■まだまだやるゼ!! スタパバンド実験放送
本連載の前回と前々回で、“スタパバンド実験放送”と称したストリーミング音声配信を行なってみた。ていうか今回もやっぱり懲りずに行なっちまうわけだが、さておき、今回で実験放送第3回目ということで、これまでの流れをまとめてみたい。
……の、前に、とりあえず第3回目の実験放送をお聞き頂けると話が早いかも。
![](/column/stapa/2003/04/30/staban3.jpg) |
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今回も、Watch編集2名と録音。音声編集の話から始まって、オンラインゲームの話などで盛り上がっております。ADSL普及以前にスタパ氏がオンラインゲームにチャレンジした話、哀愁漂う(?)Ultima Onlineユーザーの話など。ぶっちゃけ雑談ではありますがぜひご一聴を。
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■録音ってムツカシイかも~
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今回は前回と同じメンツでマイク3本を使用して録音。
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第1回目の実験放送(というか録音)で使った機材は、非常にお手軽なもの。マイクとしてaudio-technicaのAT-X11を使い、これをPCのサウンドカードすなわちSound Blaster Audigy Platinumのマイク端子に接続。で、PC上でDigiOnのDigiOn Sound 3というサウンド編集ソフトを使って録音・編集した。
録音は、周囲が静かになる真夜中、ひとりでマイクに向かって行なったので、まあまあ好ましい音質で録音できたと思う。また、録音後に自分で編集しているというかせざるを得ないので、編集しやすいように喋ったりもした。具体的には、喋るのに失敗したら即喋るのをやめて無音部分を作り、後で失敗部分をカットするのを容易にしたりする工夫等々が自分の思ったとおりにできた。ので、編集も不要部分の削除程度の処理で、手っ取り早く行なえた。
第2回目の実験放送では、ゲストをお迎えしたっていうかなんかひとりだと喋るコトないんでお相手をお招きした。本サイト等の編集長をつとめる工藤さんと、ケータイWatch編集部の湯野さん。てなわけで、複数人数のトークを録音したので、第1回目とは少々違う機材を使っている───マイクを変えたのだ。
第1回目で使ったマイク、audio-technicaのAT-X11は、ぶっちゃけた話、ひとりで喋るのを録音するのには向く。マイクの指向特性が単一指向性なので、マイクに向かって喋る声はよく収録できるが、マイクの向きから外れたところの音は非常に収録しにくい。なので、このマイクで複数人数での会話を録音しようとすると、工藤さんと湯野さんと拙者が3人仲良く隣り合わせで座って、かつ、喋る時は顔を寄せ合わねばならない。あるいは順番に喋り、喋る人にいちいちマイクを向けねばならない。このマイクじゃちょっと複数人数での録音はできませんな、と。
そんな理由から、第2回目の実験放送に使ったのが、audio-technicaのAT9750。机上にペタリと置いて使うバウンダリー式のマイクでホントは会議等録音用の製品だ。指向特性は全指向性で、つまり周囲の音を均等にみんな拾ってくれる。これなら何人で喋っても問題なく録音できるゼ!! と。ちなみに他の機材は第1回とおんなじ。
しかし現実は甘くなかった。AT9750は確かに3人の声をしっかり拾ってくれ、ちゃんと録音できた。のだが、3人の声量や声質の差から、会話全体が聞きにくい録音結果となってしまった。前回の本連載記事の後ろのほーにも書いたが、声質や声量や、あるいは喋っている人からマイクまでの距離が、録音後の“聞き取りやすさ”に大影響を与えまくりなのであった。
具体的には工藤さんの声はよく聞こえ、マイクから若干遠めの湯野さんの声は小さめになり、マイクにしっかり声を届かせるぜ~と意識していた拙者の声量はまあまあ十分だったものの声質的にちょいと聞き取りにくい。なので、録音後の編集時にDigiOn Sound 3のフィルタ機能等を使い、細かく地味に執拗に音質や音量の微調整を行ないまくった。
