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ブロードバンドとミニFMの新しい関係


 皆さんは「ミニFM」ってご存知ですか? もしかしたら20代前半の人は、知らないかもしれませんね~。ミニFMとは、郵政大臣の免許を受けずに、小出力のFM電波を用いて放送するスタイルのことを言います。小出力だから、普通のFM放送みたいに何10キロも離れた場所からは聴けない。せいぜい一つの商店街くらいの範囲しか電波は飛ばせません。ただ、電波を飛ばすためのトランスミッターは数千円~数万円で揃えることが可能なので、誰もが簡単に放送局を作れる、というメリットがあります。

 放送を始めるのも簡単なら、止めるのも自由。放送内容も、大手の放送局とは一味違った自由な番組作りができる。これ、何かに似てると思いませんか? そう、インターネットです。まあ、配信するのはラジオの場合は「トークと音楽」が主体で、ネットの場合は「テキストと画像」がメイン、という違いはありますけどね。「誰もが自由に情報を送れる」という点では、非常に似た部分があると思うんです。

 80年代に「波の数だけ抱きしめて」という映画がきっかけでミニFMがブームになったことがあったけど、それほど長くは続きませんでした。放送ってのはネットと違って、支持を得るためには定期的に放送を続けていかなきゃならない。それなりの覚悟と気合がないと、続けるのは大変ですからねえ。が、完全にミニFMの灯火は消えたわけじゃない。全盛期の頃に比べると数こそ少ないですが、今でも放送局はあります。

 ブームが去った今になっても、なお頑張っている局ってのは、かなりレベルの高いところばかり。実際に聴いてみると、大放送局に負けないくらい面白いんですね。判官贔屓のアタシは思わず声援を送りたくなりますが、アタシなんかが応援するよりも、ミニFMにとってもっと頼りになるスゴイ助っ人が、最近になって登場しました。それは、ブロードバンドです。


ブロードバンドで飛躍するミニFM

 というのも、ミニFMというメディアの最大の弱点は、放送範囲の狭さだったんですね。それを補うために、他地域の局と連携して、ネット局としてお互いの番組を放送し合ったりしていたんですが、どうしても限界がある。そこで、ブロードバンドです。ブロードバンドを使えば、FM放送並みとは行かないまでも、ある程度快適に音声を配信できる。今まで限られた地域でしか聴けなかったミニFMの番組が、全国、いや全世界どこにいても聴けるようになるわけです。

 これを利用しない手はないってことで、最近はどこのミニFM局も、ネット経由で番組が聴けるようになってきました。そもそも個人レベルで音声を配信している人ってのは、あまりいません。テキストで日記を綴ったり、デジカメで写真を撮ったりするのならともかく、トークや音楽をきちんとした番組としてまとめるには、それなりのノウハウが必要になる。その点、今までミニFMを一所懸命やってきた人っていうのは、ノウハウがかなり蓄積されています。録音機材も既存の録音・編集装置が流用できるし、すぐにでもブロードバンド放送がスタートできる体制が整っているというワケ。本来は電波とネットということでメディアとしてはライバル関係にあるんですが、そんなしがらみを越えたメリットに、ミニFM局は着目し始めました。





危ないギャグ・トークが炸裂!!

「KZI.COM」は動画コンテンツも充実
 ゴタクはこれくらいにして、ともかく色々なミニFM局のサイトを回ってみましょう。まずは「KZI.COM」。ここは千葉県船橋市で活動している局なんですが、とにかくオリジナルのブロードバンド・コンテンツが多い。サイトのデザインも良くて、下手な民放のホームページより、よっぽどイケている。タイムテーブルを見ると、毎週一回、日曜の深夜に放送しているようですが、リアルオーディオでも聴けるので、ちょこっと再生してみましょう。

 オススメは「お悩みすとの解決! 逆噴射」という番組。イトウあつおさんというお笑い芸人が出ているんですが、コレが実にオモロイ。一応、「人生相談番組」となっていますが、前振りのギャグがタマランですわ。話してる内容はかなりブラックで過激。とても普通のテレビやラジオでは流せないようなネタも出てくる必聴番組です。

