検索会議の第2部「【ビジネス動向編】」では、ヤフー 検索企画室室長の井上俊一氏やオーバーチュア ビジネスディベロップメントマネージャーの鈴木大海氏がYahoo! JAPANを利用した広告やマーケティングについて、現状と今後の展開を語った。
■ 検索はユーザー1人1人のための存在に
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ヤフー 検索企画室室長の井上俊一氏
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はじめに登壇した井上氏は、Yahoo!サーチのミッションとして「あらゆる生活シーンにおいて、検索を利用することで生活がより豊かになる」と紹介。検索のニーズとして、情報を取得したいというニーズのほか、「行きたいレストランを調べるなど、検索した後の行動に結びつくという意味では、検索はコミュニケーションの最初のポイントというニーズもあるのではないか」と語った。
検索を象徴するデータとして井上氏は、Yahoo! JAPANの検索クエリー分布データを紹介。検索結果全体のうち、検索結果の1位に表示される情報は全体の0.19%に過ぎない点を指摘した上で、「検索キーワードランキングは確かに時流を捉えてはいるが、実際に検索する人は、時流ではない自分の興味のあることだけを検索する」とコメント。「検索は他の人のためではなく、自分にとって便利であればいい。PVやトラフィックから大勢のユーザーを意識するのではなく、1人1人それぞれのメディアであることを意識しなければ、検索を作る方向性が大きく間違ってしまうだろう」とした。
Yahoo!サーチの課題として井上氏は「一方通行でユーザーのフィードバックがない」と説明。「現状は検索結果を返しただけで終わってしまい、ユーザーが満足したのか、問題が解決したのかがわからない」と述べた上で、「フィードバックがあればユーザーごとに求める検索が把握できる。他の検索サービスでも同じだと思うが、Yahoo! JAPANとしてもこの点を重要視している」と語った。
この課題を解決するための1つの事例として井上氏は、Q&Aコミュニティ「Yahoo!知恵袋」を紹介。「ユーザーの質問からすべてが始まるという点で、検索とは対極の存在」とした上で、「Web上に答えがあるかどうかわからないことでも、質問によっては5分以内に回答してもらえる。このサービスと検索の両方をいいどこ取りしたようなサービスが、検索サービスが抱える課題を解決できるのではないか」とした。
■ 今後はあらゆる生活シーンに検索のニーズが
続いて井上氏は、Yahoo!サーチの現状を紹介。競合5社の検索サービスのPVシェアではYahoo! JAPANが56%、カテゴリのシェアではYahoo! JAPANが93%を占めている点に触れ、「サーチとカテゴリを合わせると、6割のトラフィックはYahoo! JAPANが誘導している」と指摘。このシェアが広告にも大きな影響を与えるとした。
井上氏は「サイト運営者は、SEOを高めて自分のサイトへの誘導を行なうよう努力していると思うが、それと同じくらい、我々も検索結果が使いやすくなるよう努力している」と語り、Yahoo! JAPANを利用した効果的なプロモーション手法を紹介。Yahoo! JAPANの検索結果は、オーバーチュアによるスポンサーサイト、カテゴリに登録されているサイト、YSTによるロボット検索の結果の順に表示されるため、「一番上に表示されるスポンサーサイトで、Yahoo! JAPANの効果を試すのとよいのではないか」と語った。
スポンサーサイトの次に表示されるカテゴリは、営利目的のサイトであれば「ビジネスエクスプレス」への登録が必要になる。井上氏は「SEOを高めると同時に、ビジネスエクスプレスも併用していただければより効果が高まるだろう」との考えを示した。
2月にベータサービスを開始したばかりの「Yahoo!商品検索」も紹介。井上氏は「Yahoo!ショッピングだけでなく、外部サイトのデータも表示する点が画期的」とした上で、「外部サイトはロボットによるクロールと、サイトが直接データをインデックスに入れられるフィードの2種類の方法で表示される」と紹介。Yahoo!商品検索で効果的にプロモーションを行なうためには、サイトの構造化や1ページ1商品といったSEOを高めることでクロールによる検索を狙うほか、商品の詳細情報を直接入力できるフィードの利用が一番確実な方法だという。「Yahoo!商品検索にフィードされた商品に対して、我々が集客してトラフィックを誘導することでECサイトの助けになれば」との考えを示した。
今後の展開として井上氏は、「Yahoo!サーチがユーザーそれぞれに適した情報を提供できるMySearch、MyMediaを実現したい」とコメント。「今はWebサーチがインターネットに制限されているが、インターネットが生活に入り込めば、検索したいという要求が生活シーンごとに出てくるだろう」とした上で、「最初はブラウザから始まった検索も、ツールバーやモバイル、デスクトップなど少しずつ外の世界に広がっている。今後は家電や自動車、飛行機などにも検索が必要になるのではないか」との考えを示した。
