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【CEATEC JAPAN 2007】
HD-PLCの本格化は2010年以降。他規格との共存や標準化も検討

 CEATEC JAPAN 2007で3日、HD-PLCアライアンスが「HD-PLCの現状と将来について」と題したセミナーを開催した。セミナーでは、PLCの市場動向や今後の製品展望が紹介された。


パナソニック コミュニケーションズの小林氏
 HD-PLCアライアンスは、松下電器産業が高速PLC規格「HD-PLC」の普及拡大を目的に9月に設立した団体。松下電器産業やパナソニック コミュニケーションズ、松下電工のほか、9月25日時点でアイ・オー・データ機器、沖電気工業、バッファローが参加している。

 セミナーには、同アライアンスで事務局を務めるパナソニック コミュニケーションズから、小林英次 ホームネットワークカンパニー PLC事業推進プロジェクト長 ディレクターらが登壇。小林氏は冒頭、松下が手がけた電灯用二股ソケットを挙げ、「電灯用二股が電力分岐ハブならば、HD-PLCは電力線を使った情報分岐ハブである」と説明した。

 HD-PLC製品は2006年6月の米国発売を皮切りに、12月には日本と欧州で発売を開始。小林氏は、HD-PLCが持つ特徴の中で、「パソコン不要でセキュリティ設定が簡単に実現できるのは、家電メーカーとして重要な点」と語った。また、最近の新製品トピックとして、4ポートハブを内蔵した増設用アダプタ、ルータやAC電源にHD-PLCモジュールを組み込んだ製品が発売された点を紹介した。


HD-PLCの特徴 これまでに発売・発表された対応機器 HD-PLCを通じたバリューチェーンの拡大を目指す

HD-PLC購入者は半数以上が満足。不満への対応や値下げも重視

満足度および購入動機のアンケート結果
 実際に製品を利用した消費者の声として、松下の「まいぴー」に登録するユーザー249名のアンケート結果を紹介。母数としては少ないが、小林氏によれば他社が実施したアンケートも同様の結果が得られているという。

 購入層は40~50代が多く、性別は男性が95%で、職業は会社員が63%だった。また、購入地域は首都圏、関西、東海の順。購入先は家電量販店が83%と多いが、最近ではオンラインショッピングの割合が伸びているとした。

 満足度に関しては、大変満足が45%、やや満足が32%。半数以上が満足している点を踏まえた上で、小林氏は「大変不満、やや不満だという声もある。環境によってノイズが発生するケースや、より高速で映像を宅内配信したいという点に答えるのが今後の課題になる」と語った。

 小林氏は続けて、中低速PLCを含めた全世界市場規模予測を紹介。それによれば、現時点では長距離トラックや船舶などが利用する14Mbpsクラスが600万台と最も多く、2007年以降も100万台の伸びが期待されているという。また、85Mbpsの中速PLCはインターネット用途や電力アクセス系で利用されており、500万台の市場規模。ただし、この中速PLCに関しては今後200Mbpsクラスにシフトする可能性があるとした。

 HD-PLCなどの高速PLC規格が謳う200Mbpsクラスは、IPTVやインターネット用途を中心に2006年までに30万台の規模。毎年倍増すると予測するが、小林氏は「現時点では国内市場が主流である」と述べた。国内市場シェアは他のPLC規格の登場以降は若干減少しているが、依然としてHD-PLCが大半のシェアを占めているという。

 一方で、BCN調査による実売価格が徐々に値下がりを見せている点について、「Wi-Fiでも価格が下落したことで爆発的に普及した」とコメント。「値下げ要因は他規格との競争や各社の判断もあるが、普及に向けた過程とも言える」と語った。


購入台数はスタートパックのみが1番多い。使用場所は戸建て、集合住宅の順 PLCの全世界市場規模予測 国内のHD-PLC価格状況

デジタル家電や一般家電へと広げ、2010年以降に本格化を図る

今後の製品展開
 HD-PLC製品の広がりについては、2006年および2007年はPC周辺機器を中心に展開しているという。そして、2008年にはデジタル家電、2009年には一般家電、2010年にはシステム向けの連携を強化する考えで、「2010年以降にビジネスは本格化する」と述べた。

 また、9月には松下の薄型テレビ「VIERA」と連携可能な「どこでもドアホン用PLCアダプタパック」の発売を開始。工事不要で、ドアホンとテレビを連携できる利便性をアピールした。加えて、通信事業者のニーズに応えるとして、NGNに向けたQoSのサポートも進めているという。小林氏は「開発はほぼ終了しており、各事業者のニーズに対応させる作業をしているところ」と説明した。

 一方、HD-PLCアライアンスの活動内容として、「通信互換環境の実現」「家電やビジネス機器を繋ぐ推進活動」「PLC利便性追求に向けたプロモーション活動」の3点を紹介。小林氏は、「特に通信互換環境の確保は重要だと考えている」と語った。また、2008年1月をめどに一般家庭を再現した検証実験ハウスを福岡県博多にあるパナソニック コミュニケーションズの工場敷地内に設置することを明らかにした。

 HD-PLCの標準化動向については、2007年6月にIEEE P1901に3提案を行なったほか、2007年10月にITUにHD-PLC方式の提案を予定。さらに欧州のETSIに共存方式を提案しているという。小林氏は「HD-PLCは松下の独自規格、国内限定ではないかと言われるが、このように標準化作業を進めている」と付け加えた。

 加えて、「HomePlug AV」規格などを策定する「HomePlug Powerline Alliance」と松下がIEEE P1901にマージ仕様を共同提案したと紹介し、今後も共同で取り組みを行なっていく考えを示した。小林氏は「すぐに変化が生じるわけではないが、両規格の共存や互換性、新しい標準規格を作る取り組みも進めているところだ」と述べた。

 最後に小林氏は、HD-PLCのOEM/モジュール供給やアライアンス活動、標準化活動、プロモーション活動を改めて紹介し、「方式にこだわって、ユーザーに迷惑をかけることがないよう今後も取り組んでいきたい」と語った。


HD-PLCアライアンスの設立趣旨 標準化活動も行なっているという CEATECのHD-PLCアライアンスには25社50製品が展示されている

関連情報

URL
  CEATEC JAPAN 2007
  http://www.ceatec.com/
  HD-PLCアライアンス
  http://www.hd-plc.org/

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(村松健至)
2007/10/03 19:36
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