サウンドソフトを使ってのサウンド編集・加工は、最近のソフトは高機能&強力でありかつ最近のPCの処理性能も高いってことで、やっててけっこー愉快ではある。えっコレだけの処理で即座にこーんなに音質が変わっちゃうんだ~スゴい~お手軽~!! みたいに。しかし、何十分か録音した会話の細部を、なるべく聞き取りやすくなるべく自然に聞こえるようにと編集するのは比較的に激タイヘン。
不要部分の削除や音質調整等をしつつ、何度も何度も“神経を尖らせて同じ会話を聞く”ことになる。……するとですね、もうどんどんアラが見えるというか聞こえてくるわけですよ旦那さん!! 自分の声が次第にイヤになってくるんですよ奥さん!! ヘコむぜブラザー!! このサウンドファイルを削除したいぜアニキ!! ついでにサウンドソフトもアンインストール!! さらにパソコンも分解廃棄だコンチクショー!! そんな荒れた気持ちに。
しかし取り組まねばならない。このイマイチな録音結果を、どうにかして少しでも高品位にしていかなければならないのだ!! が!! 手元にある低品位なファイルは所詮低品位!! ピンボケ写真をレタッチしても、結局はゴマカシの“ピントが合ってるよーな気がしなくもない写真”にしかならないように、ソースサウンドがイマイチだといくら高機能なサウンドソフトを使っても高品位化には限界がある。しかもけっこー低い限界。
そして、反省しました。録音っちゅーモンは最初が肝心なのダと。その最初は、音を編集し始める段階でも、音を記録する段階でもない。マイクに音が入る瞬間なのダ!! と。そして手近にあったってだけの理由で目的違いのマイクを使ってお手軽に録音した拙者は、その最初の段階で既にコケてたんだよーん(泣)と!!
■マイクと音量を考えて
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今回、アナログミキサーのBEHRINGER EURORACK UB1202も導入。3本のマイクをミキサーにつなぎ、それぞれの話し声の音量を調整できるようにした
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第3回目の実験放送は、第2回目と同様、工藤さん&湯野さん&拙者の、3人による会話。第2回目で会議用マイクを使ったため、編集時にプチ地獄を見た俺は、今度は録音=サウンドソース生成の時点からなるべく高品位を目指すゼ!! と気合を入れ、新たな機材を導入してみた。
PCのサウンドカードとサウンド編集ソフトは以前と同じだが、マイクとその周辺機器を一新。使ったマイクはaudio-technicaのAT9820Xを2本と、audio-technicaのAT-X11を1本、の合計3本。喋る人ごとにマイクを用意した。またこのマイクをアナログミキサーのBEHRINGER EURORACK UB1202につなぎ、それぞれの話し声の音量を調整できるようにした。
ちなみに、AT9820Xを導入したのは何かカッチョイイ感じだったからだ!! あと音声収録にも向くって書いてあったからだ!! また、UB1202を選んだのは、安売りされていたからだ!! ええっ本日までなら1万円切る価格で販売!? くわッ!! それください今ください!! みたいな。通常は1万3000円前後のミキサーみたいっス。
さておき、3本のマイクから得られるそれぞれの音声を、ミキサーで調整すると、なるほど各人の声が以前よりも聞きやすくなった。第1回~第3回(今回)のサウンドは、本サイト上で公開する時点で加工されているので、よーく聞かないとその違いはイマヒトツよくわからないと思う。が、PCに録音した直後のソースサウンドに関しては、第3回目の音が最も良好であった。
実は第3回目はステレオ録音で、各人毎に定位───音が聞こえてくる方向=音による人の位置関係を設定してみた。工藤さんが左、湯野さんが中央、拙者が右、という位置関係だ。以前の録音時(会話はモノラル録音)の時よりも少々臨場感が増したと同時に、編集時にも会話の音質等の微調整を行ないやすくなった。
それらマイクを使って各人の声を確実に拾い、その音量をミキサーで整えてから、PCへステレオ録音。会話中、盛り上がったり盛り下がったり疲れたりすると、人それぞれ声の大きさが違ってきたりするので、これを編集時にちょっと調整したりもして。で、できあがったのが今回のもの、スタパバンド実験放送第3回なのだ。……手前味噌ですけど、前回や前々回の音より、ちょっと音質良くないですか?