■ キーワード検索がインターネット広告の成長を牽引
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オーバーチュア ビジネスディベロップメントマネージャーの鈴木大海氏
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オーバーチュアの鈴木氏は、まず米Overture Servicesの歴史を紹介。「検索エンジンのアルゴリズムやサーファーの価値基準に影響されることなく、入札金額の高さという市場原理に基づいた検索も重要である」との考えから。1997年に前身となるGoTo.comが設立され、キーワード広告を開発。Overtureへの改名やFAST、AltaVistaの買収を経たのちにYahoo!がOvertureを買収、現在に至っていると説明した。また、OvertureがYahoo! Search Marketing Solutionに社名変更した件については、「日本と韓国はオーバーチュアの名前が存続する」と語った。
日本におけるオーバーチュアの大きな動きとして鈴木氏は、2004年にYahoo! JAPAN検索結果における広告の独占表示を紹介。日本国内で検索シェアの6割を占めるYahoo! JAPANの独占に加えて、MSN Japanにも広告を出していることから、「検索全体で6~7割のシェアをオーバーチュアが持っている」と語った。
日本国内ではインターネット広告が2004年に大きく伸び、前年の1,183億円から1,814億円へと50%近い伸びを示したという。鈴木氏はこの理由について「検索が大きな牽引役になっており、中でもキーワード検索が圧倒的な支持を得ている」と指摘。インターネットで商品を購入する時、37%のユーザーが検索を利用するというNTTデータキュビットの資料を踏まえて、「検索連動型広告は、何かを調べようという利用意識の強い検索ユーザーを効率的に取り込めるというPULL型広告の影響が強い」との考えを示した。
今後の展開としては「検索マーケットの6~7割を占めていればその先がないようにも思われるが」と前置いた上で、今後はYahoo! JAPANのカテゴリページにも広告を展開していくと説明。すでに地域カテゴリの一部ではオーバーチュアの広告が出されているという。鈴木氏は「カテゴリではキーワードを入力することはないが、実際にはキーワード連動広告が表示できるため、意図としてはPULL型広告に近い」と説明。このほか、携帯電話向けサービス「Yahoo!モバイル」でも実験段階ながら検索連動型表示を展開しており、今後も検索連動型広告を中心として積極的に広告を展開していくとした。
■ 収入に応じた検索結果を表示するバナー広告などのアイディアが
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グループ会議の様子
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ビジネス動向編の全体会議のテーマは「検索結果画面に表示され、集客率が数倍にも増加する新しいバナー広告」。グループ賞として、バナーが商品情報を熱く語る「しゃべるバナー」、納税情報を活用し、検索したユーザーの収入に応じて高額な商品や消費者金融などを表示する「身の程を知れ広告」、PCから匂いを発することができるシステムを組み込み、動物の絵のバナーをクリックしないと動物がおならをし、クリックすると商品の臭いを発する「くさっ!ペット」、検索する過程で検索技術の向上が視覚的に確認でき、同じキーワードを検索したユーザーとゲーム感覚で協力できる「RPGコミュニケーションバナー」が選出され、「身の程を知れ広告」が優秀賞に選ばれた。
個人賞には、検索とYahoo!知恵袋を連動し、検索結果に関連するクイズをYahoo!知恵袋を引用して出題する「豆知識バナー」が選ばれた。ヤフーの井上氏は「キーワードを意識して他の検索から何かを持ってくるという発想と、それをキャッチーなクイズにすることで答えが気になるといういいポイントをついている」と賛辞を送った。
■ URL
検索会議【ビジネス動向編】
http://academedia.jp/event200502b/
Yahoo!商品検索 - 商品情報の掲載に関して
http://psearch.yahoo.co.jp/docs/product_data.html
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(甲斐祐樹)
2005/03/07 14:08
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