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【Web and Internet Applications Day】
Wikiの今後はCGIからホスティングへ、WYSIWYGの編集も可能に?

 「Internet Week 2004」最終日となった3日には、日本UNIXユーザ会主催の「Web and Internet Application Day」が開かれた。ブログやWiki、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)といった最近Web上で流行のサービスについて、それぞれシステムの開発者やサービス提供者が集まり、日頃の不満や今後の開発の方向性などについて議論を戦わせた。本稿ではWikiについてのセッションをお伝えする。


WikiもCGIからホスティングの方向へ

左から塚本牧生氏、増井雄一郎氏、かずひこ氏
 最初に話題になったのが、Wikiをプログラムの形ではなくホスティングサービスの形で提供する「WikiFarm」について。多くのブログはISPなどで一般ユーザー向けのサービスとして提供されているのに対し、Wikiではまだそのような例がほとんど見られないのはなぜかとの会場からの質問があった。

 Wikiエンジンの1つである「Hiki」の開発に携わるネットワーク応用通信研究所のかずひこ氏は、Hikiでは既にそのような機能を実装済みだと回答。実際に同氏が個人で運営している「wiki.fdiary.net」ではホスティングサービスを提供していると述べた上で「実際やってみると案外楽」「Wikiの持つ“アナーキー”さがWikiの立ち上げレベルにまで広がるのは便利」と語り、ユーザーにとってWikiを利用するための敷居を大きく下げる効果があるとの認識を示した。また、開発者にとっても「(ホスティングサービスの場合)想像もしないような使われ方をするため、バグ出しや機能追加に役に立つ」とそのメリットを語った。

 ホスティングサービスのメリットには他のパネリストも同意し、「WalWiki」の開発者である塚本牧生氏は「ブログもSNSも自分でインストールすることなく使えるから一気に広がった」とコメント。現在WebサイトでWikiを導入するには「Webを使う」「CGIを使う」「Wikiを使う」という「三重苦がある」ため、「(ホスティングなどの形で)簡単に使えるようにしないと一般には広がらない」と述べた。また、「PukiWiki」を代表して登場した増井雄一郎氏も「会社用・個人用など、個人で複数のWikiサイトを運営している人は少なくないと思われるので、そういう人向けに複数のWikiを簡単に立てられる仕組みがあっていい」と、導入が簡単なホスティングサービスに同意した。

 このように開発者の方向性は明らかにWikiのホスティングを可能にする方向に向いている。今後、しばらくすると低価格あるいは無料の「Wikiホスティングサービス」が複数登場してくる可能性は高そうだ。


WikiをWYSIWYGで編集可能に、ただしユーザーの敷居を下げすぎるのも問題

 Wikiの本来の売りは「誰でもページを編集できる」ことだが、実際にはWikiで構成されたページを書き換えるにはそれなりにWikiの文法に関する知識が必要だ。また、それが敷居の高さにつながっているという意見も根強い。

 今回も会場から「WikiをWYSIWYGで編集できるようにすれば敷居を下げられるのではないか」という意見が出たのに対し、塚本氏は「私はHTMLではできて、Wikiではできない文法が出てきてお互いの整合性が取れなくなることを嫌ったが、今後新規開発するのであればWYSIWYGにしても問題ないのではないか」と述べた。ただWebブラウザ経由のインターフェイスでそれを行なうのは難しいようで、増井氏は「PukiWiki専用のブラウザとエディタをJavaで開発しており、それを使えばWYSIWYGで(Wikiを)編集できるようになる」と現在進行中の開発内容を明らかにした。

 ただあまり敷居を下げすぎるのもどうか、というもう一方の意見も存在する。かずひこ氏は「(Wikiの文法の)とっつきにくさが、逆に“荒らし”を防いでいるのではないか」と述べ、使いやすさを重視して敷居を下げることで、かえってWikiサイトの有用性が損なわれる可能性があると指摘した。バックアップやリストアに関するユーザーインターフェイスの議論になったときにも、かずひこ氏は同じ理由から「果たして全ユーザーにそのようなインターフェイスを開放していいかといえば疑問が残る」と語り、このあたりの問題は一筋縄では解決できない様子が窺えた。


ビジネスの観点から今後Wikiに求められる機能とは?

 最近、情報共有の目的で企業がWikiを利用する例も増えてきているようだが、その際には従来のWikiにはない新たな機能が求められるケースも少なくない。それらについて開発者サイドはどのように考えているのだろうか。

 まずWikiとPDAなどの情報をシンクロナイズしたいというニーズに対しては、一部でそのようなシステムが開発されていることを認めつつも、塚本氏や増井氏はそういった機能を実装することには否定的。増井氏は「あくまでWikiはドキュメント作成の局面で使われるケースが多く、Outlookなどとは使われ方が異なるのではないか」と述べ、Wikiにおいてそのような機能が求められるのはかなり特殊なケースに限られるとの認識を示した。一方、かずひこ氏は「ニーズは理解できるが、自分で開発している余裕はないので、誰かが実装を作ってくれればそれを取り込む用意はある」と前向きな姿勢を示した。

 また、WordファイルやPDFファイルなどの内容をWikiに取り込むといった機能も、一般のビジネスユーザーがWikiを使うことを考えると欲しい機能だが、これについては「フリーのParserがあれば実装したい考えはある」ことで3人とも一致。かずひこ氏は「WikiはHTMLと比べても表現能力が貧弱なので、Wordファイルを取り込むとしても書式やデザインを再現することは難しいだろうが、大雑把に見出しと本文だけでも区別して取り込むぐらいなら、そのうちなんとかなるのではないか」と語り、そのような実装が出てくることに期待感を表明。また塚本氏も「PerlならRTFファイルやExcelファイルのParserは既に存在するので、問題は誰がそれを元に実装を書くかという点だけ」と語り、開発者の協力に期待する考えを示した。

 これ以外にもドキュメントのバージョン管理のために、文書管理のバックエンドにCVSのようなシステムを導入するといった点についても、「CVSはインストールが難しいので独自の実装を考えている」(増井氏)、「CVS自体はあまり好きじゃないので……」(塚本氏)と個人的には実装しないとする意見が多いものの、そのような実装が出てくること自体には3人とも肯定的な見解を示していた。


関連情報

URL
  Internet Week 2004
  http://internetweek.jp/
  Hiki
  http://www.namaraii.com/hiki/
  WalWikiについて
  http://digit.que.ne.jp/work/index.cgi?WalWiki
  PukiWiki.org
  http://pukiwiki.org/

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(松林庵洋風)
2004/12/06 19:04
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