々と迫る終了時間に焦り、俺の中では1500円くらいだろーと思われた“ペプシマン型貯金箱シルバータイプ(音が出ます)”に対して冷静な判断を下せなくなっているのだ。っていうかそんなモンに入札してクルマ停めてまでチェック入れてんじゃねーよ>俺、とも言えるがさておいて、この、突如のライバル出現で、俺はトチ狂った入札をしようとしている!! ていうかした!! よっしゃぁ2000円!! どーだ!! これで……ん? んむむ!? えー? この貯金箱って中古だしそんな価値ないかもーでも入札しちゃったぁバッカだなぁ俺。というヘボい結果を招くのだ。オークションにおける焦りってやつァ。幸い、ライバルのペプシマン熱は非常に熱く、最後の15秒にて2100円で落札したゆえ安心したっていうか残念っていうか微妙な気分であった。
携帯電話に高値更新通知メールを転送しておけば、終了間際5分とか2分でない限り、焦らずに冷静に落札の判断を付けられる。前述の例はモバイルの状況ゆえ話が少々複雑になっているが、家でオークションを楽しむにしても同様だ。オークション終了間際になって初めて高値更新を知るより、あらかじめ高値更新がわかっていた方が、やはりずっと冷静に物品の価値判断ができる。また、常時接続環境であれば、オークション終了間際に接続みたいなギリギリ感溢れることをせずとも、余裕を持って終了15分前からじっくりと冷静に成り行きを追っていける。
■常時接続であり高速回線である有利さ
オークションの楽しみ方は人それぞれだが、人気の集まるレア物品を落札しようとする参加者の入札パターンは、大雑把に分けて2種類だと思う。
ひとつは、出品者やライバルに挨拶するかのように、オークション終了よりずいぶん前に入札し、「ワタシはソレを狙ってまーす」てな意思表示をする入札者。もうひとつは、オークションの終盤、あと十数分から数分で終了って頃に、気合を入れてガシガシと高値を付けてくる入札者。だが、最終的に高値で競う入札者は数人となり、残り数分や数十秒のところで入札が繰り返されるので、結局は最後の最後、秒単位の入札合戦となる。
オークションにのめり込んだことのある人ならおわかりいただけると思うが、この“秒単位の入札合戦”は、ヒッジョーに熱い。詳細な残り時間を示すウィンドウを見ながら、入札履歴のウィンドウをリロードリロードまたリロード。もちろんマウスカーソルは[入札の確認]ボタンの真上であり、しっとりと汗を含んだ右手人差し指は今にもクリック動作をしてしまいそうだ。どうしても欲しい物品をいざ落札せんとするオークション野郎が、最も緊張する数十秒間なのである。
このような状況において、ダイヤルアップ接続は不利である。何と言ってもまず、心に迷いが生じる。その迷いによってオークションの熱い興奮から醒めがちである。つまり、いくらにするのかどのタイミングにするのか勝負に出るか出ないのか、という興奮があるその脇には「こーしてる間にも電話料金かかってんだよなー糞ったれ」というネガティブな要素がつきまとうのだ。
また、十分に高速な回線でないと、それなりのストレスがたまる。何しろ“秒単位の入札合戦”においては、ブラウザのリロードによる相手の出方チェックが必須なのである。と同時に、最終最後の入札=フォームの送信に時間がかれる分、余裕を持って入札しなければならなくなる。……まあ、ネットのトラフィックが重くなる時間帯のヤフーオークションなんかにおいてはヤフーのサーバがヒジョーに重くなったりするので、回線の速さ云々以前の問題ではある。が、やはり、こーゆー瞬間の勝負をするなら、常時接続回線でありかつ高速回線である方が有利だ。
■回線で有利不利が分かれるのって……
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インターネットが浸透し生活インフラとなりつつある現在、回線サービスが受けられるかどうかでいろいろな面で有利不利が出てくるのはいかがなものだろーか
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てなわけで、入札者としてオークションを存分に楽しみ、有利に進めるには、やはり常時接続でありかつ高速である回線がナイスと言える……のだが、これは少々どーかとも思う。
そう言えば、同様の疑問を、数年前にも感じた。
それはインターネットを使った通信対戦ゲームが流行り始めた頃で、確か1996年頃だと思う。インターネット経由なので、文字通りワールドワイドに通信対戦を行なえる。が、当時の日本には、そーんなに多くのプロバイダーはなく、インターネットユーザーもまだまだ少なかった。ぶっちゃけた話、米国をはじめとする外国よりもネット接続環境が悪かった。料金面、速度面、バックボーンの太さでも、海外のユーザーと通信対戦をするには不利だった――安くつなげられれば長時間ゲームができるので上達する、通信速度が速ければサーバからのデータを短時間で多量に受け取れるのでゲームの動作がより滑らか・即時的になる、バックボーンが十分太ければプロバイダにさほど依存せずに高いスループット値が得られるゆえやはりゲームをスムーズに動かせる、のだが、そーゆー環境ではなかった。
結果、特に工夫せずにネット対戦なんかすると、特に米国人プレイヤーに瞬殺されたものだ。サーバーが米国とかにあったもんだから、回線の距離においてまず米国人が有利なのだ。経由するサーバーの数が少ないゆえ、データ送受信の効率が良い。その分、ゲーム自体の反応が良いので、アクションゲーム系の通信対戦なんかだと特に有利だ。日本のプレイヤーは、日本から米国まで多数のサーバーを経由してゲームに参加するゆえ、ゲーム自体の反応が鈍くて不利。同時に、快適な環境で超低料金でネットを使える米国勢は、ゲームの鍛錬も効率的に行なえる。日本のプレイヤーがネット対戦ゲームで勝つためには、レスポンスの良いサーバーを提供するプロバイダを見つけ、なるたけ効率よくサーバを経由してゲームに参加する工夫をしなければならず、そのためにかなりのお金がかかったりもした。
最近の対戦ゲーム(特にアクション系)についてはどーなのかよく知らないが、要するに通信環境の違いで、有利不利が生まれていたのは確かだ。……これって、ヤフオクにおいて、常時接続かつ高速回線のユーザーの方が、ダイヤルアップユーザーよりも有利!! って話に近いものがある。
一部のユーザーだけに使われていた時代のインターネットなら、それでもあんまし問題ないと言えよう。しかし、現在は状況が大きく違う。就職するにはインターネットで情報収集、チケット取るときゃインターネット、ネットで予約販売、メールはビジネスに必須、てな調子で、インターネットはどんどん生活に欠かせないものとなりつつある。そんな状況で、回線状況によって有利不利が生まれちゃっていーのだろうか、と。
ネットゲームやヤフオクならまだ「いーじゃんしょーがないじゃん」と言えるかもしれないが、生活や仕事やあるいは政治に関わるよーな多くの事柄が、ネット上で行なわれるようになりつつある。でも、まだ、ADSL接続もCATV接続もましてやFTTH接続も提供されない地区が少なくない。使える回線から生まれてしまう格差が確実に出ている、と思う。テクノヘゲモニーっていうかネットヘゲモニーっていうか、そういう少々深刻な力の偏りが生まれているような気がしまくりなのだ。どうしたもんだろうか、このあたりの状況って。
□スタパ齋藤常時出演中!!「スタパトロニクスTV」(impress TV)
(2002/07/17)
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