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 最近、テレビの巨人戦の視聴率が下がっているようですね。巨人自体の人気が衰えてきているのか、サッカーやら大リーグやら他の人気が上がっているのか。理由はよくわからないけど、もしかしたらブロードバンドの普及も一役買っているのかもしれませんなあ。テレビを見るよりモニタを眺めてるほうが楽しい、てな人って今だと結構多いと思うんです。

 昔は50%とか60%とか、今では信じられないような高視聴率をマークした番組がありました。ビデオ・リサーチ社の記録によると、歴代1位は1963年の「第14回NHK紅白歌合戦」で、なんとこれが81.4%でダントツ。2位以下に東京オリンピックとかプロレスの力道山戦とかが60%台で入っています。最近はここまでの視聴率は、なかなか取れませんねえ。6位にかろうじて1998年のサッカーのワールドカップ戦が入ってるだけ。誰もがテレビに熱狂する時代は、もう終わったのかもしれません。

 こういう時代だからか、テレビ番組の内容も昔とはかなり変わってきてますね。バラエティ番組ではプロの芸人がきちんとした芸を見せてくれることは少なくなり、「電波少年」や「ガチンコ!」のように素人を使ったものが増えています。その一方で、今年のプロ野球オールスター戦や日本テレビの巨人戦のような硬派なスポーツ番組に、お笑い芸人が絡んでくる。チグハグですねえ。ドラマに出てくるタレントも昔に比べると小粒な感じだし、なんかもう「テレビがんばれ!」と思わず言いたくなります。


ニュース番組はテレビ局の“宝”

 ただ、こんな状況の中、昔から変わらない“不動のコンテンツ”というべきものがテレビにはあります。そう、ニュース番組です。アタシの父親なんかすごいニュース好きで、いつもニュースばかり見てました。「テレビで一番おもしろいのはニュースだ」と言って、午後7時の夕飯タイムには必ず「NHKニュース」を見てましたから、アニメとかクイズ番組とかを見たかった幼少時のアタシにとっては、いい迷惑でしたよ。「おっさんが出てきて喋っているだけの番組、どこがおもしろいんじゃ!」とさんざん悪態をついていましたが、遺伝なんでしょうか。今やアタシも立派なニュースジャンキーです。

 よく考えたら、世界中の映像がお茶の間にいながら見られるニュースは、テレビ局が持つ“宝”ともいうべき、最高のコンテンツなんですね。しかも、そこに描かれる事件は、ヤラセ一切なしの“事実”です。ヘタなドラマやバラエティよりも、はるかにおもしろい。数年前にCATVを申し込んだときも、一番見る機会が多かったのが「NNN24」でしたからねえ。ま、この局は少々スポーツニュースの作り方に問題があったのが誤算でしたけど。なにせ日テレ系ですから、アタシの好きな日本ハムファイターズの試合を、あまり取り上げてくれない。これ以外はニュース専門チャンネルとしてとてもよくできてると思います。

 多チャンネル化によって、他のキー局も、この手のチャンネルを作っているようですね。さらに今度は、インターネットでもニュースの速報を動画で流すようになってきました。ニュースジャンキーにはタマラン時代になってきたもんです。


ネット上で繰り返されるメディアの歴史

Real Playerのチャンネルには、いろいろな放送局が登録されている
 主要なテレビ局のサイトを見てみると、あるわあるわ、今やどこもかしこもニュース配信やってます。TBSは「News i」、フジテレビはおなじみ「FNN」、テレビ朝日「ANN」、日本テレビは「NNN24」と、主要な民放キー局はすべてニュースの動画配信をやっているという状況です。さらに、NHKも「NHKニュース」のページで配信しています。まあ、各局のページにいかなくても、「Real Player」のメニューにいろんな放送局のアイコンが並んでいて、それをクリックすると簡単にニュースが見られるようになっているんですけどね。改めて各局のページにいくと、なんか壮観ですね。こりゃあもうテレビなんか見なくても、モニタを見ていれば世間の動きを知ることができるんじゃないか、とさえ思ってしまいます。

