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【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
スピードネット馬場副社長講演「ノマディックサービスの実現に向けて」

スピードネットの馬場博幸副社長
 e-Drive 2002のジェネラルセッションでは、スピードネットの馬場博幸副社長が「無線アクセスサービス・無線LAN技術の可能性」と題し、自社無線アクセスサービスおよび試験サービス中の公衆無線LANサービスについて語った。

 まず馬場社長は無線アクセスサービスの現状について説明。無線アクセスサービスは月間データ転送量の上限ごとに料金が異なり、定められた転送量を超過した場合、通信速度を60kbpsに制限するというサービス体系を取っている。この月間データ転送量について馬場副社長は「サービス開始当初こそヘビーユーザーが多く、1人あたりのデータ量は大きかったが、最近は減少傾向にある」と説明。データの月間伝送総量は500MB程度のユーザーが最も多く、平均しても1.5GB程度だという。この平均値はもっとも安いプランの上限である月間5GBにも届かず、60kbpsへの制限も今のところ実施されていない。このデータから馬場副社長は「ライトユーザーが増えると同時に、インターネットが大衆化している」と指摘した。

 このような大衆化がさらに進めば、インターネットは1家庭1回線の時代から1個人1回線というパーソナル化が進むと馬場副社長は予測。「ユーザーが動き回るところに回線がくっついてくる」という比喩のもと、公衆無線LANサービスが近い将来重要になってくると語った。馬場副社長によれば、公衆無線LANサービスには「技術」「サービス」「用地」といった3つの視点が必要であるという。

加入者の伸びに連れて1人あたりの平均トラフィックは下がっている
 この中でも馬場副社長は「サービス」が重要であるとコメント。同社が掲げる「遊牧民的にどこでも利用できる」という意味合いの「ノマディック」サービスを実現するためには、ユーザーが気軽にサービスを利用できる環境が必要なのだという。せっかくの公衆無線LANサービスも、事前登録しなければ利用できないというのであればユーザーの利便性は大きく損なわれる。馬場副社長は公衆無線LANサービスを公衆電話やパーキングメーター的なサービスとしてイメージ。一時利用を含めた利用環境を構築することが必要であるとした。そのためスピードネットが9月から実施している公衆無線LANの試験サービスではスクラッチカードを用意。スピードネットユーザー以外の利用者も24時間利用できる。

 今後ますますの高速化が期待されるブロードバンドであるが、馬場副社長は高速化について「あくまでニーズ次第」とコメント。現在主流のインターネット接続やメールといった利用法はメガ単位の回線で十分であり、100Mbpsといった超高速回線の普及はそれだけの回線を必要とするキラーコンテンツ次第であると指摘した。

 しかしながら2002年9月にIEEE 802.11委員会が無線で100Mbps以上のスループットを実現するための「High Throughput Study Group」を設置、無線の高速化という動きは着実に進んでいるという。このためスピードネットでは5GHz帯による無線アクセスの屋外実験などを踏まえ、さらなる高速化の需要があればすぐに対応できるよう、万全の体勢を取っていくとした。

 馬場副社長は講演後、報道陣の質問に対して答える場を設け、スピードネットの今後の展開について語った。

スピードネットが実施中の公衆無線LANサービス
 現在実施中の公衆無線LANサービスについては「あくまで技術的な検証段階」とコメント。無線LANサービスはまだまだ市場規模が小さく、先行しているアメリカでも全体で年間1億円規模であり、事業としての採算性は不透明だという。ただし公衆無線LANは設備コストがそれほどかからず、スループットもそれほど高くないため、バックボーンにADSLを導入するといった方法でコストの削減を図ることが可能であるとした。公衆無線LANサービスへのIEEE 802.11a導入については「もちろん検討しているが、端末が普及しない限りサービスインは難しい」として、普及目覚しいIEEE 802.11bによるサービスの提供が現実的であると語った。

 また、他社とのローミングに関しては「ぜひ積極的に対応したい」とし、親会社である東京電力のPHS事業の経験から「サービス提供範囲の小さいものを1事業者でカバーしていくのは無理がある」と心中を明かした。将来的なサービス提供地域としては、貸し会議室といったビジネスエリアのほか、「実際に利用するユーザーは少ないのでは」と馬場副社長が予想する高級ホテルだけでなく、現場の技術者が利用できるような宿泊施設へのサービス提供が必要であるとした。

 スピードネットの無線アクセスサービス会員数は10月1日現在で2万2000人に上るが、収益的には10数万人のユーザーが必要だという。今後はマンションの1世帯だけにFWAによる無線アクセスサービスを引き込むだけでなく、マンション全体に光ファイバを引き込み、そこから個別に無線アクセスを提供するといった方式やVDSL装置などの採用など、細やかなサービス体系を検討しているという。

 ブロードバンドの大本命と言われるFTTHについても「需要はまだまだ小さく、場合によってはこのまま需要が来ない可能性もある」と大胆予測。海外では「ADSLだけで十分なのではないか」という風潮もあると語った。FTTHが必要になるほどのキラーコンテンツについても「それだけの広帯域を必要とするアプリケーションは世界レベルで共通でなければならない」と冷静に分析、今は100Mbpsといった高速サービスが必要になった時にいつでも打って出られるよう「竹槍を研いでいる状態」と古風な比喩で締めくくった。


□関連記事:スピードネット 馬場副社長、無線アクセスサービスのメリットを強調[WIRELESS JAPAN 2002]
http://bb.watch.impress.co.jp/news/2002/07/19/wjspd.htm
□関連記事:スピードネット、スクラッチカードでIDなどを配布するホットスポットサービス
http://bb.watch.impress.co.jp/news/2002/09/11/speednet.htm
□関連記事:スピードネット、5GHz帯による電波伝搬実験を公開
http://bb.watch.impress.co.jp/news/2002/10/04/spdnt.htm
□スピードネット
http://www.speednet.co.jp/
□e-Drive 2002
http://www.key3media.co.jp/e-drive/

甲斐祐樹
2002/10/25 19:56

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