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ちょっと変わった世界のライブカム


 もう6年くらい前になりますかねえ。かつてブロードバンドなんて言葉がまだ知られていなかったころ、アタシはある作文を書いたことがあります。お題はナント、「もし常時接続を導入したら、アナタは何をしたいか?」というもの。これね、今となっては記憶は定かではないんですが、ある実験プロジェクトが募集していたものなんです。この作文を出した人の中から何人かを選び、常時接続の環境を与えるというものでした。「ダイヤルアップなんてセコセコしててイヤ~ン」とずっと思ってたアタシはこの懸賞を知り、「常時接続ほしい!絶対ほしい!」とわめき散らし、インターネット雑誌の編集員という身でありながら、臆面もなく応募しました。結果、見事に落ちてしまいましたけどね。あーハズカシ。で、そのときアタシが書いた作文の内容が何だったかというと、なんとこれが「ライブカメラを設置したい!」というものだったんですね~。

 ここで「な~んだ。つまんね」と思った人、何人かいるでしょう、そうでしょう。でもね、当時としてはまだライブカメラはチラホラと出始めた程度で、そんなに注目もされていませんでした。そりゃそうですよね。ダイヤルアップで接続料金が刻一刻と加算されていくなかで、大して鮮明でもない画像を見るために、じっと転送されてくるのを待つなんて、普通だったら耐えられないでしょう。まだネットワークが大容量化されていなかったころですからね。いくら遠く離れた外国の生の映像が見られるといっても、画像を見るのに時間がかかるのでは話にならない。ただ、アタシはこのライブカメラというものに出会ったとき、「きたよぉ、きたきた!」と、とてつもなくシビレたんですよ。何がきたかって? ここらへんはちょっとクサク聞こえるかもしれませんけど、それは未来です。昔読んだSF小説で予想されていた未来。それがやっと現実のものになろうとしている。と、そんなかつてないコーフンに包まれたアタシでした。


SF小説が現実になった!

 中学生のころ、筒井康隆氏の「48億の妄想」という小説を読みました。内容は、世界のあらゆる場所にテレビカメラが据え付けられ、人は皆、テレビドラマの主人公であるかのように虚構を演じるようになっていく、というような内容です。この小説の中に出てきた「ありとあらゆる場所に仕掛けられたテレビカメラ」は、現在のライブカメラにとてもよく似ているような気がします。初版は1976年なんですけど、こんな時代に未来を予測していた筒井康隆氏はまったくもってスゴイ! としか言いようがない。

 世界中の生の映像がいち早く見られる時代。誰もがテレビ局になれる時代。そういった期待感と不安感がごちゃ混ぜになって、アタシはしばし頭がカーッと熱くなったんですが、今や時代は変わりました。ライブカメラはちょっとした企業ならもちろんのこと、個人でも設置できるくらい手軽になってきています。なかには「モデムにつなげるだけでライブカメラが実現!」なんていう便利なモノもありますね。いずれ防犯カメラなんかも、従来のものよりライブカメラのほうが安い、なんて時代がくるかもしれません。そうすれば外出中にも家を監視できますからね。物騒な世の中だから意外と流行るかもしれない。ネットワークもブロードバンド化して、転送に時間がかかる画像ファイルも、苦もなく見られるようになりました。ライブカメラの映像を提供する側もそれを見る側も、双方の環境が整ってきたことで、ライブカメラ設置のサイトも数年前に比べてぐっと増えてきたんでしょうな。


ライブカメラのリンク集ならココ!

世界地図を使ってライブカムを検索する「世界の窓」
 ライブカメラの案内サイトとしてもっとも有名なのは、やはり「世界の窓」ですね。このサイトってなんかメチャクチャ演出がカッコイイ。世界地図の一部分をクリックして地域を指定する、という演出がなかなかイキなんです。コレ見てると、まるで映画「007」シリーズに出てくる悪役・プロフェルドのような、世界制覇を狙う大物になった気分になってくる。

 で、このサイトの便利なとこは、地域だけでなく、見る対象物のカテゴリ別にもわけられていること。とくに「人」っていうカテゴリの場合、本当に普通の人の家の中の景色とかあったりして、けっこうおもしろい。無用心だなあ、なんて一瞬思いましたけど、よく考えたら、仮にこの映像見て「いっちょ忍び込んでなんか悪さしたろかい!」なんて思っても、全世界の誰が見ているかわからないんですから、とても襲う気力なんてなくなりますな。いつの日か、空き巣がライブカメラの映像を元に捕まってしまう時代もくるかもね。まあ、「48億の妄想」みたいに、別の意味でコワイですけど。