 このサイトには他にも色々なブロードバンド・コンテンツが満載されていて、芸人を支援する番組だとか、インディーズのミュージシャンを紹介する番組だとか色々あります。あと、千葉マリンスタジアムの応援風景を集めた「俺たちの誇り千葉マリンズ」や「CHIBA MUSICIAN NETWORK TV」など、地元の情報も配信してるところもイイ! ミニFMが出発点だっただけに、きっとローカルなネットワークというものを大切にしてるんでしょう。うーんミニFM、侮り難し!!



URL
  KZI.COM
  http://www.kzi-fm.com/
  KZI.COM タイムテーブル
  http://www.kzi-fm.com/fm/time.html




ミニFMで商店街が一体に

「PAL-FM」のWebサイト。リニューアル中だが放送は行なわれている
 さて、ローカルなネットワークといえばすぐに思い浮かぶのが「商店街」ですが、なんとミニFMを利用することで、商店街の活性化に役立てている放送局もあります。東京都北区の「PAL-FM」というサイトに行ってみましょう。

 「PAL-FMの生い立ち」というリンクをクリックするとプロフィールが見られるようになっているんですが、この局って、最初は商店街に訪れるお客に向けた電波広報から出発しているんですね。その後は地元の家電量販店内にスタジオやケーブルテレビ局などにスタジオを変えながら、何十人ものボランティアスタッフが活動を支えています。ミニFM局ってどうしても小所帯を想像してしまうんだけど、ここは実にしっかりした体制なんです。放送の方は毎月8日、18日、28日の夜に行われていますが、内容は語学講座や地域密着情報からバラエティーまでと実に多彩なラインナップ。しかも、放送中はネットからも生放送で聴けます。

 実際に聴いてみたんですけど、面白いですよ、コレ。「オンエア中のスタジオ!!!」というリンクをクリックしてもらえば分かると思うんですが、スタッフの人たち、すごく楽しそうなんですね。パーソナリティやゲストが北区に縁のある人ばかりなので、和気あいあいとやってる感じ。あと、メールマガジンを配信しているところにも、気合が感じられます。



URL
  PAL-FM
  http://www.netcity.kita.tokyo.jp/palfm/index.htm




ミスコンまで主催!!

三軒茶屋の居酒屋から放送する「FM HAPPY」
 あと、忘れてはならないのが三軒茶屋の「FM HAPPY」。ここも、街との関わりをとても大切にしてる局ですね。ふだんはスタジオから発信しているんですが、地元主催の「三軒茶屋フェスティバル」にも出展してて、なんと「ミス三茶」というコンテストまで開催している。

 ここもブロードバンドによる放送をネット上で行なっていますが、実はこれ、本放送ではありません。いつもどのような放送を流してるか、というのをDJたちが語っているだけなんですが、PRとして実に上手くできてる。DJたちの写真も掲載されていて、臨場感もあるしね。このネット放送を聴いただけでも、現地に行って聴いてみたくなります。しかもこの局のスタジオは三軒茶屋のとある居酒屋だそうで、この居酒屋に行けば、飲みながら楽しい放送を聴くこともできます。酒好きのアタシにはタマランですなあ。

 まあ、本放送は聴けないものの、こういう使い方もあるということで、ミニFMとブロードバンドの関係はさまざまです。まだまだ他にも面白い局がありますけど、今週はチト字数が尽きてしまいました。次回も引き続き、全国のオススメミニFM局サイトを紹介していきましょう。



URL
  FM HAPPY
  http://www3.tky.3web.ne.jp/~mashika/fmhap86.html

2002/05/13 11:13

下柳泰三
自称“書き屋”。ジャンルを選ばず心が揺さぶられればパソコン記事でも映画評でも何でも書く、サスライの原稿執筆人。現在某街歩き雑誌(ヒミツ)をメインに活動中。ホコリをかぶったケーブルモデムを横目に今日も書きまくる!
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