Broadband Watch logo

新しい音楽で新鮮な感動を感じてみよう


 へへへ。毎日暑くて暑くて、外に出る気がしませんなあ。こういう時期こそ家でインターネットに耽るっつーのが夏の賢い過ごし方かもしれませんね。

 とくに音楽関係はねえ。ちょっとメジャーなアーティストだとコンサート会場はスシヅメ状態だし、あんまり集客力がないアーティストのライブも、それはそれで小さなハコで演ることになるから、やっぱりスシヅメ。

 どんなによい演奏聴かせてもらっても、暑苦しいったらありゃしない。これが野球だと、客の入りが5万5000人だろうが1万人だろうがハコの規模は同じだから、客の入りが少ない試合に行けば優雅に見られるってなもんです。

 コンサートの場合、ちょっと有名なミュージシャンだと電話予約なんかまずムリですからねえ。日曜の朝早く起きて、何度もチケットセンターに電話しても話中ばかり。

 2時間くらいしてやっと通じたかと思えば「売り切れました」とアッサリ言われてガックリ。超人気のミュージシャンだと、ぼやっとしてたら一生見られないかもしれませんなあ。


浜崎あゆみの「スーパーストリームライブ」
 で、こういう従来の非合理的なチケット予約システムに不満を抱いていた人に、最近朗報がありました。例の浜崎あゆみの「スーパーストリームライブ」です。

 こういうコンテンツとしては珍しく、“課金”をするということで話題になりましたね。しかも、帯域別に料金を分けるという徹底ぶり。

 ストリーミングメディアは長らく“実験”段階にとどまっていましたが、いよいよこれで“売り物”として実用的な段階に進んできたということなんでしょうか。


街中に溢れる“浜崎あゆみ”

 ただ、アタシ的にはこの報道を見て「おお、ようやく新時代に突入だぁ!」などと叫んだりはしませんでした。

 なぜかというと、流されるコンテンツが“浜崎あゆみ”だったからですね。別にアタシはこの人のこと嫌いじゃありません。いや、J-POPの中ではむしろ好きな部類に入るかもしれない。CDは持ってませんけど。

 だって、この人くらいメジャー中のメジャーになってしまうと、街を歩いていれば1日に1回は聴く機会がありますから。コンビニ、スーパー、ビデオレンタル店、携帯電話店、カラオケ店……。挙げればキリがないくらい、街は音楽で氾濫しています。

 そういうところでガンガン曲がかかっているアーティストのパッケージメディアを、わざわざ買おうという気が起こらないんですね。

 だから正直、例のストリーミングライブのことを聞いても「そのうちビデオで出るんでしょ」としか思わなかった。別に録画できるわけでもないし、1回見たら終わりでしょう。

 まあ、本来ならチケットを手に入れた人しか見られない光景をリアルタイムに享受できるわけだから、「昨日のあゆの衣装、可愛かったよねー」とか、友達と話題を共有するにはいいかもしれませんけどね。

 どうせストリーミングでやるなら、まず普通なら見られないようなものを見せてほしい、と思うのはアタシだけでしょうか。


本場のジャズが聴けるサイト

ニューヨークのジャズクラブの映像を配信する「z-music55」
 たとえば、「z-music55」というサイトがあります。

 ここはニューヨークのジャズクラブの映像を配信するサイトなんですが、なかなか見応えがあります。課金もなし。

 今、ジャズという音楽は日本では風前の灯火と言ってもいいかもしれません。ただ、その中にも、少なからずジャズファンは存在します。

 そういう人たちにとっては、モダン・ジャズの聖地であるニューヨークのライブハウスの映像というのは、とても興味があるコンテンツなんですね。帯域も400kbpsに対応しているので、けっこう快適です。

 ライブ中継ではありませんが、こういうコンテンツは“リアルタイム”に見る必要はほとんどない。その代わり、いつでもアクセスして見ることができるし、その分多くの人の目に触れることにもなる。

 アタシも少なからずジャズは好きなんですが、こういうマイナーなジャンルの音楽を配信していくことが、ブロードバンドの裾野の拡大につながるんじゃないかと思うんですね。

 先日、別の仕事で、とある郊外のジャズ喫茶を取材しました、そこでは定期的にバンドによる生演奏ライブを開催しているんです。で、そこに出演する人の面々が、日本のトップクラスのミュージシャンばかりなんですね。

