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幅広い業種や地域の景気を肌で感じられる「景気ウォッチサイト」


 先日、とある百貨店で紳士服の冬物セールを開催していました。通りがかりにちょっと寄ってみたんですが、レジ付近を見てビックリしましたね。なんと客がズラ~ッと並んでいて、長蛇の列になってました。婦人服なら珍しい光景ではないのですが、紳士服となると話は別です。売り場を見ると、男性客が熱心にワゴンを漁ってたり、とっかえひっかえ試着している姿が見られます。中には奥さんに服を見立ててもらってる人もいて、かなり盛況でした。

 以前、経済関係の本で読んだことがあるんですが、紳士服の売れ行きというのは景気の良し悪しを反映しやすいそうです。なぜかというと、紳士服というのは婦人服と違って流行があまり関係がないので、家計の中では真っ先に節約の対象となるからなんですね。要するに、ダンナの服よりも奥さんや子どもの服の方が、家庭では優先されるわけです。男ってのはツライなあとつくづく思いますが、だからこそ、紳士服が売れるということは、それだけ景気が良くなっている兆候だということです。

 新聞やテレビでも景況指数が発表されたりしますが、このような数値だけでは、実際のところ景気が良いのか悪いのかよくわかりませんよね。小売店や飲食店の混み具合を直に見ることも、景気を判断する上では重要だと言えます。そこで活用したいのが、インターネット上の「景気ウォッチサイト」です。街のナマの声が聞けるこれらのサイトを見れば、景気の変動をいち早く察知できますよ。





幅広い業種のナマの声が聞ける

 この手のサイトで有名なのが、内閣府が提供している「月例経済報告関係資料」の中にある「景気ウォッチャー調査」です。これは地域経済に深い関わりのある企業にアンケートを取り、景気について調べるもので、対象は百貨店やスーパー、コンビニ、家電量販店、レストラン、旅行代理店、不動産会社、タクシー会社など多岐に渡ります。1カ月ごとに調査結果が発表されるので、最新の景気動向をいち早く知りたいなら、この調査を定期的にチェックする癖を付けておくといいでしょう。

 それではこの調査では、具体的にどのようなことを調べているのでしょうか。「調査票」というリンクをクリックして、各企業に配布している文書の内容を見てみましょう。主な質問は、「今月のあなたの身の回りの景気は、良いと思いますか、悪いと思いますか」「今月のあなたの身の回りの景気は、3か月前と比べて良くなっていると思いますか、悪くなっていると思いますか」「今後2~3か月先のあなたの身の回りの景気は、今月より良くなると思いますか、悪くなると思いますか」という3つです。

 つまり、景気の現状と、過去との比較、そして未来の予測について聞いているわけですね。各質問については、「なぜそのように回答したのか」も詳しく聞いているので、これに対する回答を見れば、景気の過去・現在・未来をしっかりチェックできるわけです。


「内閣府」トップページ 月例経済報告関係資料




具体的でわかりやすい景気判断理由集

 では実際に調査結果を見てみましょう。サイト上には平成12年1月から現在に至るまでの調査結果が並んでいるので、いずれかをクリックします。まずは「調査結果(抜粋)」を見てください。これは調査結果をまとめたPDFファイルの中から要点を抜粋したもので、「景気の現状判断DI」と、「景気の先行き判断DI」の2つが掲載されています。ここで言う「DI」とは「ディフュージョン・インデックス」の略で、簡単に言うと景気の良し悪しを数値化したものですね。業種別のDIや過去から現在にかけてのDIの推移グラフ、先行き予測のグラフなどがあるので、まずはこれを見ておおまかな調査結果の傾向を把握するのがオススメです。

