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【WIRELESS JAPAN 2006】
スカイプ岩田氏が語るSkypeとワイヤレスの可能性

 Wireless Japanのネットワークコンファレンスでは、スカイプ・テクノロジーズで日本マーケット開発マネージャー兼開発者支援を担当する岩田真一氏が登壇。「ワイヤレスとSkypeとその周辺」と題し、P2P電話ソフト「Skype(スカイプ)」に関する講演を行なった。


ワイヤレスへの対応でSkypeの利用シーンが広がる

スカイプ・テクノロジーズの岩田真一氏
 岩田氏は講演の冒頭、「Skypeはアプリケーション層で動作するソフトウェアであって、無線技術ではない。インターネットよりも下層がワイヤレスでもワイヤードであってもSkype自身は何も変わらない」と前置き。それを踏まえた上で、Skypeをワイヤレスで使った場合の特徴に焦点を当てて講演を行なった。

 ワイヤレス環境でのSkype利用事例の1つとして岩田氏が挙げたのが、飛行機内でインターネット接続が可能な「Connexion by Boeing(CBB)」。岩田氏はCBBからSkypeを使って自宅とビデオチャットを行なった場面を紹介し、「CBBが使えれば飛行機内に用意されたクレジットカードで使う電話機も必要なくなるのではないか。また、隣の席の人が私のSkypeに興味を持てば、その場でSkypeをダウンロードして使い始めることすらできる」とコメント。「海外のホテルでも、インターネットにつながればSkypeができるので、ホテルの電話をほとんど使わなくなった」と語った。

 ワイヤレス環境で利用できる端末としては、ソニーのモバイル向けPC「VAIO type U」」を紹介。文庫本に近い小型サイズの筐体ながらOSにWindows XPを採用しており、「Windows向けのSkypeがそのまま動作する」。さらに「PCの次のステップ」としてWindows Mobile向けのSkypeも例に挙げて説明。現在はW-ZERO3などPocket PC対応端末で動作するが、Windows MobileのSmartphoneへの対応も予定しているほか、欧州などで使われているSymbian版のSkypeも開発中であり、Skypeのモバイル環境拡充を進めているとした。

 パイオニアコミュニケーションズのスカイプ対応コードレス電話「TF-FS55M-S」は、ベースステーションをPCとUSB接続する必要があるものの、一般加入電話とSkypeの両方をコードレス電話機から利用できる。岩田氏は「生産数が少ないのかもしれないが、TF-FS55M-Sは現在売り切れが続くほど人気を集めていると聞いている」と補足した上で、「最終的にはSkypeが端末に組み込まれ、PCすら必要なくなるだろう」と指摘。米NETGEARが開発したSkype内蔵の無線IP電話機を紹介したほか、Skype内蔵の据え置き電話機も登場する予定とし、「据え置き型の電話機であれば、実家の親もSkypeを気軽に使えるようになるのでは」とSkypeの普及に期待を示した。

 Skypeは災害時の通信手段としても役に立つという。岩田氏は「あるテレビ局では、災害時に備えて社員にSkypeのIDを取得するよう呼びかけていると聞いている。実際、ロンドンのテロ事件の際には、Skypeでロンドンに住んでいた息子と連絡が取れたという感謝の言葉が公式ブログに寄せられた」との事例を紹介。愛・地球博で実験が行なわれた無線LAN搭載バルーンを例に挙げ、「電源の問題はあるが、こうした設備があれば無線とSkypeが非常時の通信手段にもなりうる」とした。


CBBからのSkype利用例。「次は飛行機同士でのSkype通話にチャレンジしてみたい」 Windows Mobile for SmartphoneやSymbianへの対応も予定

Skypeを内蔵したモバイル型の端末。据え置き型の端末も開発中 無線とSkypeの組み合わせで非常時の通信手段にも

APIの公開でSkypeベースのSNSも構築可能

Skype APIの概要
 講演の後半では、SkypeのAPIも紹介された。現在Windows Mac OS X、GNU/Linuxに対応しており、Skypeロゴを使わない限りでは無償で利用が可能。このAPIを利用することで、Skypeと連携したソフトウェアやハードウェアの開発が可能になるという。

 Skype APIを用いたソフトウェアの事例としては、ファイル転送やチャットなどSkypeの機能を個別にオフにできるZetta Technologiesの「オフィスデ for skype」、Skypeのグループ着信や転送などが可能になるマイスターズコーポレーションの「Beltre」を紹介。「欧米では1人に1つ電話機が用意されているが、日本ではグループ着信が主流」との違いを説明した岩田氏は、「Skypeが自ら日本独自の文化に対応することはできないが、APIを公開することで日本の商慣習や企業文化を知っている企業が対応ソフトを開発できる」とコメント、「これがSkypeのエコシステム」と自信を見せた。

 Skypeのバージョン 1.4以降で実装されたSkype A2A APIも紹介。このAPIを使うことでSkypeネットワーク上に別のアプリケーションを構築することが可能になる。岩田氏は「ファイアウォールやNAT超えはSkypeが担当し、その上で自由なアプリケーションを開発できる」とのメリットを説明。Skype A2A APIを利用したゲームやSNS、情報家電などの例を挙げ、「典型的にスケーラビリティが必要なSNSはP2Pベースでの構築が適しているのではないか」と語った。現在のところ、Skype A2A APIを利用するにはクライアントソフトのインストールが必要だが、インストールが必要ないA2A APIの利用も今後検討していくという。

 こうしたA2A APIの公開に加え、登録者数で1億以上、同時オンライン数で650万を超えるSkypeは「すでにアプリケーションというよりもインフラになりつつあるのかもしれない」と指摘。「P2Pベースのフレームワークは数多いが、普及が進まないためにフレームワークで留まっている。A2A APIの上にアプリケーションが構築できるというオーバーレイ・ネットワークが実現でき、普及も進んだSkypeであれば、ネットワークOS的に使えるようになる日も近いのではないか」と期待を示した。


Skype APIを利用した企業向け製品の例 Skypeのネットワーク上に別のアプリケーションを構築できる「Skype A2A API」

関連情報

URL
  WIRELESS JAPAN 2006
  http://www.secretariat.ne.jp/wj2006/
  スカイプ・テクノロジーズ
  http://www.skype.com/intl/ja/

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(甲斐祐樹)
2006/07/19 17:07
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