 そういうスゴイ人たちが、たった20人くらいの観客の前で熱演しているわけですよ。同行した編集者はジャズの生演奏を見るのは初めてだったんですが、彼曰く「背中がゾクゾクした。こんなの初めて」と、瞳ウルウル腰砕け、何やらヒワイな表情に陥ってしまい、こっちがビックリしてしまいました。

 音楽に自分の価値観を打ち砕かれた経験を持っている人には分かると思うんですが、未知の音楽を知るきっかけは、本当に些細なことなんです。が、今の日本じゃテレビを見ているだけではそういう機会なんかほとんどない。ブロードバンドによる音楽配信にアタシが期待してんのはそこんとこなんですね。

 日本にも「JJazz.Net」という日本人のジャズミュージシャンを紹介するサイトがあるんですが、音声による配信はしているものの、動画配信まではまだまだいかない。今後の発展に期待大!ですな。


日本のジャズサイト「JJazz.Net」 音声による配信はしているものの……

古今東西の音楽情報がぎっしり

音楽コンテンツを検索できる「listen Japan」
 そんなこんなで、ジャズに限らずいろいろなジャンルの音楽がもっともっと人の耳に触れる機会が多くなればいいと思っているんですが、そんな人にお勧めなのが「listen Japan」。

 ここは、アーティスト名や曲名で検索すると、それに関するサンプル曲やストリーミングビデオがどこのサイトにあるのかを教えてくれるところです。

 たとえば「マイルス・デイビス」と入れて検索をかけると、マイルスの曲のサンプルが聴けるソニー・ミュージックのサイトなどが表示される。なかには米国のマイナーなサイトの情報なんかも出てきて、思わぬサイトを発見することもあります。

 「ライブ中継」にこだわらなければ、こういうサイトもあるってことですな。

 アーティストの簡単な紹介も書いてあるし、蓄積された情報量もハンパじゃなく膨大なので、かなり重宝します。

 ただ、不便なところもあって、たとえば曲名で検索するとき、外国曲は原題で書かなければいけないようです。スタンダード・ナンバーの「酒とバラの日々」を見つけようと「酒」で検索をかけると、長山洋子の「めおと酒」が出てきてしまうので要注意ってことですな。原題の「The Days Of Wine And Roses」で検索したら、あっさり出てきました。

 まあアタシは文章と同様、音楽の好みも節操ないから、耳が気に入れば、クラシックから演歌まで何でも聴きます。そういう人間には最高のサイトですね。

 「今日はCDでも買おうかな」と思ったとき、とりあえずここから情報を得てサンプル曲を聴き、何を買おうか決めることもよくあります。その分ミュージシャンにとっては「ジャケットで騙す」ってのが難しくなってきましたけどね。

 「このジャケットよいなあ」と思ってCDやレコードをジャケ買いして、聴いてみたらガビーン!なんてのが昔はよくあって、それはそれで楽しい思い出だったんですが。いやいや音楽家にとっては厳しい世の中になったもんです。

 アタシのこの連載も、「ブロードバンドウォッチ? う~ん最先端の情報だから、とりあえず見ておこう。ナニナニ?」なんて人が思わずクリックして、読んでみたら「時間のムダだコノヤロー」なんてこと言われてるかもしれません。でも、音楽と同じように文章コンテンツも、日々騙されて騙されて、だからこそいい記事に当たったときには感動が深いというもんです。たまには騙されてみましょうね、皆さん。



URL
  スーパーストリームライブ
  http://live.avexnet.or.jp/liveinfo.html
  z-music55
  http://www.z-music55.com/
  JJazz.Net
  http://www.jjazz.net/
  listen Japan
  http://www.listen.co.jp/

2001/07/30 11:17

下柳泰三
自称“書き屋”。ジャンルを選ばず心が揺さぶられればパソコン記事でも映画評でも何でも書く、サスライの原稿執筆人。現在某街歩き雑誌(ヒミツ)をメインに活動中。ホコリをかぶったケーブルモデムを横目に今日も書きまくる!
Broadband Watch ホームページ
Copyright (c) 2001 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.