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【WIRELESS JAPAN 2007】
イー・モバイル種野副会長、サービスの現状を語る

 ワイヤレスコンファレンス2007の基調講演で、イー・モバイルの取締役副会長の種野 晴夫氏は、「ブロードバンドをケータイする EMモバイルブロードバンド革命」と題した講演を行ない、同社が移動体通信市場に参入した狙いやサービスの現状を語った。


移動体でもブロードバンドにフォーカス

イー・モバイルの種野副会長
 まず種野氏は移動体通信市場に参入した理由について、固定ブロードバンド市場と移動体通信市場を比較を紹介する。固定ブロードバンド市場は市場規模8,000億円で、地域系を含めると300社以上が存在する。一方、携帯電話の市場は市場規模8.8兆円で、たったの3社しか存在しない。この3社しかいない市場に、イー・モバイルは4社目として参入したと説明した。

 種野氏は、データ通信に特化した理由について「安い音声通話というだけでは特徴がない。親会社であるイー・アクセスは、固定のブロードバンドで進展してきた会社なので、移動体でもブロードバンドにフォーカスして事業を展開したい」と説明する。

 固定・移動を含めたデータ通信形態を料金・通信速度で分類したチャート示し、「料金がほどほどで、通信速度は固定のFTTHほどじゃないけど、ポータブル機器で実現するブロードバンド、というところに市場があるのではないか、と考えた。イー・モバイルではデータ通信カードも出しているが、単なるカードだけではなく、スマートフォンなど、付加価値のあるところも狙っていきたい」として、同社が狙っているマーケットを示した。

 さらに種野氏は、サービス開始に当たっての資金調達で、海外から資本金調達したこと、さまざまな銀行から借り入れしたことを紹介し、「担保になるネットワークも不動産もないが、いろいろなところが苦労してくれて、無事に資金を調達できた。オペレーションする前から大きな期待を背負ってスタートした」と語った。

 また、3月のイー・モバイルのサービス開始時を振り返り、「わたしは過去にDDIポケットやセルラー、イリジウムなど、さまざまなサービス立ち上げに関わってきた。だいたい開業時には端末が足りないとかネットワークがつながらないなどクレームが殺到するが、イー・モバイルは奇跡的に大きなトラブルもなくスタートできた。これは珍しい。もちろんその裏ではスタッフの努力があるわけだが、これは自慢になる」と語った。


移動体通信の市場性 固定・移動のデータ通信の分類

イー・モバイルの資金調達構成 サービス開始時の様子

セカンドハンドセットに狙いを絞ったEM・ONE

EM・ONE
 続いて種野氏は、イー・モバイルの端末「EM・ONE」について紹介する。「新しい携帯端末を広げていきたいと言うことで、シャープの力を借りて開発した。これがスマートフォンの先を広げていくと考えている。しかし、残念ながら音声通話は未サポート。イー・モバイルでは、音声通話サービスは来年3月から。この端末ではその音声通話にも対応できない」と語った。

 音声通話機能がないことについて種野氏は、「音声なしでスタートしたが、これは我々がセカンドハンドセットに狙いを定めたから。いま、ケータイを持っていない人はいない。EM・ONEを買う人は、既存のケータイに加えてEM・ONEを持つ」と語り、音声通話の必要のない2台目の端末としてデザインしてあることを明らかにした。

 実際の販売状況については、「ある程度、想定した通りだが、やはり30歳前後のITリテラシーの高い人が買っている。性別は圧倒的に男性が多い。あと団塊世代も少し買っている。EM・ONEを開発するとき、これさえあればパソコンは要らない、というコンセプトで作ったが、EM・ONEの購入者でパソコンがない人はいないという。実際には家にパソコンがあって、外出先でもパソコンのような環境を使いたい、という人が利用している」と紹介した。

 また、「ITリテラシーが低い人にも使ってもらえるようにするのが、我々のつとめ、課題ではないか。そういう意味で、段階制の定額プランをリリースした」とも語った。

 サービスの内容について、「通信速度は、カタログスペックで3.6Mbpsで、実際には2Mbpsくらい出る。使った人はこんなにも速いのか、と驚く。しかし、我々はまだまだパフォーマンスには満足していない。今回はEM・ONEにWindows Mobileを搭載した。実際に使ってみると、決して満足できない。なぜか。通信だけ速くなっても、パフォーマンスは向上しない。ソフトウェアも改善されないといけない」と語り、Windows Mobileがボトルネックとなっていることを示唆した。

