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【アルファブロガー・アワード2007】
デイリーポータルZ林氏講演「ネットは思いつきが力を持つ奇跡のツール」

アルファブロガー・アワード2007
 12月8日、個人ブロガーのコンテスト「アルファブロガー・アワード2007」の受賞イベントが東京都内で開催された。イベントではアルファブロガー受賞の結果発表に加え、「デイリーポータルZ」を運営するニフティの林雄司氏による講演が行なわれた。

 アルファブロガー運営委員会を務めるシックス・アパート コーポレートマーケティングディレクターの清田一郎氏は、「デイリーポータルZは日本でも1、2を争う人気のコンテンツサイトだが、その中身は極めて個人的なプロジェクト」とコメント。「コンテンツを個人で発信するという点で林さんはブロガーにとって大先輩で、ノウハウも失敗談もある。その一部をここで話してもらうことは、ブロガーにとっても価値のあることだろう」と紹介した。


ネットは個人の思いつきがうっかり影響力を持つ奇跡のツール

「デイリーポータルZ」を運営するニフティの林雄司氏
 林氏は1996年に駅のトイレの写真を掲載する「東京トイレマップ」を個人のWebサイトとして立ち上げ。同年5月には「Webやぎの目」、1999年には「低レベルの臨死体験を集めた」という「死ぬかと思った」を次々に個人で立ち上げたのち、2001年4月に@niftyで「デイリーポータルZ」を開設した。

 デイリーポータルZは、始めのうちこそ@niftyのコンテンツを紹介するサイトだったが、「オリジナルの読み物があったほうが人が集まる」という林氏の考えからオリジナル企画のコンテンツを拡充。今ではサイト構成もオリジナルコンテンツが主体で、コンテンツ紹介は画面下部に表示されるだけという「母屋を乗っ取った状態」だという。

 デイリーポータルZだけでなく、これまで林氏が個人で立ち上げたサイトに共通するのは、「企画書を書いたことがない思いつき」だということ。「企画書を書くほど面白いことを考えていないし、そもそも説明するのが恥ずかしい。ノーと言われると引き下がってしまう気の弱い10年間だった」と語った林氏は、デイリーポータルについても「20万円以上の予算だと稟議書が必要なので、18万円くらいの企画ばかり立てて、偉い人にきづかれないよう少しずつサイトを変えていった」との裏話を披露した。

 そうした思いつきで作った企画の例として「でかいタバコの箱」「風邪でお休みメールジェネレーター」「風呂でどこから洗う?」などを紹介。「かっこよくプレゼンして予算を取ることもあこがれるけれど、無理なものは無理」と語った上で、「企画書は無理でもとりあえずサンプルを作って見せることはできるし、すぐに反応もあって面白い」。怒られない場所を見つけて勝手にやるのが自分に向いている」との考えを示した。


個人で立ち上げた「東京トイレマップ」 「デイリーポータルZ」は当初コンテンツ紹介サイトだったのが今ではオリジナルコンテンツが中心に 「企画書を書かない」が共通点

大きさ比較として使われるタバコの箱を逆に大きくしてみるという企画。「人が小さく見えるかと思ったけど見えませんでした」 選択肢を選んでいくと風邪で休みを取りたいときのメールを作成できるジェネレータ 企画書は無くてもサンプルを作ればすぐに反応が返ってくる

失敗企画の一例。「Tシャツをズボンにしまったら何か出ているように見えるんじゃないか」
 これまでには失敗した企画も多く、「オリジナルTシャツを作ったら買いたいというメールを3通もらったので200枚作ったら、本当に3人しか買わなかった」という思い出を披露。「残りの197枚はパジャマとして大活躍している」と語りつつ、「失敗もこういう場で話せば面白い。失敗を怖がるよりネタだと思っていれば精神的にも安心する」との心構えを示した。

 数々の失敗や成功を踏まえ、林氏が実感したのは「インターネットは個人の思いつきに向いている」ということ。「映像配信とかになると設備とかが必要だけれど、思いつきで始める分には個人も会社もそんなに変わらない。こういう媒体は目立ちたがりなのに引っ込み思案な僕にぴったり」と語り、「インターネットは個人の思い付きがついうっかり影響力を持つ奇跡のツールだ」と指摘。会場の参加者に向けて「自分のサイトやブログも躊躇しないで思いついたら楽しい順にやる。そうすればストレスなく続けられるのでは」と語りかけた。


インターネットは個人の思いつきに向いている ネットは個人のおもいつきがうっかり影響力を持つツール

さまざまな分野を横断した「ブログ新大陸の発見」

約1カ月で6,000近い投票数を集めたアルファ・ブロガー。ボランティア運営の前回までは投票総数は数百程度だったという
 本イベントのメインテーマである「アルファブロガー・アワード2007」受賞結果の発表は、運営委員会を務めるアジャイルメディア・ネットワーク(AMN)取締役の徳力基彦氏と清田氏が登壇。受賞結果や受賞ブログの紹介、イベント運営を通じて得た感想などを紹介した。

 アルファブロガー・アワードの投票期間は11月1日から12月2日までの約1カ月間で、投票総数は5,987票。当初は10程度のブログをアルファブロガーとして選出予定だったが、投票数が多かったことから最終的には15のブログがアルファブロガーとして選出された。

 15のブログのうち、得票数が特に多かったのが「新小児科医のつぶやき」「会社法であそぼ。」「中年金融マン ぐっちーさんの金持ちまっしぐら」の3つ。イベントに出席していた「会社法であそぼ。」を運営する葉玉匡美さんは、ブログを始めたきっかけについて「法務省民事局に務めている頃、仕事で会社法に関する質問をたくさん受けていたので、その質問内容をブログで書いたら問い合わせが減るんじゃないか、という思いつきではじめた」と説明。「ところが『ブログに書いてあった』という問い合わせで返って仕事が増えてしまった。仕事が増える一方なので決してお勧めはしません」と語り、会場の笑いを誘っていた。

 運営委員会の清田氏は今回のイベントを「ブログ新大陸の発見」と総括。「2004年から2007年にかけてブログの数が急増したため、自分に合ったブログを探しにくくなり、『最近面白いブログがない』と言われる風潮もあったが、実際にはさまざまな専門領域で質の高い情報が発信されていることがわかった」とコメント。「ノミネートされたブログは知らないものばかりだったが、それは従来よりも広い領域のブログを横断していた。今回のアワードでは多くのジャンルのすばらしいブログを互いに発見できたのではないか」との考えを示した。


さまざまな現場で専門家が質の高い情報をブログで発信 アルファブロガー・アワード2007は「ブログ新大陸の発見」

関連情報

URL
  ニュースリリース
  http://www.sixapart.jp/press_releases/2007/12/10-1130.html
  アルファブロガー・アワード2007
  http://alphabloggers.com/

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(甲斐祐樹)
2007/12/10 12:01
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