え~毎度バカバカしいお話をひとつ。え? オマエの話はいつもバカバカしいって? そんなこといっちゃいけません。まあこういう文体ですからアタシもよく誤解されるんですけど、普段からいつもこんな口調じゃありませんよ。大企業とかに取材にいけば、「頂戴いたします」なんていいながら名刺を受け取ったりなんかして。礼儀正しいもんです。それに、文章を書くのと喋るってのは大違いですからねえ。文章でいくらオチャラケても、それをそのまま会話で再現しようとすると、なかなか難しい。アタシは一応、文章で金を貰っている人間ですが、やはり「喋り」に関してはその道のプロにお任せしたほうがよいでしょう。
喋りのプロって、いったいどういう人なんでしょうね。アナウンサーとかDJとかお笑い芸人を思い浮かべる人が多いと思いますけど、日本古来の喋りのプロを忘れてやしませんか? そう、落語家です。最近の若い人たちは寄席を見たことのない人がいるかもしれませんけど、もったいないことだと思いますよ。テレビのバラエティを見慣れた人も、落語を見ればまた違った楽しさが味わえることと思います。なんせ、大げさな道具を何ひとつ使わず、たった一人で大勢の観客を笑わせるんですからね、これはスゴイ芸ですよ。しかも、笑いだけじゃない。落語には“人情噺”というジャンルもあって、恐がらせたり、泣かせたり、ハラハラドキドキさせる話もあるんです。つまり、物語性を重視した落語ですね。かなりの力を持った噺家が人情噺をやると、ホントに観客は鼻をすすり上げて泣いちゃうこともあります。ここまでくると、もはや名人芸です。寄席の会場は映画館のようにどこにでもあるわけじゃないけど、ヘタな映画を観るより落語を見たほうがよほど充実した時間が過ごせるってもんです。
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ブロードバンドで落語三昧
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落語が見られる「インターネット落語会」のサイト |
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語り尽くせないほどの魅力を持つ落語ですが、1回も落語を生で見たことのない人が、いきなり寄席にいくのもなかなか難しいですよね。そんな落語の初心者の皆さんに朗報です。なんと、ブロードバンドで落語が見られるサイトがあるんですよ。テレビでもたまにやってますけど、わざわざ録画したりするのもめんどうくさい。ネットならいつでも見たいときに見られますからね。
ハイ、それではどんどん紹介していきましょう。まずは「落語協会」が運営している「インターネット落語会」のサイト。ここは協会のホームページの開設記念で作られたコーナーなんですが、なかなかよくできてます。第1回から始まって、もうすでに第3回まで達している。ウンウン、音声も画質もけっこう明瞭で、聴きやすいです。お客さんからもかなり反響があったらしく、回を追うごとにマイクの収録位置なども微妙に変えているようです。がんばってますねえ。ここで注目したいのは、前座の人が演じている様子も収録している点です。テレビなどではいわゆる大御所の人の演技しか見られない場合が多いんですが、若手のエネルギッシュな落語も見て損はありません。有名な落語家だけに注目するのもよいですが、有望な新人を見つけて贔屓にするのもまた一興ですよ。それにしてもこのサイト、実験的に公開しているページだということですけど、今の時点でもかなりクオリティが高いのに、本気で始めたら一体どうなるんでしょうね。期待しちゃいます。
□インターネット落語会
http://www.rakugo-kyokai.or.jp/inetrakugo/inetrakugo.htm
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過去の名人たちの落語を一挙配信
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「傀儡落語名作選」では人形を使った落語を見ることができる |
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お次に紹介するのはBSデジタル放送の「ch999」の「傀儡落語名作選」です。こちらは「落語協会」のストリームコンテンツとはちょっと違っていて、演者が生身の人間ではなく人形を使っています。音声はオリジナルなんですけどね。で、登場する人が古今亭志ん生さんとか、三遊亭圓生さんとか、スゴイ人ばかり。いわゆる名人と呼ばれる人の名演がたっぷり収録されています。まあ演じているのはフィギュアなので顔の表情などは変わらないけど、アングルを変えたりアップにしたりと画像に変化を与えて臨場感のある作品に仕上がっている。何よりも、実力を持った噺家の喋りだから音声だけでも感動してしまうんでしょうね。
