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【WIRELESS JAPAN 2005】
Airgo高木氏「IEEE 802.11nは2005年11月のドラフト提出が目標」

WIRELESS JAPAN 2005の「4G+IEEE 802ワイヤレスフォーラム」では、Airgo NetworksのDirector of Application Technologyである高木映児氏が、MIMO技術の特徴とIEEE 802.11nの標準化動向について講演を行なった。


MIMOは高速化・距離延長だけでなく互換性の高さも特徴

Airgo Networksの高木映児氏

MIMOと無線通信の歴史
 はじめに高木氏は、MIMOを含む無線通信の歴史を紹介。IEEE 802.11が標準化されたのは1997年のことだが、それよりも20年以上前の1975年には多重偏波タイプのMIMOがすでに実用化され、1996年には現AirgoのCEOであるラリーがMIMO-OFDMを、同年にフォッシーニがBLASTと呼ばれるシングルキャリアMIMOを発表している。2002年にはMIMO技術をベースとしたIEEE 802.11のHigh Through put Study groupが、2003年にはIEEE 802.11のTask group n(IEEE 802.11n)が設立され、現在は標準化に向けた作業が進められている。

 MIMOが注目される理由として高木氏は、さまざまな通信高速化技術の例を挙げて説明。周波数帯域を拡張する高速化の方法は「IEEE 802.11nでもオプションとして検討されているが」と断った上で、「周波数効率が高まるわけではなく、あくまで副次的なものだろう」と指摘。また、多値度の増加による高速化も「108Mbpsを実現するには1024QAMもの多値化が必要で、これではRF部への性能要求が高すぎて現実的ではない」と語った。

 これに対してMIMOは、アンテナ数を増やすことで高速化を図るために、原理上は周波数帯域を増やすことなくいくらでも容量を増加することが可能という。また、MIMOは複数のアンテナを束ねて利用しているが、低ビットレートほど無線の受信感度は高く、さらに複数の電波を合成することで電波を最適化できるため、1つのアンテナで同じスループットを実現する場合よりも電波の距離延長が見込めるという特性も持っているとした。

 ロバスト性もMIMOの特徴で、複数アンテナのメリットを活かしたダイバーシティ効果が見込めるため、位置や方向に影響されにくい安定したスループットが見込めるという。また、高速かつ安定したスループットにより、HDTVのような製品にも魅力的なインフラになるほか、アクセスポイントの設置数を削減する効果もあるとした。

 高木氏が「もう1つ強調したい点」として挙げたのが、MIMOの互換性の高さ。高木氏は「IEEE 802.11aが登場した時、IEEE 802.11bよりもスループットは上がるが11bのインフラがあるために11aが入りにくかった。良い技術が出てきてもなかなかすぐは変わらない」とした上で、「MIMOはIEEE 802.11a/b/gと共存できる技術。しかもパケット単位での通信が切り替えられるため、複数の通信規格が同時に利用できる」とのメリットを示した。


MIMOが注目されている理由 1アンテナごとの受信感度が低いため、同じビットレートのアンテナよりも通信距離の拡張が可能

複数の電波を合成することで電波の受信最適化が可能に 互換性もMIMOの特徴

IEEE 802.11nは2グループの共同提案で11月のドラフト提出が目標

Task group Nの現在の状況
 続いて高木氏は、IEEE 802.11n標準化の状況を紹介。現在はAirgoの所属するWWiSEとTGn Syncの2グループの提案のうち、2005年3月の会議でTGn Syncの提案が残ったが、高木氏は「この時点でTGn Syncにほぼ決まったとの報道があったが、実際にはその後のConfirmation Voteで75%の支持を取る必要があった」とコメント。実際にはTGn SyncとWWiSEのメンバー数が拮抗していたために75%の支持を取ることができなかったという。

 Confirmation Voteで決まらなかった場合、標準化作業のルールとしてはWWiSEを含めてセレクションをやり直すことになるが、高木氏は「TGn SyncとWWiSEがマジョリティーになっているため、どちらか片方では75%の支持は難しい」と指摘、現在はTGn SyncとWWiSEの共同提案が進められているとした。「最短では11月のミーティングでドラフトを提出したい」との見込みだという。

 このように標準化が完了していないIEEE 802.11nだが、無線LANの相互接続性を保証するWi-Fi Allianceはすでに動き始めているという。高木氏は「IEEE 802.11bの時はすでに製品が世に出回っており、相互接続性の確保に苦労した経緯から、IEEE 802.11gの時には標準化と同時に相互接続性のテストが始まった」という例を紹介。「IEEE 802.11nに至っては、Task Group nが始まるとほぼ同時にWi-Fi Allianceから市場の要望に関する意見提案が寄せられていた」と語った。


WWiSEとTGn Syncの参加メンバー Wi-Fi Allianceから提出されたMarket Required Document

関連情報

URL
  WIRELESS JAPAN 2005
  http://www.ric.co.jp/expo/wj2005/
  Airgo Networks
  http://www.airgonetworks.com/

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(甲斐祐樹)
2005/07/13 19:38
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