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モバイルデータ通信編
第6回:LTE


 LTEは、3.9GやSuper 3Gなどとも呼ばれる携帯電話の通信方式。現在ある3G携帯電話技術の延長上にある仕組みを用いたもので、国内でも主要携帯電話事業者がサービス提供を検討しています。


下り100Mbps超の通信速度を目指す「LTE」

図1:LTEの概要
 WiMAXや次世代PHSを取り上げた際に、何度か出てきたのが今回紹介する「LTE」です。LTEとは「Long Term Evolution」の略で、日本語に直すと意味がわかりにくいですが「長期的発展」になります。

 携帯電話では、世代別に1Gや2G、3G、4Gというように分類されます。ここで言う“G”は周波数を示す“GHz”ではなく、「Generation(世代)」の略です。つまり、1Gは最初のアナログ式携帯電話、2Gが最初のデジタル式の携帯電話で、3Gが現在のデジタル携帯電話にあたります。

 そして、3Gに続くのが4Gになりますが、双方で互換性がなくなることや、4Gに必要な技術がじゅうぶんにこなれていないなどの課題があります。そこで、3Gにさまざまな機能を追加することで、より長期的に使用できるようにしようという動きがでてきました。その最初のものが、すでに取り上げたHSDPA/HSUPAと呼ばれる高速データ通信規格です。分類としては3.5Gとなり、今回取り上げたLTEは3.9Gとされています。

 携帯電話に関しては、通話に限って言えば2Gでニーズがほぼ満たされているとも考えられます。もちろん、実際には上手く接続できない場合や、音質が悪いといった話はありますが、これらは基地局の密度などで対処できる範囲でもあり、逆に言えば、こうした点を主目的として2.5Gや3Gなどの規格が登場したわけではありません。

 では何のためかといえば、データ通信が主となるわけです。最初は短いメッセージをやり取りするショートメール程度だったのが、その後にはiモードに代表されるさまざまなサービスやWebブラウジングとなり、最近では動画のストリーミング視聴なども携帯電話のターゲットに入ってきました。

 LTEの場合、ピーク性能で言えばダウンロードが100Mbps超、アップロードが50Mbps超の速度を目指しており、現在のHSDPA/HSUPAの5~10倍といった圧倒的な転送性能を実現することを目論んでいます。一方、LTEの通信はIPベースとなり、音声通話はVoIPを使用する形で対応することになります。

 利用する周波数は3G携帯電話と同じものが使われる予定ですが、その他の周波数帯も検討されています。ここにOFDMA(下り)/SC-FDMA(上り)という多重化方式を使い、データ変調はQPSK/16QAM/64QAM、周波数帯域は1.4/3/5/10/15/20MHzの中から選ぶ形になります。変調方式や多重化方式などはモバイルWiMAXや次世代PHSとほとんど同じです。


WIRELESS JAPANに登場したSuper 3Gの実証実験車両
 では、なぜ皆で共通の方式にしないかと言えば、これには電波免許が関係してきます。例えば、モバイルWiMAXや次世代PHSの場合、すこし前になりますが、2.5GHz帯の免許割り当てのニュースがありました。

 この際、移動体通信向けに割り当てられる2帯域は、新たな無線サービスの展開と市場活性化を図るため、既存の第3世代移動通信事業者やグループ会社以外の企業に割当を行うとの方針が示されました。ただし、既存の第3世代移動体通信事業者およびグループ会社でも3分の1以下での出資であれば事業参加は許容され、最終的にはKDDI系のUQコミュニケーションズ(UQ Com、モバイルWiMAX)、ウィルコム(次世代PHS)に対して免許が割り当てられ、双方ともにサービス開始の準備を進めています。

 UQ Com、ウィルコムともにMVNOを展開する予定ですが、免許割り当てを受けられなかった各社は、現在割り当てられている周波数帯を使って、3G携帯電話の延長線上にあるLTEの導入検討を進めています。例えば、NTTドコモでは「Super 3G」としてLTEの実証実験を実施しており、WIRELESS JAPAN 2008などで実験車両を使ったデモンストレーションも行っています。

 上述の通り、LTEはデータ通信専用の規格であり、実際のサービスもこれを意識したものになるでしょう。NTTドコモのほか、KDDIやソフトバンクモバイル、イー・モバイルでもLTEへの対応を検討しています。なお、サービス開始は2010年以降とされており、利用にはもうしばらく時間が必要になりそうです。


関連情報

URL
  モバイルデータ通信編 索引ページ
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/koko_osa/23612.html

2008/12/15 11:01

槻ノ木 隆
 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。
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