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DJのおしゃべりと音楽もブロードバンドで


 さて、今週もブロードバンド・ミニFM放送についてのお話です。微小電波と、他局との相互ネットワークだけで頑張っていたミニFM局が、ブロードバンドというツールを得て、その魅力あるコンテンツを全世界に向けて配信できるようになった。こりゃスゴイことです。そんな中でも、地域とのコミュニティとか地元の芸人さんとかを重視した番組作りがミニFMの魅力なんだ!! と前回は書きましたけど、FM放送にはもう一つ大きな魅力がある。それは音楽です。

 今みたいにCDが普及する前、レコードを聴くには高いステレオを買うしか方法がなかった。というわけで、あまりお金が無い若い世代は、FMラジオをカセットテープでエアチェックしてたんですね。アタシも中学生のときはよくやりました。好きな番組を録音して、ダブルラジカセで必死にマイテープを作ってましたよ。あの頃は新譜のCDをDJの声も入れずにまるまる放送するなんて番組もありましたからね。家にある古いレコードプレーヤーで聴くよりも、FM放送の方がかえって音がイイくらいで、その雑音の無さに感動して聴いてました。FM放送が一番元気な頃だったんじゃないでしょうか。番組表が書かれた雑誌もたくさん出てたしね。

 DJの面白いトークもイイですけど、音楽が流れるとピリっと引き締まりますよね。ミニFMだって、そんな音楽の楽しさ、素晴らしさを存分に味わえます。とくにメジャーな放送局ではかからない、新人アーティストやインディーズミュージシャンの音楽だってガンガン流れる。似たようなヒットソングばかり流れる大手放送局に飽きた方にはぜひオススメしたいもんです。


新人アーティストを発掘

HEART OF GOLD
 音楽が素敵な番組として、イチオシなのがコレ!! 「HEART OF GOLD」です。この番組は全国のミニFMやインターネットラジオ局で流れている番組なんですが、実にクオリティが高い。DJの鹿郷美穂さんという人の声がとても聴きやすくてねえ、おまけにトークも面白い。新人アーティストのオーディションイベントとか、注目のアーティストをゲストに招いたりと、かなり気合の入った内容です。

 聴いてみましたけど、音が圧縮されているストリーミング放送とはいえ、けっこうクリアな音質でヒジョーにイイ。あとスタッフに阪神ファンが多いのか、なんと阪神の開幕試合の日に、東京ドームの外で野外収録もやってました。アナウンサーとか新聞記者とかも交えて色々と今年の阪神の行方を占ったりとか、トラキチにとってはタマラン内容です。

 で、この番組なんですが、前号で紹介した船橋のミニFM「KZI.COM」のほか、湘南のミニFM局「FM KAZZ」や「COASTLINE 88.0FM」などでも流れているという、かなり露出の機会が多い番組。要するにネットやFMで放送したりする機能を自らは持たないけれど、コンテンツだけを提供するというスタンスなんですね。大手ラジオ局の場合、番組は自前で収録するのがほとんどだけど、それとは全く違うやり方です。こういうのもミニFMやインターネットラジオならではですね。同様のスタイルの番組制作集団が、これからはどんどん増えていくかもしれません。



URL
  HEART OF GOLD
  http://www.radio-japan.com/heart/




曲は短いけどそれもまたヨシ!

Shower FM
 さてさて。次に紹介するのは北海道は函館、それもベイエリアのミニFM局です。その名も「Shower FM」。良質のサウンドが次々と降りそそぐ、ってなことを連想させる良いネーミングですねえ。多数のボランティアスタッフが支えている活気のある放送局ですが、クラブと協力したり、色々とイベントを行なっているようです。トップページには颯爽と演奏するミュージシャンの映像がドーンと出てきて、なんだかスタッフの音楽へのこだわりが伝わってきます。

