突然ですがみなさん、「怪傑ズバット」というヒーローをご存じでしょうか。20代の人は知らないかもしれないなあ。これ、アタシが子どものときにやっていた番組なんですが、個人的には日本一の特撮ヒーロー作品だと思ってます。
「仮面ライダーV3」で有名な宮内洋が主人公をやっているんですが、彼がとにかくカッコいい。もう、これ以上キザな人間はこの世にいないだろう、ってくらいキザな役なんですが、なぜか許せてしまう愛らしいキャラなんですね。なんせ、設定が「何をやらせても日本一」なんですから。
毎回のように、射撃とか拳法とかビリヤードとか、なにかしら特技を持った悪役が登場するんですが、主人公の前には霞んで見えてしまいます。変身もしていないのに、悪役を圧倒するパフォーマンスを繰り広げて「おまえの腕は日本で2番目だ」ということを思い知らせてしまうんですね。最近、ケーブルテレビで再放送しているのを久しぶりに見たら、たちまちハマってしまいました。
これを見て、1つ気になったことがあります。主人公がズバットに変身すると、いつも敵の罪状を滔々とまくしたてるんですね。たとえば、「○○を爆破し、何人もの犠牲者を出し、あまつさえ××を殺した極悪非道のおまえは許さん!!」てな感じに。何に引っかかったかというと、「あまつさえ」という言葉なんです。それほど頻繁に使われる表現ではないのに、この番組では毎回お約束のように使うので、なんだか新鮮に感じました。
で、アタシの場合、何か気になった言葉はすぐに電子辞書で引くという習慣がありまして。いや、別に意味がわからないって訳じゃないんです。「しかも」とか「その上さらに」とか、そういう意味だということはわかっているんですよ。でも、辞書を引いて正確な用例を再確認すると、新たな発見をすることがあるんです。「書き屋」の悲しい性ですね。
このときも番組が終わった後、すぐさま辞書ソフトを立ち上げて調べましたよ。ところが、ない。複合検索しようが全文検索しようが見つからないんです。これにはちょっと面食らいました。もしかして「あまつさえ」というのは言葉としておかしいのか? そんなものを子どもに見せていいのか? どうなんだズバット、答えてくれ~、と一瞬パニックに陥ってしまいました。
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手持ちの辞書になかったらネットを使え
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「システムソフト電子辞典シリーズ」 |
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まあ結果から先に言うと、これはアタシの完全な早とちりだったわけです。「あまつさえ」という言葉は、きちんと辞書に載ってました。どこに? それはネットの「辞書サイト」だったんですねー。
その前に、アタシのパソコンのハードディスクにぶち込んでいる辞書を紹介しときましょう。まず、システムソフト電子辞典の「ビジネスセット」というやつで、これには「広辞苑」「リーダーズ英和辞典」「現代用語の基礎知識」と、あとは「スピーチ文例集」とか細々としたものが含まれています。
もう1つは日立システムアンドサービスから出している平凡社の「世界大百科事典」。言うまでもなく、学術論文の引用に使えるほどの権威ある百科事典です。
最後に、角川書店の「類語新辞典」。これは物を書く仕事をしている人にはかなり有名な辞書で、ほとんど“必須”と言って良いんじゃないかと思います。1つの言葉から、それと同じ意味の言葉や似た意味の言葉を調べられるという、いわゆる「類語辞典」なんですが、角川書店から出してるこれは、各社の類語辞典の中でもとくに評価が高いものなんですね。
そのほかに、趣味で読むための専門辞書を2つ3つほど。で、アタシの場合、これらの辞書ソフトをまとめて串刺し検索するために、シェアウェアの「Jamming」というソフトを使っています。
それにしても、広辞苑と角川類語新辞典の両方に引っかからない「副詞」がこの世にあるわけない、とアタシは妄信していたので、この事態には困りました。どうしよどうしよ、とオロオロしつつ、無駄に「Google」で検索するものの、出てくるのは「あまつさえ」という言葉を使った日記とかコラムとかばかり。途方に暮れたアタシは、そのとき何気なく「goo」のボタンを押してみました。ご存じの通り、この検索サイトには辞書機能があるんですね。
それほど期待してはいなかったんですが、とりあえず「あまつさえ」と打ち込んで辞書ボタンの中の「国語」を押してみたんです。そうしたらなんと!! 意味がちゃんと出てきたじゃあーりませんか。なんたる不覚だ。
