Broadband Watch logo

ブロードバンドでマンガを読もう


ブロードバンドでマンガを読もう

 マンガですよ、マンガ。今回のテーマは日本が世界に誇る文化、ジャパニーズコミックです。昨今は出版不況などといわれ、アタシもいろいろと厳しい思いをしているんですが、そんな出版界を引っ張っているのは今やマンガであるといってもよいでしょう。大手出版社の中では稼ぎ頭ですからね。

 なにしろ日本のマンガというのは非常にレベルが高い。「電車の中で、大人が平気な顔をしてマンガを読むなんて」という批判が一時期いわれましたけど、アタシは別によいと思うんですよねえ。だったら「活字ならよいのか」といいたい。マンガのクオリティよりダメダメな活字なんて山ほどありますよ。アメリカでは映画がエンターテイメントの王者になりましたけど、日本人にとってのハリウッド映画のようなもんだと思うんです、マンガって。映画とは違って時間的な制約がないからものすごい長編も発表可能だし、いろんな可能性が秘められたメディアだと思いますよ。

 かくいうアタシは中学・高校とも運動部だったくせに、小学生のときだけはマンガクラブに入ってました。合法的にマンガを学校に持ち込めるという理由だけで入ったんですけど楽しかったなあ。皆がいろいろなマンガ週刊誌を持ち寄るからあまり買う必要もない。当時はコンビニなんかなかったから立ち読みも難しく、おかげでクラブはほとんどマンガ喫茶と化してました。あまりの体たらくに先生が怒ったときだけ、ヘタな四コマを書いてお茶を濁していたという不良小学生でしたよ。そんな幼少期を送っていたせいで、30歳を越えた今でもマンガというのはアタシにとって水や空気と同じくらい、身近なものに感じられます。最近になってネットでマンガが読めるようになってきましたけど、これは今まではコンビニに飲み水を買いにいってたのが、水道が敷設されて蛇口を捻れば出てくるようになったようなもんですね。マンガ人間にとってはウレシイ時代の到来です。


配信の仕方はいろいろ

 最近になってなぜオンラインコミックが増えてきたかというと、もちろんブロードバンド化が進んだのが理由のひとつであることは間違いないでしょう。マンガは小説と違って、すべて画像ですからね。いくらモノクロで写真ほど情報量が多くはないといったって、大きな静止画を何ページも配信するとなると、かなりデータが大きくなってしまう。でも、ブロードバンドなら全然OKなわけです。

 配信の仕方にもいろいろあるようですね。PDF化したものをそのままダウンロードするところもあれば、専用のビューアを使っているサイトもある。なかにはShockWaveを用いているところもあります。たとえば講談社の「e-manga」というサイトにいってみましょう。さすが天下の講談社、「マガジン」シリーズで連載しているマンガを初め、豊富に揃っています。さて、右のメニューに「全作品紹介」という項目があるので、ここをクリックしてみてください。ズラ~っと出てきましたね。おお。アタシの大好きな「賭博破戒録 カイジ」とか「頭文字D」とか、有名作品の番外編もある。思わず「購入する」ボタンを押したくなる作品ばっかりですが、ここはひとつ落ち着いてサンプルを読んでみましょう。ほとんどの作品は出だしの数ページを読めるようになっています。う~ん。本屋で立ち読みする感覚ですね。新刊書に並んでいるマンガはビニールをかけられていることが多いから、こっちのほうがよいくらい。で、サンプルを見てみると、ShockWaveの画面が立ち上がります。見せ方がなかなかおもしろい。最初は白紙のページなんですが、右下に「NEXT」ボタンがあって、これを押すと1コマずつ、ボワ~ンボワ~ンと浮き出てくるんですね。普通、マンガってのはページをめくると全カットが一斉に視界に入ってくるもんですけど、それとはちょっと違う感覚が味わえるわけです。