■まだまだ残る問題
しかしまだ問題が残った。ていうか残りまくった。考えれば考えるほど問題だらけの実験結果だと言えよう。
会話内容などコンテンツの質に関しては、今後じっくり鍛錬と精進と愛と気合と念力で頑張るとして、録音や編集に関わる技術的な問題がたくさんある。
まずいちばんの問題はサウンドカード。現在の拙者環境ではステレオ録音しかできないという点、2トラックまでしか同時録音できないのがキツい。3人で喋っているのを録音するにあたっては、やはり同時に3トラックを使って録音したい───それぞれのトラックにそれぞれの人の声をしっかり分けて録りたいのだ。そうすると、録音時や編集時の音量調整等が非常にやりやすくなる。
今回の録音は前述のようにステレオ録音、同時に2トラックを使って録音した。2つしかないトラックに、3人の声をどうにか割り振るわけだが、苦肉の策とし、左右のトラックにひとりずつの声を録音し、残りのひとりの声は音像的には真ん中に位置するようにしてゴマカシている。トラックと音声は以下のような関係になる。まあステレオっぽくてHi-Fiなフィーリングだ。
左トラック=工藤ボイス全部+湯野ボイス半分
右トラック=拙者ボイス全部+湯野ボイス半分
また、聞こえてくる位置的には
[工藤ボイス]───[湯野ボイス]───[拙者ボイス]
上記のトラックおよび定位のままなら問題ないが、録音・編集環境および技術的に未熟なので、やはり録音後の音声微調整が必要になる。例えば工藤さんや拙者の声が小さ過ぎたり大きすぎたりする場合、その部分の音量を調整し、聞きやすくしたり、クリッピングノイズ(後述)が出ないようにしないといけない。
あ、この部分は音量(レベル)デカ過ぎ!! と思ったら、右トラックの音量を落とせば良い。逆に小さかったら音量を上げれば良い。のだが、今回の定位で単独トラックだけのレベル調整を行なうと、湯野さんの声の位置がズレてしまうのだ。例えば、拙者の声が小さい部分だけ、右トラック(拙者の声が入ったトラック)のレベルを上げると、トラックと声の関係が
左トラック=工藤ボイス全部+湯野ボイス半分
右トラック=拙者ボイス全部+湯野ボイス半分と少々
となって、定位としては、
[工藤ボイス]─────[湯野ボイス]─[拙者ボイス]
みたいになってしまう。こういう音量調整を細々行なうと、会話中に何だか湯野さんだけ左右に動いているよーな聞こえ方をしてしまい、イマイチよろしくないのである。
これが3トラックを使って録音できれば、各トラック毎にレベル調整等が行なえたうえ、各トラック毎に変わらない定位調整ができるので、ステレオ感はシッカリと安定する。そしてその状態で、声量の大小だけを自由に調整できるのだ。でも3トラック以上同時に録音しようとすると、ワンランク上の、ちょいと本格的なサウンドカードなりオーディオインターフェイスなりが必要で……、んむむ~。
■ノイズ問題も
それからノイズ問題もある。
ひとつは環境音がどーもやっぱり入っちゃうという問題。録音は拙宅の仕事場でやっているので、PCの排気音とか外を通るクルマの音なんかがビミョーに少しだけ入っている。シロート録音なので、まあ、コレは、しょーがないんですけどね。
もうひとつは恐らくサウンドカードから出ているよーな気がしてならないノイズ。実際はほとんど聞こえなくなっちゃうが、録音後に無音部分をじっくり聞くと、非常に小さいレベルでノイズが乗っている。特定のコネクタにマイクを接続して録音すると必ず乗るノイズなので、恐らくサウンドカードのどこかがパソコンちゃんのノイズを拾っている雰囲気。これはUSBオーディオインターフェイスを使うなどすれば克服できると思われる。っていうか次回はUSBオーディオインターフェイスを使って録音するゼ!! と思った。
それから、ノイズはノイズでも、クリッピングノイズをどうにかしたい。クリッピングノイズとは、例えばある程度デカい音を録音しちゃうと、部分的に「バリバリ」とか「ビビッ」てな感じで入る非常に耳障りなノイズで、デジタル録音特有のノイズだ。これをなくすためには、録音時のレベル調整を低めに行なうこと───大きな笑い声等がマイクに入った時でもトラックの録音レベルが0dBを超えないようにすることだ。
しかし、シロートがフツーに喋ってると、時々はテンション高くなったりして大声も出てしまう。収録中いつも同程度の声量で話すなんてのはプロの技であり我々には不可能。また拙者環境および機材の場合、なーんかマイクから拾える音がずいぶん小さめだったりするので、ついついミキサー上の録音レベルを上げてしまう。
まあクリッピングノイズを取り巻く細かな問題があるのだが、これを解決するための機材もある。例えばリミッターとかコンプレッサーなどのエフェクターだ。しかし、そーゆーハードウェアを導入するってのもなーんかこう……ちょっと大袈裟!?