 インターネットの黎明期のころ、話題になったのは朝日新聞のサイト「asahi.com」でした。アタシもその頃パソコン誌の編集者やってて、「asahi.com」の立ち上げの発表記者会見に行きましたよ。メディアの王様と言われる新聞がいよいよ次世代メディアに参入したとあって、会見場もアツイ雰囲気が漂ってましたねえ。天下の朝日新聞が参入したんだから、インターネットは一部のパソコンユーザーによる実験から一歩踏み出して、これからはどんどんメジャーになっていくだろうなと、ワクワクしたことを覚えています。

 テキストと静止画像を組み合わせて情報を送る新聞というメディアは、そのころの通信環境にあっていたこともあって、「asahi.com」は開設と同時にアクセスが殺到しました。今、ブロードバンド時代になって、今度はテレビ局が相次いで動画配信を充実させています。新聞からテレビへと、インターネット上ではメディアの歴史が繰り返されている感じがしますね。「asahi.com」開設のころは、「新聞は有料なのに、インターネットはタダで読める。そこんとこはいったいどうするのか」なんて議論がありましたけど、民放テレビはもともと広告収入で運営しているので、直接視聴者から料金は取らない。だから、そういうことへのタメライもなく、ニュースの動画配信はどんどん進んでいます。

 まあ、NHKは複雑な気持ちでしょうね。テレビを持ってない人がどれくらいいるか知りませんけど、NHKに受信料を払っていない人も、インターネットを使えばタダでニュースが見られるわけです。不思議とこういう議論はあまり見かけませんけど、理屈からいえば「そんなことイカン!」という意見の人が出てきてもおかしくはないですね。まあ、インターネットの登場というのは、旧来のメディアにとってはある意味“誤算”なので、ここらへんはお茶を濁してるのかもしれません。



URL
  TBS「News i」
  http://news.tbs.co.jp/
  フジテレビ「FNN」
  http://www.fujitv.co.jp/jp/index.html
  テレビ朝日「ANN」
  http://www.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/index.html
  日本テレビ「NNN24」
  http://www.nnn24.com/
  NHK「NHKニュース」
  http://www.nhk.or.jp/news/
  Real Player
  http://www.jp.real.com/
  朝日新聞「asahi.com」
  http://www.asahi.com/




テレビ局以外のニュース配信

 ではテレビ局以外はどうなんでしょう。「速報性」という点では劣るかもしれませんが、新聞や雑誌でも一部配信しています。たとえば「NIKKEI BIZ TV」。経済関連のニュースって、専門用語が出てきて難しいのですが、ここでは「ニュースコラム」と題して、日経新聞の記者がニュースを解説してくれます。あと、変り種としては、「大和証券」の「最新マーケット情報」とかおもしろいですね。証券会社までもが放送局になってしまうインターネット、恐るべしです。

 また、読売新聞が提供する「YOMIURI NEWS STREAM」や、講談社「Web現代」の中の「News Web Japan」も注目ですね。新聞社や雑誌が動画を作るってことは、メディアの勢力図そのものに影響するような画期的な事件だと思うんですよ。長年ニュース番組を作り続けてきたテレビ屋さんに、クオリティでどれくらい肉薄できるのか見ものですね。

 まさにニュース動画配信は今や百花繚乱で、各サイトを見てるだけで「いや~ニュースって、ホンットにいいもんですねえ~」と水野晴郎化してしまうアタシですが、1つ心配なのは、やはり画質の悪さです。テレビに比べるとどうしても解像度的に劣るインターネットの動画ですが、もし指名手配犯の写真とかを載せた場合、見た人が他人と顔を間違えてしまうこともあるかも?! 気を付けましょうね。



URL
  日経新聞「NIKKEI BIZ TV」
  http://nikkei.hi-ho.ne.jp/biztv/ch1.html
  大和証券「最新マーケット情報」
  http://www3.stream.co.jp/web/daiwa/index.html
  読売新聞「YOMIURI NEWS STREAM」
  http://www.yomiuri.co.jp/stream/index.htm
  講談社「News Web Japan」
  http://kodansha.cplaza.ne.jp/broadcast/index.html

2001/09/17 11:21

下柳泰三
自称“書き屋”。ジャンルを選ばず心が揺さぶられればパソコン記事でも映画評でも何でも書く、サスライの原稿執筆人。現在某街歩き雑誌(ヒミツ)をメインに活動中。ホコリをかぶったケーブルモデムを横目に今日も書きまくる!
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