URL
  e-manga
  http://kodansha.cplaza.ne.jp/e-manga/




見せ方によってマンガが新たなメディアになる

 マンガを読む人なら分かると思いますけど、うっかり先のコマを読んでしまって、ネタがバレてしまったってのは結構多いですよね。わずか2、3コマ先を読んでしまったって関係ないだろと思われるかもしれませんけど、探偵ものの謎解きマンガとかの場合は致命傷になることもあります。そういう違和感を感じると、作品の世界に完全に入り込めないしね。マンガってのはそういう意味で、「読む技術」もある程度求められるメディアだったんですが、こういう風にShockWaveを使うと失敗がない。あと、「ああっ教祖さまっ」という無料マンガを読んでもらうと分かりますけど、音声や動画を織り交ぜることもできる。ここまでくると「じゃあアニメにすればよいじゃん」という意見もあるでしょうけど、やっぱりマンガとアニメは違うんですね。「ああっ教祖さまっ」の場合でも、「NEXT」ボタンを最後まで押せば、あとは雑誌に載っているような普通の四コマになるわけです。最初のコマもオチのコマもすべてひとつの視覚内に収まるってのは、その作品の全容が見晴らせるということであって、これがマンガのよさだと思うんですよ。もしかしたらこの方式は、アニメのよさとマンガのよさをひとつに合わせた、新しいメディアというべきなのかもしれません。


オーソドックスなのも結構イイ

 講談社のように出版社が直接マンガを配信しているところもあれば、書店のようにさまざまな出版社のマンガを揃えているサイトもあります。「FRANKEN ザ・コミックショップ」なんかがそうですね。スピリッツで連載されていた松本大洋の「ピンポン」とか、名作中の名作「ドカベン」も読めます。アタシはドカベン大好きなんで、プロ野球編を除いてすべて書棚に揃えてありますけど、なにしろ巻数が多いですからねえ。デジタル化してもらうと、一気に読みたいところにたどり着けるので、とてもイイ!! それに紙はかさ張るし。ちょっと前にビデオのコレクターが、テープの重みで2階の床をぶち抜いたなんて話がありましたけど、あまりにも本を大量に集めるとこういうことが起こらないとも限りません。

 まあ、そんなことはさておき、このサイトのマンガの配信方法なんですが、「Acrobat eBook Reader」というものを使っています。これがなかなか読みやすくてよいんです。まあPDFファイルのようにページをそのまま表示しているんですが、オリジナルそのまんまの味わいが出ていて、ShockWaveを使ったものとはまた違った味わいがある。ページをめくったり、画面サイズを変更したりといったカスタマイズも簡単だしね。このビューアは結構ファイルが大きいんですけど、こんなときにブロードバンドでよかったと実感します。



URL
  FRANKEN ザ・コミックショップ
  http://www.franken.com/




あの巨匠の作品も読める!!

手塚治虫のマンガを集めた「TezucaOsamu@Book」
(c)Tezuka Productions
 それにしても、「ドカベン」とか過去の名作をネットで読めるというのは、ホントうれしい話です。古い作品というのは大きな書店にいかないとなかなか手に入らないですからね。なかには絶版になってしまったものがネットで復活ってなこともあるかもしれない。あの手塚治虫のマンガを集めた「TezucaOsamu@Book」とか、一人の作家に絞ったサイトも登場してきているので要注目ですな。ちなみにここも「電子書籍ビューワー」という、前述した2サイトとは違った方法で見せています。あとは、「ZDNet Japan WEB COMICS」みたいに、オリジナル作品を読めるサイトも出てきています。アタシが小学生のときに読んだ「ただいま授業中!」の作者、岡崎つぐおもここに描いていて、なんだか懐かしくなっちゃいました。しかも無料で読めるってんですから見なきゃソンです。まさにオンラインコミックは百花繚乱。いやー困ったもんです。こんなに簡単にマンガが読めるなんて、仕事が手に付きませんよ……。



URL
  TezucaOsamu@Book
  http://book.tezuka.jp/
  ZDNet Japan WEB COMICS
  http://www.zdnet.co.jp/manga/

2002/04/08 11:18

下柳泰三
自称“書き屋”。ジャンルを選ばず心が揺さぶられればパソコン記事でも映画評でも何でも書く、サスライの原稿執筆人。現在某街歩き雑誌(ヒミツ)をメインに活動中。ホコリをかぶったケーブルモデムを横目に今日も書きまくる!
Broadband Watch ホームページ
Copyright (c) 2002 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.