ちなみに、第2回と第3回の実験放送では、ビシッとハードなクリッピングノイズが乗っていた。クリッピングノイズは、ホントは録音前に“それが出ないようなレベル設定にして予防”しておくべきだ。が、会話録音に現れるような断続的&一瞬のクリッピングノイズなら、編集時に加工することである程度ゴマカシちゃうこともできる。具体的にはサウンドソフト等でクリッピングノイズ部分のレベルを強引に下げたり、波形が滑らかになるように強制修正してしまう方法だ。俺の場合はDigiOn Sound 3のコンプレッサー処理でどうにかしている。
■なるほどそのテも!!
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経験者のみなさまのノウハウは非常に参考になるので、しょーがねーなあ教えてやろうか、という親切な方はぜひこちらへメールを! 感想もお待ちしております!!
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ところで、このスタパバンド実験放送をお聞きいただいた方から「なるほど」と思えるメッセージをいただいたので少々ご紹介したい。
まずは小倉様より。要約すると『3人程度の少人数収録ならばインカムとミキサーを利用し、録音前に音量調整を行なえば、収録後の音質等調整はほぼ不要と思われる。audio-technicaのポータブルマルチミキサーAT-PMX5Pや、同じくaudio-technicaのマルチメディアヘッドセットATC-H1COMを組み合わせて使うなどすべきだ』といった内容。
あ!! なるほどその手もありますな!! ヘッドセットを使えば口の真ん前にマイクが来るから、より安定した音量になる。また各人が付けたヘッドセットをミキサーにつなげば、録音時のレベル調整も非常にラクになる。クリッピングノイズ問題に関してはちょいとわからないが、個人宅での録音───周辺ノイズの低減にはかなりイケそうなヘッドセット&ミキサー作戦かも!!
もうひとかた、Karaken様より。要約すると『録音途中で入る「ビビビビ」というノイズは携帯電話のノイズと思われる。携帯電話からの電波は音声録音に影響するノイズとなるケースが多い。録音時は携帯電話の電源を切るべきだ。また、より低い音の「ブー」といったノイズは、機材や環境をさらに整えないと解消しにくいと思われる。しかし放送内容は面白かったと思われる。次回も楽しみにしている』といった感じ。
第2回目の録音で「ビビビ」なノイズが入ったのは、おっしゃるとおりケータイが原因でした。その後いろいろ試した結果、灯台もと暗しで、拙者のケータイがメール受信した瞬間にノイズが入っとりました。けど、マイクを変えたら、どうも携帯電話の電波の影響受けない製品らしく、その後は問題ナシとなった。でもまあ、やはり小さなノイズを克服していくには、機材や環境をアップグレードする必要があるかも。
ともあれ、メッセージありがとうございました!! ちなみに、このおふたかた、「不要と思われる」とか「使うなどすべきだ」といった口調(文体)の方ではないっていうか拙者が勝手に硬い口調に変換しちまいました。技術寄りメッセージってことでちょっとソレっぽく。てなわけで、実験放送に関して何かメッセージ等おありでしたらBroadBandWatch編集部までメールいただけると有り難いっス。なお、いただいたメッセージは記事中あるいは実験放送中でご紹介させていただく可能性があったりするのでその点もよろしくどうぞ!!
□スタパ齋藤常時出演中!!「スタパトロニクスTV」(impress TV)
(2003/04/30)
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