 全体の傾向をチェックした後は、「景気判断理由集」を見てみましょう。これは景気判断の理由を集めたもので、実は「景気ウォッチャー調査」の1番の見どころなんです。業種や職種を記した上で、回答理由や景気の現状がフリーワードで書かれているので、具体的でヒジョーにわかりやすい。たとえば平成17年11月の調査で、北関東の商店街代表者の声によると、「愛知万博が終わった後、観光客が増加している。今年は紅葉が遅れたが、特に年輩の女性グループが目立っている」なんて意見があります。なんと、愛知万博の影響が北関東の観光事情にまで影響を与えていたわけですね。こういうローカルな情報は新聞やテレビでもなかなか見られないので、まさに景気ウォッチャー調査ならではの情報と言えるでしょう。


「景気ウォッチャー調査」調査結果 景気判断理由集




地域の特色が反映されたレポート

 現状についてのレポートのほかに、先行きについての景気判断理由集もあります。平成17年11月の調査結果で、沖縄の居酒屋経営者に声によると、「観光客の入店が例年より多くなっている。また、平均単価が50円ほど上がっている」という意見がありました。この人はこれからの景気について「やや良くなる」と楽観的な見方をしています。沖縄の居酒屋の混み具合なんて、実際に現地に行ってみないと絶対わからないことですから、これは貴重な情報ですよね。また、衣料品店の経営者の中には、「気温はまだまだ高いが、冬物の単価の高い商品が動きが良い」なんて声もありました。本州はもう寒い時期なのに、まだ沖縄は暖かいんだなあ、と地域性が感じられますね。

 一方、北海道の商店主の声では「2月はさっぽろ雪まつりがあり、冬物バーゲンの真っ最中だが、暖冬と予想されていることから昨年ほどの販売量とはならない」なんて意見もあって、こちらも地域特有の事情がよく反映されています。これらを読んでいるだけで、まるで旅行しているような気分になれますな。

 ちなみにこれらの声を数値化したDIをまとめた統計表も提供されています。Excel形式なので、さまざまなアプリケーションで活用できます。プレゼンや会議の資料として使うのもオススメですよ。


統計表リスト




商工会議所による景気動向調査

 さて、「景気ウォッチャー調査」は日本全国を対象とした調査ですが、地域で独自にこのような調査を行なっている場合もあります。たとえば神奈川県茅ヶ崎市の「茅ヶ崎商工会議所」でも、茅ヶ崎市に限定した景気動向調査を四半期ごとにまとめて公開しています。調査対象となるのは、商業や建設業、製造業、サービス業など計400社。月の売上や利益、業況などについて回答を集めて、DI値を集計しています。また、レポートの最後の方に「業種別コメント内容」という項目があり、ここでは「景気ウォッチャー調査」のように景気動向についてのコメントが読めます。

 たとえば平成17年の9月度調査のコメントを見ると、「客単価は減少し、100円ショップの台頭や営業時間延長の店の増加等で苦しい。エイヴィ出店で更に競争の激化で売上は悪くなりそう。飲食店の閉店が増加し、顧客の確保が難しい」と、大型スーパー出店についての意見などが書かれていて、かなり参考になります。地域によっては、このようにとても役に立つ情報を提供している組織もあるので、自分が調べたいと思っている地域の商工会議所のサイトなどを、1度チェックしてみてはいかがでしょうか。ひょっとしたらビジネスチャンスにつながるヒントが見つかるかもしれませんぞ。では、また!


「茅ヶ崎商工会議所」トップページ 茅ヶ崎市景気動向調査

関連情報

URL
  内閣府
  http://www.cao.go.jp/
  景気ウォッチャー調査
  http://www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei.html
  茅ヶ崎商工会議所
  http://www.chigasaki-cci.or.jp/

2006/01/23 11:28

下柳泰三
自称“書き屋”。ジャンルを選ばず心が揺さぶられればパソコン記事でも映画評でも何でも書く、サスライの原稿執筆人。現在某街歩き雑誌(ヒミツ)をメインに活動中。ホコリをかぶったケーブルモデムを横目に今日も書きまくる!
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