 ここはネットでのストリーミング放送もやってるんですが、こりゃまたスゴイ。「WEB RADIO!」というボタンを押すとリストが表示されるんですが、主要な番組がほとんど聴けるようになっている。実際に聴いてみると、トークも本当に面白いんですね。選曲もセンスが良いし。ただ、メジャーレーベルの曲の場合は音楽著作権の問題が絡んでくるので、番組内に収録した曲はイントロと最後の部分だけが流れるようになってます。

 全部まるごと聴けないのはちょっと残念だけど、アタシなんかはこれでもイイかな? とも思ってしまいました。ストリーミング放送の場合、早送り・巻戻しをする場合、ちょっと時間がかかりますよね。確かにブロードバンド時代になって以前よりは快適になったけど、それでもCDとかMD並みの反応速度とは言い難い。だから、もし自分の好みに合わない曲が流れてきた場合、ちょっとカッタルく感じてしまうこともあります。

 アーティスト名とか曲名は番組の中でしっかり紹介してくれるし、その曲のサワリだけ聴いて「ああ、良さそうな曲だな」と思ったら、CDショップに買いに行けばいい。放送は曲を知るきっかけであって、それならば短く切ってくれた方が、かえって「効率がいい」とも言えます。まあネットの登場でインタラクティブ・コンテンツが盛んになってきた今、音楽にしても色々な聴き方があるっちゅーことですな。



URL
  Shower FM
  http://showerfm.dish.ne.jp/top.html




高校生によるパワフル放送

near-FM
 最後に紹介するのは京都東山地区で放送している「near-FM」。なんと高校生が運営しているミニFM局です。トップページには「発信者側は素人。貴方の番組に対する意見はすぐに反映され、番組にすぐに参加できますよ」と告知してある。なんかほのぼのしてて良いですねえ。手作りで一生懸命やっている感じが伝わってきます。

 ページのデザインも整理されていて見やすいし、トップページに「InterNetRadio」と大きく表示されているので、訪れた人は「ああ、ネットで聴けるんだ」とすぐに気がつきます。これ、結構大事なことだと思うんですよ。「ミニFMって、離れたところからじゃ聴けないんでしょ」と固定観念を抱いている人が多いと思うんですけど、今はそんな時代じゃないんだー!! ということを知らしめる意味でも、「ネットでも聴ける」ということを大々的に宣伝した方がいいと思うんです。まあそれはさておき、まずは聴いてみましょう。

 オススメは「izakaya“shichijo”」という音楽番組。「他では聴けないいい曲はこちら」と書いてあるんですが、これはインディーズのアーティストの曲を流す番組なんですね。全国から募った色々な曲が聴けるんですが、このチョイスがなかなかセンスがいい。もちろん、あくまでも「アタシ的には」ですけど。このサイトには親切にも、今まで放送で流したアーティストのリストも載せているので、インディーズミュージシャンが好きな方は、ここを取っ掛かりにしてもいいかもしれません。

 あと感心したのは、転送速度が選べるようになっていることですね。トークやバラエティ番組は14kbps、28kbpsとモデム用の低速度のコースしかないんですが、音楽プログラムは転送速度200kbpsの高音質が選べる。しかもステレオですよ。混んでる時間帯でも途切れなく聴くために、番組ファイルをそのままダウンロードできるようにもなっている。とても高校生とは思えない気の配りようで、いやはやマイッタ。末恐ろしいです。あ、音楽番組も良いですけど、バラエティ番組も聴いてみてくださいね。ワカゾーたちのパワフルなトークが存分に楽しめますんで。



URL
  near-FM
  http://nearfm.com/




 それにしても全国には色々なミニFMがあるんだなー、と今回調べてみて、改めて思いました。プロが作った本格的な番組だけではなく、こういうゲリラ的な番組が聴けるのもインターネットの醍醐味です。ひょっとしたら、アナタのお気に入りの番組が見つかるかもしれませんぞ。


2002/05/20 11:18

下柳泰三
自称“書き屋”。ジャンルを選ばず心が揺さぶられればパソコン記事でも映画評でも何でも書く、サスライの原稿執筆人。現在某街歩き雑誌(ヒミツ)をメインに活動中。ホコリをかぶったケーブルモデムを横目に今日も書きまくる!
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