URL
  世界の窓
  http://www.sekainomado.com/




ヨーロッパで人気のユーレイ・サイト

 まあそんなこんなで、このサイトを基にさまざまな国のライブカメラをチェックしていると、アイルランドでおもしろいのを見つけました。なんと「幽霊監視カメラ」です。他人の家の映像が、タダで見られるサイトというのもスゴイですが、こちらはもう一歩踏み込んで、幽霊を見るというシロモノ。サイト名はズバリ「GOHST WATCH」です。メニューの「WebCam」をクリックすると、表示されるのは何の変哲もないタダの物置部屋らしき映像なんだけど、どうも幽霊はここに現われるそうです。ちなみに「GOHST WATCH」のほかにも、イギリスに「GOHST CAM」というサイトもありました。「GOHST WATCH」よりも幽霊がいそうな感じの家です。どうもヨーロッパ北西部の人は、幽霊が好きみたいですね。

 実をいうと、アタシは基本的に超常現象を信じていないんですよ。それは、自分が体験したことがないから。「オイラなんか幽霊なんてクサるほど見たぜ!」という人から見れば文句があるでしょう。が、霊感ゼロの人間にとって見れば、自分が見えないのに、そういうことを信じてもあまり意味がないような気がするんですね。もし一度でも見ればきっと信じられるんですけどね。だから常日頃から「幽霊さんよぉ、いるんなら出てきてくれよぉ」と思っているんですが、出てきてくれやしない。オカルトスポットなんてそうそう身近にあるわけでもないし、わざわざ出かけるのもめんどうだ、という人間なんです。だから、こういう「お茶の間にいながら幽霊監視」という企画は大歓迎ですね。よし、そんなら毎日チェックしてやろうじゃん! という気にもなります。


イギリスにある幽霊監視サイト「GOHST CAM」


URL
  GOHST WATCH
  http://www.irelandseye.com/ghost/index.shtm
  GOHST CAM
  http://www.ordsallhall.org.uk/ghostcam/




こんなとこに付けてどーすんだ?

「Happy Wash」ではフランスにあるコインランドリーの風景を映し続けている
 もう1つ気になったのは、「Happy Wash」というサイトでした。これ、フランスの田舎にあるコインランドリーの風景をただ映すというだけのライブカメラなんです。メニューの「WebCam Live!」をクリックすると、ホントにごく普通のコインランドリーが出てくるだけ。なぜコインランドリーなのか、この映像にどんな意味があるのか、まったくわからない。このランドリーの管理人が防犯の意味で置いてあるのかなあ。でも、こんなの世界に向けて発信しても意味がないような気が……。もしかして洗濯機や乾燥機の空き具合を顧客に見てもらうためなのか? うーん、でもなんか画像もモノクロで、どの機械が空いてるのか、イマイチわかりにくい。意味ねーじゃん! と思いつつもなんとなく見てたら、結構おもしろいんですね。いろんな人が出たり入ったり、音は伝わってこないけど、まるで異国の街に紛れ込んでしまったような錯覚を感じました。ライブカメラの使い途って、こういう意味のない映像が実は一番おもしろいのかもしれないなあ、とチト思った次第です。

 別にこの店にくる人たちはライブカメラに出演しようとしてくるのではなくて、ただ単純にパンツを洗おうと訪れているだけです。だから、ごく普通のフランス人の飾らない日常がわかるわけです。「わかってどーすんだ?」という人もいるかもしれないけど、アタシ的にはタマランですね。こーゆーの。

 さて、外国のサイトばかり紹介してきましたけど、国内にもこれ以上におもしろいのがたくさんあります。何よりも、身近な場所ということで国内のライブカメラ・サイトは実用的です。おもしろくて、タメになる。来週はそんな国内サイトを見ていきましょう。



URL
  Happy Wash
  http://www.happywash.com/

2001/10/15 11:13

下柳泰三
自称“書き屋”。ジャンルを選ばず心が揺さぶられればパソコン記事でも映画評でも何でも書く、サスライの原稿執筆人。現在某街歩き雑誌(ヒミツ)をメインに活動中。ホコリをかぶったケーブルモデムを横目に今日も書きまくる!
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