笑いというのは人によって価値観がさまざまですから、実際に寄席にいった場合、「今日はつまらないなあ」と思う日も正直あります。まあ、当たり外れがあるからこそ、当たったときの感動というのは深いんですけどね。でも、落語を初めて見る人がたまたまおもしろくない日に当たってしまった場合、もう落語はいいやと思ってしまうかもしれない。そういう意味では、初めての人には過去の名演を聴かせるのが一番なのかもしれません。で、過去の名演はテープとかCDとかでも発売されてますけど、いきなりは買いにくいですから、こういう番組はとても役立つわけです。音声だけが聴こえるよりも、画像があるだけとっつきやすいでしょうしね。これらはすでにBSで放映したもののバックナンバーなんですけど、地上波のサイトでもこういうのやってほしいなあ。番組の宣伝にもつながると思いますよ、きっと。
□傀儡落語名作選
http://www.ch999.co.jp/kairai/
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こりゃ笑える!! 珠玉の小話
今度は「ザ SUN遊テイ」というサイトにいってみましょう。ここは山遊亭金太郎という噺家さんのホームページなんですが、ここでもストリーミングで落語が見られます。ひとつひとつの動画は短いんですが、結構切れ味のいいネタを振りまいていておもしろい。ページのデザインも簡素でいかにも手作りという感じなんですが、こういうのってアットホームでなんかよいですよねえ。
おもしろいのが寄席の裏方を撮った映像集「裏方ガイド&落語所作」というコーナー。寄席で流れるお囃子の演奏風景やネタ帳、落語に関する専門用語などを分かりやすく解説してくれます。こういう舞台裏って、普通に観客として見ているだけでは絶対に分からないことなので、ちょっと落語をかじったことのある人なら興味シンシンなんですよ。もちろん、落語の初心者にもタメになる話なので必見です。さらに、このサイトにはなんと日ごろの稽古の風景を撮った動画まで収録されています。師匠の前で演じて演技をチェックしてもらう姿を見ていると、厳しい練習だなあとつくづく思います。駄文を書き散らしてるアタシみたいな“書き屋”から見ると、こういう徒弟制度の世界ってなんだか憧れちゃうなあ。喋りだけで人を笑わせるってのは、なんと大変なことなんだと実感できますよ。
□ザ SUN遊テイ
http://21ships.com/thesunyoutei.htm
□裏方ガイド&落語所作
http://21ships.com/thesunyouteiurakatasyosa.htm
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あの有名人の落語だって観られる
最後に紹介するのは、なんとあの超有名落語家、立川談志師匠のサイトです。講談社の「Web現代」の中の1コーナーになっているんですが、こりゃホント必見ですよ。「らくだ」や「芝浜」といった師匠お得意のネタが多数収録されています。実際に寄席にいってもこういうネタをいつも演るとは限りませんから、ネットで見られるということはとてもシアワセなことなんです。ただし有料ですけどね。でも、お金を出す価値はきっとあると思いますよ。
寄席のほかに無料で見られる「世相講談」というコーナーもありますんで、まずはこちらを見てみましょう。あいかわらずの毒舌が冴え渡っていて、大笑いすること間違いなし。とにかくネットだけでここまで笑えるってのは、スゴイことですよねえ。ブロードバンドのおかげで、普段テレビでは見られないような噺家さんが、ネットで活躍する時代がもうすぐくるのかもしれません。まだまだ画質の問題がありますから、まるで実際に寄席にいったかのような気分になれる、とまではいいませんけど、これまで落語に興味のなかった人に寄席っておもしろそうと思わせる効果はあると思うんですね。で、ネットで笑いころげた後は、寄席にもいってみましょう。きっと新たな感動が味わえること請け合いです。
□立川談志師匠のサイト
http://kodansha.cplaza.ne.jp/danshi/
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