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【WIRELESS JAPAN 2008】
クアルコム講演、11n標準化は2009年秋。1Gbps超の次世代規格も

 WIRELESS JAPAN 2008のネットワークコンファレンス IEEE 802ワイヤレス技術フォーラムでは、クアルコム シーディーエムエー テクノロジーズ シニアディレクター、テクニカルマーケティングの高木映児氏が登壇し、IEEE 802.11nの動向について解説した。


11nは2009年に標準化予定。1Gbps超の次世代規格も

クアルコム シーディーエムエー テクノロジーズ シニアディレクター、テクニカルマーケティングの高木映児氏
 高木氏は初めに無線LAN市場の現状についてコメント。「イーサネットをワイヤレス化する手段としてPCから始まった無線LANも、QoSが必要なビデオ伝送や電話に使われるほど発展した」とし、「MIMOによる複数アンテナのサポートで通信の安定性も向上しており、今後1~2年でテレビのワイヤレス化も進むのではないか」とした。

 今後の市場予測としては2012年に無線LAN搭載製品が10億に達するとのデータを紹介。その中でも無線LAN搭載のモバイルハンドセットは4億に達し、「数としてメジャーになるのでは」とコメント。また、モバイル向けではないハイエンドの無線LAN製品も2億5000万に達し、その中で固定系の家電製品も1/4程度を占めるとした。

 講演のテーマでもあるIEEE 802.11nについては、2009年7月に標準化が完了する予定だったものの、アプリケーショングループの標準化が2009年11月まで遅れる見込みであり、「IEEE 802.11nの標準化も2009年9月頃になるのでは」と語った。

 また、IEEE 802.11nの次の世代とされている「IEEE VHT SG」についても紹介。VHTは「Very High Throughput」の略で、物理速度で1Gbpsの実現を目標とする通信規格。「IEEE 802.11nの議論がほぼ終了したちょうどいいタイミングで、さまざまな研究者からの注目を集めている」という。

 ここで高木氏は、IEEE 802.11標準化による無線LANの高速化をグラフで紹介。IEEE 802.11bの最大11Mbps、IEEE 802.11gの最大54Mbps、IEEE 802.11nの最大300Mbpsという通信速度を年ごとに見ると、1年で約1.3~1.5倍の速度向上が実現できているという。高木氏は「IEEE 802 VHT SGも、標準化が見込まれている2013年という時期で見ると、この年次増加率に適合する」と補足した。


無線LAN市場の展望。2012年には無線LAN搭載製品が10億を突破と予測 IEEE 802.11で活動中のタスクグループ

11nはモバイル分野でも期待

VHTの検討内容
 1Gbpsを目指すVHT SGでは、6GHz帯を利用してIEEE 802.11nベースでの高速化を目指すタスクグループと、60GHz帯という豊富な周波数資源を利用して1Gbpsの実現を目指すタスクグループの2つが設立に向けて動いているという。6GHz帯に関しては「アンテナの数を増やせば速度は上がるが、子機にたくさんのアンテナを搭載することは難しい」との課題を指摘した上で、「7月に行われたIEEE 802の会合ではPAR(Project authorization request、プロジェクト承認要請)が認められており、11月にはタスクグループが設立されるのではないか」との見通しを示した。一方、60GHz帯については「IEEE 802.15.3cとの干渉問題などで差し戻しされており、タスクグループ設立は2009年3月頃になるのでは」という。

 現行のIEEE 802.11n ドラフト2.0については、「40MHz幅はオプションだが、実際にはほとんどの製品が40MHz幅の300Mbpsをサポートしている」とした上で、「Wi-Fi認証を取得するためにはWPA2とWMMテストが必須となる点が特徴」とコメント。2009年以降もIEEE 802.11nの仕様は検討が続いているが、「チップベンダーによる性能向上はあるものの、仕様の大幅な変更はないだろう」との考えを示した。

