公衆無線LANサービスは、多くはIEEE 802.11b/gの無線LANを利用し、店舗内や屋外でインターネット接続が可能なサービス。有料/無料を含め、複数の事業者がサービスを展開しています。
■ 複数ある公衆無線LAN事業者。来年には東海道新幹線でもスタート
「どこでも利用できる」とまでは普及していませんが、公衆無線LANサービスは一定の条件を備えた場所であれば利用できるようになってきました。多くはIEEE 802.11b/g準拠の無線LANに対応しており、全国規模では「フレッツ・スポット」や「HOTSPOT」、「Mzone」「BBモバイルポイント」「FREESPOT」「FON」がサービスを提供しています。
利用料金はさまざまで、有料サービスでも月額課金や日額制のプランなど、複数のメニューが用意されています。公衆無線LANサービスの活用術に関しては、BB Watchのネットブック特集が詳しいです(記事URL)。
もっともこれらサービスエリアの多くは、店舗や地下街など限定した場所での利用が大半で、面展開というより場所単位での展開と言った方が良い状態でしょう。面展開としては、ライブドアの「livedoor Wireless」が東京・山手線内を皮切りに全国展開を予定していましたが、その後の同社の動向によって現時点では山手線内で2200カ所のアクセスポイントを設置するに留まっています。
また、最近ではアッカ・ワイヤレスが横浜の関内地域で「skeletown」という面展開の実験サービスを実施していましたが、2008年10月末で終了しています。無線LANはカバー範囲が狭いサービスだけに、面展開というのは原理的には難しいようです。
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画面1
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表1:列車や車両での無線LANサービスへの取り組み
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当初、面展開が期待されていたFONも密度は高いですが、エリア全体をカバーしているとまではいきません。画面1はImpress Watchの所在地周辺をFON Mapsで表示したものですが、数はあるものの、移動中のすべてで接続できる状況ではないことがわかります。
一方で、公衆無線LANサービスを「利用者自身が移動しない場所」でサービスを行うケースも増えてきました。もちろん、飲食店や宿泊施設、会議場などで以前よりサービスは行われていますが、すでに「つくばエクスプレス」が車内無線LANサービスを開始しているほか、2009年3月には東海道新幹線の「N700系」でも提供が予定されています。また、アッカ・ワイヤレスが京急や東京空港交通と連携して、タクシーやリムジンバス内での無線LANサービス実験を実施しています。
サービス自体はすでに終了していますが、以前は飛行機での移動中にインターネット接続が可能な「Connexion by Boeing」というサービスも提供されていました。地上3万6000km上空の軌道にある静止テレビ衛星を経由してインターネット接続サービスを提供するもので、機内での通信ではIEEE 802.11bが利用していました。
ちなみに米国を見ると、フィラデルフィアで2005年より提供していた市内全体をカバーする無料の公衆無線LANサービスは2008年6月で終了するなどしています。このことから、面展開に関しては、モバイルWiMAXなどの他の通信規格で行う方向が強いといって良いでしょう。
ただ、そうは言っても公衆無線LANサービスは引き続き広く利用されていくと思われます。次世代通信サービスはサービス開始前で、複数の規格があるほか、実際にサービスを開始しても当初は利用できる機器が限られてしまうからです。
一方、無線LANはPCのみならず、スマートフォンやゲーム機などにも広く搭載されており、接続方法も容易です。従って、新幹線やタクシー、リムジンバスなどのように、他の通信手段を介してインターネット接続をする場合にも、車内には無線LANアクセスポイントを設置して、利用者が無線LAN接続してサービスを利用する形態での提供が今後も増えていくかと思われます。
■ URL
モバイルデータ通信編 索引ページ
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/koko_osa/23612.html
2008/12/22 11:13
槻ノ木 隆 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。 |
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