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無線LANルータ編
第7回:PPPoEとPPPoEマルチセッション


 「PPPoE」は、ADSLやFTTHサービスの多くで利用されている、インターネット接続時における仕組みになります。このPPPoEを利用して、同時に複数のプロバイダーに接続することを「PPPoEマルチセッション」と言います。


ADSLやFTTHサービスの接続時に利用する「PPPoE」

 ADSLやFTTHサービスの中で、例えばNTTのフレッツ・ADSLやBフレッツを利用する場合、「回線プロバイダー」と「インターネット接続プロバイダー」の2社とサービス契約をする必要があります。この場合、回線プロバイダーはNTT東日本とNTT西日本が該当し、物理的に自宅と電話局などを繋げる回線を提供してくれます。

 そして、そこから先のインターネットに接続するには、各サービスに対応したプロバイダーと契約する必要があります。例えば、Bフレッツの場合では、NTT東日本はこちらに、NTT西日本はこちらに対応プロバイダーの一覧ページが用意されています。もちろん、Yahoo! BBや一部の電力系事業者などのように回線プロバイダーとインターネット接続プロバイダーを兼ねている事業者もあります。また、OCNや@niftyなどインターネット接続プロバイダーの中には両方の申込や請求までを一括して行なうサービスも用意しているケースもあります。

 さて、ここで気になるのは、インターネット接続プロバイダーから自宅に設置したルータに対して、どうやってIPアドレスを割り振るかということです。図1の構成では、インターネット接続プロバイダーとルータの間に回線プロバイダーが存在するため、IPアドレスを一意に割り振るのは非常に難しくなります。

 そこで、インターネット接続プロバイダーとルータを直結するような仮想回線を作成し、これを経由してIPアドレスの割り振りやデータの送受信を行なう「PPPoE(PPP over Ethernet)」と呼ばれる方法を利用しています。PPPoEに含まれる「PPP」というのは、「Point to Point Protocol」の略で、本来はダイアルアップ回線などの上で「TCP/IP」というプロトコルをやり取りするために考えられたものです。これを、ADSLやFTTH回線で利用できるように拡張したのが、PPPoEということになります。


図1:2種類のプロバイダー




「PPPoEマルチセッション」を使って複数の接続先と通信する

 図1では、PPPoEを使って1つのインターネット接続プロバイダーに接続する例を示しましたが、同時に複数のインターネット接続プロバイダーと接続できるようにしたのが「PPPoEマルチセッション」です。例えば、フレッツサービスでは、インターネットとは別にNTTの地域IP網の中にフレッツ・スクウェアと呼ばれる独自コンテンツを提供しています。フレッツ・スクウェアを利用する場合にも、インターネット接続プロバイダーの接続と同様にPPPoE接続が必要になりますが、アクセスの度に接続を切り替えるのは非常に面倒です。

 そのため、インターネットにもフレッツ・スクウェアにも同時に接続できるように、PPPoEを複数の接続を同時に維持できるようにしたのがPPPoEマルチセッションです。この機能を使用することで、「http://www.flets/」にアクセスした場合にはフレッツ・スクウェアが、それ以外の場合にはインターネットに接続できるというわけです。


図2:PPPoEマルチセッションの利用イメージ例

 こうしたURLの振り分けなどは、PPPoEマルチセッションに対応したルータで設定をする必要があります。しかし、現在市販されているルータの多くはフレッツ・スクウェア設定がプリセットされており、初回設定時などで有効にすることで設定が完了します。

 それ以外にも、複数のプロバイダーに対して同時接続したいといった場合でも、PPPoEマルチセッションを使うことで問題が解決します。もっとも、一般のユーザーで関係してくるのはフレッツ・スクウェアのような、回線事業者が独自網で提供するコンテンツにアクセスする場合でしょう。


関連情報

URL
  無線LANルータ編 索引ページ
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/koko_osa/17754.html

2007/06/04 10:50

槻ノ木 隆
 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。
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