 高木氏によれば、モバイル向け製品でもIEEE 802.11nは期待されているという。「多くの携帯関係者がIEEE 802.11nの標準化に関わっており、高速化に加えてQoSやカバーエリア増大、電池寿命の増大といったモバイル向けの仕様が取り入れられている」とした高木氏は、「家庭内ネットワークにおいても、IEEE 802.11nの中にIEEE 802.11bが存在するとネットワーク速度が低下してしまうため、無線LAN業界としてはすべてがIEEE 802.11nに変わっていくことを期待している」と説明。「モバイル向けにはIEEE 802.11n準拠の1×2や2×2、そしてIEEE 802.11b/gの置き換えとして1×1の構成が浸透していくだろう」との考えを示した。


11n ドラフト2.0の認証と11n最終認証に関する概要 モバイル分野でも11nは期待

無線LANと他システムが連携することで真のユビキタスを実現

無線LANの干渉問題
 無線LANの普及によって影響が大きくなっている干渉問題についても言及。「無線LANが普及すれば干渉による特性劣化が顕在化するのは止むを得ない」とした上で、40MHz幅のチャネルボンディングによる干渉の増大、Bluetoothや電子レンジなど2.4GHz帯の干渉、5GHz帯での各種レーダーへの干渉などを説明。5GHz帯に関してはDFSによる対策が講じられているが、40MHz幅については「特にチャネル数の少ない2.4GHz帯で影響が顕著であり、干渉抑制手段として2.4GHz帯での40MHzモード禁止なども検討している」とした。

 2.4GHz帯については、1チャネルが5MHz帯ごとで区切られており、独立して利用できるチャネルは3~4チャネルしかない点に触れ、2.4GHz帯での干渉の例を紹介。同じチャネルを2台のアクセスポイントで利用した場合は同じ帯域を平等に利用するが、チャネルが1つずれた場合、「後から接続したアクセスポイントの力が強いと、前のアクセスポイントがまったくつながらなくなることもある」と指摘。「干渉抑制技術にも取り組んでいるが、一番良いのはできるだけ2.4GHz帯を利用しないこと」とした。

 また、国内における2.4GHz帯のチャネル利用例も紹介。「海外では1、6、11チャネルさえ使っていれば干渉は起きないだろうと言われるが、日本ではそれ以外のチャネルも使われており、1、6、11チャネルの利用率は80%程度」とし、「人口密度の低い地域ではデフォルトの1チャネルのままだが、密度が高まってくると他チャネルの使用率が上がってくるようだ」と付け加えた。

 最後に高木氏は他のシステムとの共存についてもコメント。ミリ波による高速通信については「通信速度は高いが近距離かつアクセスポイントが見通せるLOS(Line Of Sight)が条件であり、無線LANと棲み分けが図れるだろう」と説明。フェムトセルについては「基地局設備が必要であり、携帯電話のマクロセルとの干渉問題も考えられることから、まずはマクロセル干渉を気にしなくてよい地下鉄などから普及するのでは」との考えを示し、「家庭内は環境が整っている無線LANを活用するのも手ではないか」とした。

 3Gに関しては「世界全域をカバーする3Gと、エリアは限定されるが3Gより高速な無線LANは連携のメリットがある」と説明。3GのPC内蔵が進んでいるとのデータを示し、「3Gや無線LAN、GSM/GPRS/EDGEなどさまざまなネットワークを混載することで真のユビキタスを実現できる」とした。


2.4GHz帯で発生しうる干渉例。端末によっては他の端末に大きな影響を与えうるという 国内での2.4GHz帯におけるチャネル利用分布

他システムとの共存例 3Gとはお互いを補完しうる連携メリット

関連情報

URL
  WIRELESS JAPAN 2008
  http://www8.ric.co.jp/expo/wj/
  クアルコム
  http://www.qualcomm.co.jp/

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(甲斐祐樹)
2008/07/23 18:15
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