よくよく意味を読んでみると、「あまつさえ」とは「あまりさへ」が転じた言葉だとのこと。そ、そうだったのか。アタシは「あまつさえ」という言葉にこだわるあまり、その語源を考えようとしていなかったんですね。よしよし。そうと分かれば、ということで、「Jamming」で「あまりさへ」を検索してみたら…ありましたですよ。ふう。つかれた。
□システムソフト電子辞典シリーズ
http://www.logovista.co.jp/jiten/
□ロゴヴィスタ
http://www.logovista.co.jp/
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辞書は複数持ってた方がいい
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「goo」 |
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と、言葉を扱うのが本業の割にはなんともヘタレなアタシですが、「あまりさへ」なんて言葉、知らんもんは知りません。しかも「あまりさへ」から派生した言葉には、「あまつさえ」の他にも「あまっさへ」とか「あまっさえ」という言葉もあるんですね。真ん中の「つ」が促音になっているなんて反則ですよ、もう。
要するにアタシが無知なだけだったんですが、辞書ってのは無知な人間のために存在するわけで、本来ならそんな人でも容易に情報を入手できるのが筋ってもんです。いや、別に「広辞苑」を批判しているわけじゃないんですよ。この場合の教訓としては、「無知な者ほど辞書をたくさん持っておけ」ということでしょうね。
「goo」の国語辞典は何を使っているかというと、三省堂の「大辞林」という、これまた定評のある辞書です。「広辞苑」の検索キーワードには「あまつさえ」が無かったけど、「大辞林」にはあった。こういうことは、けっこう頻繁にあることです。たとえば、今回「あまつさえ」という言葉ではこのような結果になったけど、もし違う言葉だったら逆の結果になったかもしれない。そんなときのために、複数の辞書を引けるような環境を日頃から備えておくべきだと思ったわけです。
パソコンのない時代ならいざ知らず、現代はもう「ランダムアクセスどんとこい!!」てな時代ですからね。いちいち分厚い辞書を本棚からヨッコラショと取り出してページをめくる必要なんかなく、キーボードをカチャカチャやれば検索できるわけだから、書籍だったら床が抜けるほどの辞書を持つことも十分可能ですもんね。
□goo
http://www.goo.ne.jp/
□三省堂
http://www.sanseido-publ.co.jp/
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パッケージ辞書とネット辞書の二刀流がオススメ
ところが、ここで1つ問題が出てくる。「そんなに多くの電子辞書なんて、いちいち買ってらんねーよ」ということです。とくに電子辞書の場合、書籍よりも値段が高いケースが多いですからね。角川の類語辞典なんて、書籍は約5千円だけどCD-ROMは3万円ですよ。しかも、電子辞書っていうのは不思議な魅力を持っているもので、一度使い出すと、次から次へと違う分野の辞書を入れたくなってしまうもんです。
アタシも純粋な知的好奇心で、生物学辞典やら医学辞典が欲しくなるときがあるんですが、この物欲というか“辞書欲”は、いったんハマり出すとキリがない。なんだか辞書を足していくたびに、ロールプレイングゲームで新たな武器を得たときのような満足感が得られるんですね。それに、さまざまな言葉を引いては辞書から辞書へとハイパーリンクしていくのって、下手な小説を読むよりもよっぽど面白いし。だから、国語辞典ばかり、いろいろな出版社のものを買い込むわけにもいかんのです。
そこで活用していただきたいのが、ネットの辞書サイトというワケ。もちろん、スタンドアロンで使えるパッケージ辞書も持っているに超したことはないですが、パッケージを持っているからといって、辞書サイトを全く使わないというのはちょっとオススメできません。ダイヤルアップならいざ知らず、常時接続環境にある人なら十分、実用に耐えますからね。パッケージ辞書とネット辞書、双方の良いとこ取りをしつつ、楽しく便利な辞書環境を構築していくのが賢いやり方なのではないでしょーか。
まあ、ふだん俗語や幼児語ばかり使ってるアタシが言っても説得力ないですけど、“辞書を愛する者からの誠意ある助言”とお受け取りください。さて、今月はちと能書きが多くなりましたけど、次回はアタシのオススメの辞書サイトをどんどん紹介していきますんで、乞うご期待!!
□角川書店
http://www.kadokawa.co.jp/
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