 その理由として、「Windows Mobileが開発された当時の状況と、いまのケータイの状況は違う。これまでのモバイル通信は、使うときだけスイッチをオンにする。しかしイー・モバイルのサービスは、いつでも大容量通信を行なえる定額制。そういった使い方にWindows Mobileのソフトが追いついていない」と分析する。さらに「使い勝手面でも、お客さまがなるほど、と思うようなものにしないと普及しないと考えている。次は今回の反省点を踏まえたものを開発したい」と、今後の展開についても言及した。


 また「パソコンと同じ機能を持っているとアピールしたが、EM・ONEがあるからパソコンは不要、という人はいないとわかった。お客さまのニーズを把握してアプリケーションを作る必要がある。たとえばネットトレーディング専用端末や、保険外交員が使う見積もりアプリなど。何か一つのアプリケーションに絞った売り方も、いろいろなベンダー・メーカーから話がでてきているので、現在、詰めているところ。そういった特化した使い方がでてくると面白い」と、別の展開が見えていることも語った。

 カード型やUSB接続型のデータ通信端末については、「口コミで広がっている」と紹介する。「特に宣伝とかはしていないが、マスコミの人などが使って、そこから広がっている。インターフェイスごとに4種類の端末をそろえているが、USB接続の端末は、初のMac対応製品ということで、広告を打つ前にMacコミュニティに受け入れられた」と語った。


定額制は「他社が追随してきても、競争力のあるサービスを提供できる」

 料金面について種野氏は、「安いと考えている」と語る。「他社のデータ通信では、1GBの通信で8万円とかになるが、我々の場合はいくら使っても6,000円。午前中の基調講演でドコモやauも定額をやると言っていたが、我々は最初からブロードバンドをやることを前提にネットワークを設計しているので、他社が追随してきても、十分に競争力のあるサービスを提供できる」として、サービス面での自信を示した。

 さらに、イー・アクセスのADSLサービスも契約しても、イー・モバイル単体と料金が変わらないという、ADSLが実質無料になるサービスも紹介し、これがFMCにつながると語る。「これまでFMCがヒットしなかったのは、技術の問題ではなく料金の問題。今回のサービスでは、料金を別々に払う必要はない。お客さまから見れば、本当にFMCになっている」と語った。


パソコンでのデータ通信料金の比較 ADSLとのバンドルサービス

 エリア展開については、「急ピッチで拡張していて、東京近郊では国道16号線内ではほぼ使える。一方でエリア拡張の告知は非常に慎重に進めている。エリアマップでまだ色が塗られていない地域でも使える、ということがある」と語った。また、今年中に全国の大都市圏でサービスを開始する予定であることも紹介した。


首都圏でのサービスエリア 全国でのサービスエリア展開


 また種野氏は、「我々は最初からHSDPAで展開している」とイー・モバイルのアドバンテージを説明する。「他のキャリアの場合、第2世代、第3世代と進化しているが、我々は最初から3.5世代を全国で取り入れた」とし、また「新技術もどんどん取り入れていく。こうした標準化された技術を使うことで、我々が開発をしないでも、世界中のメーカーが必死になって新技術を開発してくれる。我々はそれを導入すれば良い」とも語った。

 一方で「1.7GHzという周波数帯は、国際的には使っている事業者が少ないという点で不利な点になる」とも説明する。しかし「実際には1.7GHzは、使ってみたらいい周波数だった。ほかの3Gの2GHzという周波数に比べ、より低い周波数帯ということで、電波が障害物を回り込んで入りやすい」とも語った。

 最後に種野氏は、「来年3月より、音声通話サービスも開始される。そのときには音声端末も登場するが、新規事業者として、データオリエンテッド(データ通信志向)な端末を提供していく。まだまだヨチヨチ歩きだが、みなさまにサポートしてもらって、サービスを提供していきたい」として講演を締めくくった。


通信方式の変遷 事業展開のスケジュール

関連情報

URL
  WIRELESS JAPAN 2007
  http://www8.ric.co.jp/expo/wj2007/

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(白根雅彦)
2007/07/19 11:28
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